環境汚染にもどる
t26403#有機JASの種子消毒はどうなっているか ネオニコ使用の市販の種子でも可?#13-08
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【参考サイト】農水省:有機食品の検査認証制度の頁、有機農産物のJAS規格
種子の殺虫、殺菌(種子消毒)については、258号で概要をお知らせしました。大規模で、近代的、グローバルな農業生産が種子消毒をせざるを得ない状況に追い込んでいます。国内で使われる種子の80から90%が、海外で生産されており、そこで使用される種子消毒はブラックボックスです。
農薬取締法と種苗法によって農薬使用された種は表示が義務づけられていますが、この表示が正しいかどうかはどこも検証していません。種苗会社の表示を信じるしかないのです。
ここで問題になるのは、JAS規格の有機農産物です。実は農薬を使用していない有機の種は非常に少なく、有機農業生産者は自家採取するか、種苗交換会で手に入れたりしていますが、それだけではとても足りないとのことです。
そのため、有機JAS規格では、段階的に規制を緩めて、最終的には市販の種を使用してもいいことになっています。ただし、「植付け後にほ場で持続的効果を示す化学的に合成された肥料及び農薬(別表1又は別表2に掲げるものを除く)が使用されていない苗等」となっています。
別表1は肥料などですが、別表2は以下の農薬が記されています。
除虫菊乳剤及びピレトリン乳剤、メタアルデヒド粒剤、硫酸銅、生石灰、性フェロモン剤、展着剤、二酸化炭素くん蒸剤、ケイソウ土粉剤、炭酸カルシウム水和剤、天敵等生物農薬。
つまり、これらの農薬以外の農薬は種子消毒でも使用できないはずですが、実際には市販の農薬使用した種子でもいいことになっています。
★有機JASでも農薬種子消毒OK
「有機農産物のJAS規格別表等資材の適合性判断基準及び手順書」には、
1、有機農産物の生産に当たっては、有機農産物のJAS規格第4条の基準に基づ
いて生産された種子又は苗等を使用することが原則。
2、1の種苗の入手が困難な場合や品種の維持更新に必要な場合には、使用禁止資
材が使用されていない種苗を使用することができる。
3、1の種苗の入手が困難であり、さらに2の種苗の入手も困難な場合等には、一
般の種子を使用することが可能。
手順書(H28/4改訂版)
また、「は種又は植付け後にほ場で持続的効果を示す化学的に合成された肥料及び農
薬が使用されていないもの」を使用するよう規定。
問題だと思うのは、この後に続く「なお、通常の種子消毒は、は種又は植付け後にほ場で持続的効果を示す農薬には該当しない。」という文言です。
通常の種子消毒に使用される農薬は、430製剤以上あり、有機リン系、カーバメート系、ネオニコチノイド系、ピレスロイド系など多様です。
残効性があり、浸透性もあるネオニコチノイド系農薬は、イミダクロプリドが6剤、チアメトキサムが2剤登録されています。
これらに持続的効果がないなどとは信じられません。持続的効果について農水省の表示・規格課に聞くと、はっきりした答えはないのですが、概ね30日くらい効果が続くものとの回答でした。有機農業の登録認証機関がケースバイケースで判断するのだそうです。
どうやら、種子に関しては「持続的効果を示す化学的に合成された農薬」を使ってもいいということらしいのです。これは、実際に有機の種が入手困難という現状でやむを得ない措置だと農水省表示・規格課は言っています。ならば一刻も早く有機の種の増産を図るべきです。
★環境省の調査
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【参考サイト】鳥類の農薬リスク評価・管理手法マニュアルのパブコメ
本文と資料。当グループの意見と環境省の見解。マニュアル全文(5/20公表)
しかし、やむを得ないと呑気に構えている場合ではないことが明らかになりました。
EUで暫定的に使用禁止になったネオニコチノイド系の農薬が種子消毒にも使われているのです。
今年の2月から3月にかけて、環境省が鳥類の農薬リスク評価・管理手法暫定マニュアルに関してパブコメをしましたが、その資料に種子処理剤の残留濃度というのがありました。
これは、環境省が平成22〜24 年度に実施した農薬ばく露量調査((社)日本植物防疫協会実施)において、大豆及び直播水稲を対象作物として種子処理剤の残留濃度を調査したものです。
驚いたのはネオニコ系殺虫剤のチアメトキサムの数値でした。大豆に種子1kg当たり1800mg処理したチアメトキサムは播種直後に1150mg/kg、出芽時に360mg/kg残留していました。さすがに、検査者もこの数値に驚いたのか注に「チアメトキサムについては、平成23 年度調査において、不均一な処理で行った可能性が懸念されたため、確認のための再試験を行い、また、平成24 年度にも同一薬量・同条件で試験を行った。検討の結果、平成23 年度の第1回試験の結果が不適切であったと見なすべき十分な根拠がないことから、3回の測定結果の平均値を解析に用いることとした」とあります。結局、平成23年度の試験も正しかったわけです。
3年間の平均で見ると、出芽時の残留量は196.4mg/kgです。
ちなみに、他の農薬の出芽時の残留量は大豆の場合、チウラム=30.9,ベノミル=12.0,シアゾファミド=11.2、チウラム(水和剤)=<0.1、ダイアジノン=58.6、チウラム(粉剤)=<0.1、フルジオキソニル=4.9となっています。
チアメトキサムが突出して残留量が多いとはいえ、使用頻度が多いチウラム、ベノミル、シアゾファミド、ダイアジノンなども二桁の残留です。これは「持続的効果を示している」とはいえないでしょうか。少なくとも播種時に土壌を汚染していることは確かです。
平成24年度有機食品等登録認定機関連絡会議で、ネオニコを使用した苗を使用できるのかという質問に対して、農水省は「種苗の選択は段階的になっているので、使用禁止資材が使われていない種苗を優先し、そういった種苗は排除されると考えている」と意味不明の回答をしていますが、登録認定機関まかせにせず、明確に、イミダクロプリドやチアメトキサムで処理した種苗は、有機認定をしてはならないとすれば、いいと思うのですが。
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作成:2013-10-25