環境汚染にもどる


t26503#ようやく農水省が農薬と蜜蜂被害調査実施へ〜分析値など個別事例は公表しないと明言 #13-09
【関連記事】記事t25203(2010、11のミツバチ被害統計あり)、 記事t25802記事t26502
【参考サイト】農水省:平成23年度 農薬の使用に伴う事故及び被害の発生状況について詳細報告
           「蜜蜂の被害事例に関する調査・報告について」 (5月30日)
       日本養蜂はちみつ協会:Top Page

 前号の速報でお知らせしたように、農水省は、5月30日に、通知「蜜蜂の被害事例に関する調査・報告について」を、地方農政局等に発出しました。蜜蜂被害事例調査実施要領を示し、詳細な調査をすべく、都道府県の農薬担当部局に協力するように指導しろというものです。

★農水省の調査計画の問題点
 農水省は、2013年から15年までの3年間、農薬などによる蜜蜂被害の実態を調査し、『どのような経路で蜜蜂が農薬に暴露されて被害が発生するのかの推定や、被害を最小限に抑える農薬の使用方法や蜜蜂の管理方法の検討に活用していくこととなる。』としています。
 まず、養蜂者から被害の通報を受けた都道府県の畜産担当部署が、情報を聴取し、現地調査を実施することになりますが、調査除外として、@ 養蜂家がダニ、蜂病など農薬以外の原因を特定している場合。A 養蜂家から聞き取った内容に基づき農薬以外の原因が推定され、養蜂家がその説明に納得している場合となっています。例え蜂病であっても、農薬が免疫系等に影響を与える場合もあるので、病死の場合も農薬使用状況を調べるべきではないでしょうか。
 また、農薬使用状況をどの程度の期間について、どの程度の範囲で調べるかも不明確です。とくに、蜜源植物や花粉採取植物、水場と蜜蜂飼育場との農薬散布地域の位置関係が重要です。
 さらに、ネオニコチノイドのような浸透移行性殺虫剤単独だけでなく、他の殺菌剤などとの複合作用でミツバチへの毒性が強まることもあるので、事故発生場所周辺の全農薬使用状況を調べる必要があります。

★調査事項の個別内容は不開示とは
 気になるのは、調査内容の公表について、以下のようにいっていることです。  『個別の被害事例を特定できるような情報を公にすると、養蜂家と耕種農家のトラブルを懸念し、情報提供に協力を得られないことも想定されることから、都道府県域以上に詳細な発生場所に関する情報は不開示情報とし、調査の個票を含め、公表しない。また、死虫等の分析用試料を採材した場合における FAMIC 農薬検査部による分析の結果は、上記の解析に資する目的でのみ使用するものとし、個別の分析結果は同様に不開示情報とする。』
 調査をするが、農薬分析結果を含め個別事例の内容は公表しないとうことは、関係部署にすべて、まかせておけ、ということで、とても科学的調査とはいえません。結局は、農薬の使用規制にはつながらず、いまで通りの対策−養蜂者と農薬使用者の情報共有の強化−にとどまる恐れがあります。

★農水省と養蜂団体で食い違う蜜蜂・農薬被害
 農水省は、2011年度の蜜蜂被害を8件としていますが、日本養蜂はちみつ協会の調べでは、同年被害は、208業者、8352群と大きく異なりました。
協会は、12年には、被害群数が前年約1.2倍の9830群となったと報告しています。表に、都道府県別の被害数を示します。
被害なしの府県は15(秋田/埼玉/東京/神奈川/山梨/石川/福井/三重/大阪/鳥取/広島/香川/高知/佐賀/熊本 、被害不明は3県(山形/島根/滋賀) でした。
被害事例では、水稲の無人ヘリ空中散布によると思われるのが、宮城、茨城、富山の3県で見られました。
 栃木は、被害群数は2891で、全国一多く、蜜蜂の死亡、逃去、虚弱体質、短命などのの事例がありました。
千葉では、田んぼに水を飲みに行った蜂がおかしくなり、巣箱に戻らない、東北に転飼した事例では、幼虫に強く作用する薬があるようで、蜂の子が蛹にならずに死ぬなどと報告されています。
静岡では、セイタカアワダチ草に採蜜に来たミツバチが被害を受けましたが、近くで行われた農薬散布で、蜜源が汚染されたのか、蜜源へ行く途中に、被曝したかははっきりしません。同県では、カメムシ駆除のトレボン粉剤でも被害がでています。新潟では、成分名の記載がありませんが、畜舎でのハエ脱皮阻害剤の疑いが報告され、山口では、ミカンバエやヨトウムシの殺虫剤、ネオニコチノイド、除草剤による被害がありました。
 愛媛では、ミカン害虫アザミウマの忌避薬の影響が疑われています。宮崎の事例では、青森への転飼でカメムシ農薬の、鹿児島では、くん蒸剤による被害がありました。
前年よりも被害が増えたところでは、13倍増の長崎、3.4倍増の和歌山が目立ちました。

 
表 2012年度の農薬によるミツバチ被害数(日本養蜂はちみつ協会資料より)

  県名     被害業者数 被害群数(2011年) 作物名 

  北海道     11    1245 (284)   水稲 
  青 森       1        20 (457)   
  岩 手       7     550 (996)     水稲/リンゴ
  宮 城       2         5 (154)   水稲/イチゴ
  秋 田      なし      0 (5) 
  山 形      不明   不明 (620) 
  福 島        3         10 (13)     水稲/梅/リンゴ/モモ
  茨 城       1      70 (?)    水稲               
  栃 木       14      2861 (2123)  トウモロコシ/水稲/イチゴ
  群 馬       5      90 (849)    
  埼 玉      なし     0 (0)
  千 葉        3        100 (0)    水稲/リンゴ/桜桃
  東 京      なし        0 (0)       
  神奈川     なし        0 (0)       
  山 梨      なし      0 (0) 
  長 野        1         36 (24)      水稲
  静 岡        2         15 (2)      水稲
  新 潟        2        30(不明) 
  富 山        1         13(16)       水稲
  石 川      なし         0(0)
  福 井      なし         0(0)       
  岐 阜        9    288(348)   庭木/水稲/芝
  愛 知        3     50(210)   キャベツ
  三 重      なし         0(0)        
  滋 賀      不明      不明(不明)        
  京 都        1     5(0)     水稲  
  大 阪      なし         0(0)       
  兵 庫        1         10(0)       水稲
  奈 良       1     80(0)     菊               
  和歌山       7       1424(416)   ミカン/水稲
  鳥 取      なし         0(120)
  島 根      不明         0(0)       
  岡 山        4     38(0)               
  広 島      なし         0(1020)
  山 口        6         61(100以上)  ミカン/アスパラ/レンコン/育苗/水稲
  徳 島        1     10(0)      梅
  香 川       なし        0(0)         
  愛 媛            300?(60)    ミカン
  高 知       なし        0(0)        
  福 岡        4         62(60)       ミカン/ダイズ
  佐 賀       なし        0(45)
  長 崎        7    1962(150)      水稲
  熊 本       なし        0(0)
  大 分        1     30(0)        ミカン   
  宮 崎        4        440(250)
  鹿児島       3        323(130)    野菜/水稲/茶/まめ類
  沖 縄        1          2(0)
  合計       106       9830(8352)

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作成:2013-10-25