食品汚染・残留農薬にもどる

t26801#消費者の利益を守る考えは見えない〜消費者庁とのクロチアニジンの残留基準に関する話し合い#13-12
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【参考サイト】消費者庁:Top Page食品衛生法の基準値見直し等の協議受けについて

 グリーンピース・ジャパン:ネオニコチノイド残留基準緩和反対のネット署名(2月3日締切)です。

 先月号の事務局便りで少し触れましたが、EUでミツバチ被害防止のため、使用規制がはじまったネオニコチノイド系殺虫剤クロチアニジンについて、日本では、適用作物が拡大され、残留基準がとんでもなく緩和されようとしています。この点に関して厚労省に意見を言える立場にある消費者庁に11月21日に、消費者保護の姿勢を貫くよう質問と要望を出しました。
 それより前、11月6日の参議院消費者問題に関する特別委員会で、担当の森まさこ大臣は、福島みずほ議員の質問に対し、「消費者庁としては、消費者の安全を第一とする観点から、しっかりとその観点を守っていただくように担当省庁に意見を言っていくというつもりでございます。」と答弁しています。私たちの質問と要望はこれを踏まえたものです。
 文書回答を求めたのですが、消費者庁消費者安全課は文書ではそっけなくなってしまうから話し合いをしたいと申し入れてきたので、11月29日に消費者庁で話し合いました。消費者庁からは消費者安全課の企画官と課長補佐がでてきました。

★消費者庁はホウレンソウ40ppm問題なしと
 私たちは、ホウレンソウのクロチアニジン残留基準を3から40ppmへ緩和したことに絞って、消費者庁の対応を質しました。
 消費者庁は、「@厚労省のデータ、A消費者被害はでているかの2点を検討したが、@については、残留基準はTMDI(理論最大一日摂取量=残留基準が決まっている作物に基準値まで農薬が残留していると仮定して、すべての作物の値を合計したもの)がADIの80%以内なので問題ない。Aについては、消費者庁にクロチアニジンに関する被害報告はなかった。一人、シロアリ駆除に使っているが、大丈夫かという質問はあったが、それ以外はなかったので、厚労省に問題ないと回答した。」と説明。
 私たちは、ホウレンソウを40ppmとした根拠が、収穫前日まで、4回使用可能とする 登録変更を目的に実施された2事例の残留試験で、最大残留値が27ppmとなり、これをさらに1.5倍としたことにある、どんなに散布しても基準違反にならないようにしていることを説明しましたが、消費者庁は聞く耳を持ちませんでした。

★10月22日、厚労省に異存ないと回答
 この質疑の過程で、消費者庁には、9月11日付けで、厚労省からクロチアニジンほかの残留基準改定について、協議を求める文書が来て、同庁は、10月22日付け文書で、改定案に異存がないと、下記のような回答していたことがわかりました。

 回答文書のコピーをくれましたが、厚労省が発出した文書はコピーもだめだとして、見せただけ。後日、当グループが入手した厚労省の文書「食品、添加物等の規格基準の一部改正について(協議)」には、協議の趣旨として『消費者庁に集約される事故情報、健康被害情報等、実際に発生した事案を参考とすることが重要となるものであることから、そのような客観的に情報を活用する観点から、消費者庁協議を行うもの」と、なっていました。消費者庁はこれに沿った回答をしていたのです。おそらく森大臣はこのことを知らずに、11月6日にこれから意見を言うと答弁したのでしょう。
 省庁間文書では、農薬のリスク評価の場合、食品安全委員会が、厚労省からの受付文書も回答の通知文書もホームページで公表していることを思えば、消費者庁の情報隠しの姿勢は問われて然るべきです。(食品安全委員会のHPにある農薬リスク評価参照)

  ★クロチアニジンの毒性に関して
【参考サイト】厚労省:クロチアニジンの残留基準設定についての意見募集(2013年)と参考資料当グループの意見

 今回のパブコメ意見で、私たちが、2012年の都健康安全研究センターの田中さんの研究結果(厚労省が提出した食品安全委員会の評価書にないマウスの仔世代への発達神経系への影響に関する知見:記事t24902参照)をだしていることを指摘すると、「それは単なる意見に過ぎない。そういう論文をたくさん集めて、食安委などに出すのが良かろう」という。
 消費者庁は「消費者の利益を守るためにあるとのことだが、消費者庁には農薬や食品添加物をできる限り、抑えるべきという原則はないのか」と糺すと、それはないとのこと。科学的な判断を食安委がやっているので、その判断がいけないのなら、そちらで論文なりを出せばいいと繰り返すのみでした。
 消費者の利益を守ると言う考えは一切なく「粛々と」他の省庁のいいなりになっていることでした。「それはあなた個人の考えか」と聞くと何を勘違いしたか、企画官が 、私は国の方針に基づいていると、自分が国そのものであるかのような発言をしたのには、驚きました。
 また、同企画官は現在、有機農業は1%にも満たない。99%が農薬使用の作物を選んでいる。そういう消費者ニーズも考えないといけないとも述べました。
 現在の農薬漬け農業を改めたいというのが国の姿勢であり、環境保全型農業や有機農業推進施策がとられていることをどう考えているのでしょう。

★被害が顕在化しないと動かない消費者庁
 今回提示の残留基準では、TMDIはADIの80%を超えていない。これが唯一の安全主張の根拠ですが、クロチアニジンの残留基準緩和はまだ決まっておらず、現在、このような高濃度の食品を消費者が食べているわけではありません。被害が想定されるからできるだけ低くすべきと厚労省に言うべきなのに、今、被害がないから大丈夫だとしたのでは、とても、消費者の安全を第一に考える消費者庁とはいえません。
 生態系の破壊は消費者にとっても、ゆるがせにできないもので、クロチアニジンが蜜蜂大量死の原因であることを指摘すると、そういうことは環境省に言えとのこと。  実験動物も蜜蜂も人もネオニコチノイドの作用機構(ニコチン様アセチルコリン受容体に作用して、神経系に影響を与える)が同じ、タバコのニコチンでは、ヒトへの影響がわかっていることなどで、消費者が人への影響を懸念しているのに、企画官はそうは思わないらしい。
 また、私たちが、科学的論議をしようと、農薬メーカーにデータ開示を求めていることを、消費者庁にバックアップしてほしいと求めても、やる気なし。
ということで、消費者庁が頼りにならないことが、また、明らかになりました。
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作成:2013-12-27