環境汚染にもどる
t26805#農薬による野鳥&魚斃死事例#13-12
記事t26705では、神奈川県海老名市でのメソミルによるスズメの大量死事件をとりあげましたが、ほかにも、農薬による野鳥や魚の死亡事例がみられます。ほとんどの場合、農薬が検出されても、原因不明では、再発防止に役立ちません。
■埼玉県:MPP、エチルチオメトン
【関連記事】記事t25904a
【参考サイト】埼玉県:ドバトの不審死(6/28)、羽生市内でカラス4羽の不審死(10/17)
野鳥の不審死報告の多い埼玉県では、2月のカーバメート系殺虫剤メソミル(商品名ランネートなど)によるヒヨドリ毒死(記事t25904a参照)に続いて、6月24日から27日にかけて、加須市北小浜地内でドバトが5羽が死んでいるのが見つかりました。うち、3羽について、環境科学国際センターで薬物検査を実施したところ、有機リン系フェンチオン(MPP、商品名バイジットなど)が検出されました。
さらに、10月15日から16日には、羽生市下新郷で、カラス4羽の不審死があり、薬物検査の結果、有機リン系エチルチオメトン(ジスルホトン、商品名ダイシストン)が検出されました。
いずれも、農薬と死亡の因果関係は不明とされ、さらなる原因追究は行われていません。ほかに、7月13日に、加須市崎北2丁目でムクドリ46羽と判別不能18羽、北1及び3丁目でスズメ29羽と判別不能48羽の死骸が見つかりましたが、鳥インフル調査は陰性、薬物検査をした7検体で農薬等の化学物質は検出されなかったとのことで、
以後の調査はありません。
■神奈川県:シアノホス、メソミル
【関連記事】記事t26705
横浜市で2月におこったカラスなどの毒死事件で、有機リン剤シアノホス(CYAP、商品名サイアノックスなど)が検出されましたが(記事t25904a、4月30日にも、中区の繁華街でカラス約20羽の不審死がみつかりました。
横浜市衛生研究所で実施された鳥インフルエンザウイルス検査では、陰性。その後、2羽のカラスの胃の内容物を検査した結果、それぞれ88.9ppmと129.8ppmという高濃度のシアノホスが検出されました。
■鳥類での急性毒性
【関連記事】記事t16405(MPP被害)
野鳥の不審死によく使われるのは、表のような農薬で、比較のため哺乳類ラットのLD50を挙げましたが、EPN以外は、鳥の急性毒性の方が強い農薬で、MPPやシアノホスは、外国ではAvicide(殺鳥剤)として知られています。
表 ラットと鳥類の経口半数致死量 LD50(単位:mg/kg、*はコリンウズラ)
農薬名 ラット 鳥類 毒劇法
MPP 320〜566 7.2* 劇物(2%以下指定なし)
シアノホス 580〜610 ニワトリ23.5 指定なし
メソミル 12〜48 ニワトリ28 毒物(45%以下劇物)
EPN 14 ニワトリ171 毒物(1.5%以下劇物)
エチルチオメトン 1.9〜15.9 39* 毒物(5%以下劇物)
*印は中型鳥類のコリンウズラ(体重約180g)の場合です。小型鳥類である体重22gのスズメの一日の餌摂取量は5.5g程度ですから、MPPのLD50を5.3mg/kgとすると一羽あたりのLD50は0.17mgとなり、30ppm残留した米つぶを5.5gたべると半数が死んでしまうことになります。
上のスズメの事例は、環境省が、5月に公表した「鳥類の農薬リスク評価・管理手
法マニュアル」(記事t24805、記事t26403参照)にあるデータから算出したものですが、このマニュアルのパブコメ意見募集の際、私たちは、次の文章を追加するよう求めました。
『毒餌による野鳥死が跡をたたないため、犯罪捜査や法律による取締りを強化する必
要がある』
しかし、『鳥類に対する農薬リスク評価・管理の具体的なツールを提供することが目
的であって、犯罪捜査や法律による取り締まりの促進を目的としたものではないこと
から、ご意見のような記述は本マニュアルに馴染まないと考えています』として、マ
ニュアルには記載されませんでした。
■魚毒死事件
【参考サイト】神奈川県:第一報(6/04)、第二報(6/06)
青森県;相米川における魚類へい死(6/14)
【神奈川県】6月4日の午後、鎌倉市腰越の神戸川の白山橋から上流100mほどの間にアユなど50匹が死んでいたとの市からの通報がありました。県環境科学センターが河川水を分析したところ、ベンスリド(一般名SAP)が0.00015mg/L検出されました。
同剤は魚毒性B類の有機リン系除草剤で、水稲用複合剤や芝用単剤がありましたが、2006年12月に登録は失効しています。
県は、付近にベンスリドを取り扱う製造工場等は立地していないことから、住宅地等から河川に流出したと推定、家庭における農薬の適正使用等を周辺自治会に注意喚起しました。
【青森県】6月12日午前、青森県田子町を流れる相米川やその支流で2キロにわたり
ヤマメとイワナ数百匹が死んでいるのが見つかりました。
県の環境保健センターで河川水を分析した結果、水田用除草剤成分であるブロモブチドが検出されたものの、濃度は不明でした。県は、へい死との関連性は現在のところ不明であるとしています。
【岡山県】9月1日9時ごろ、岡山県和気町の吉井川水系の支流王子川にある加部橋周辺で、オイカワやフナなどが死んでいるとの住民通報が町役場にありました。
県の調査では、100匹程度の小魚が浮いており、橋の上下流には、油膜などの異常は見られず、その後、下流の横井堰を開放したところ、斃死魚が大量に流れ出たとのことです。斃死魚は700から800匹程度で、他の水生生物への影響については報告されていないとのことです。
魚については、寄生虫の付着・細菌検査を行っただけで、分析調査は実施されておらず、河川水については、11時に横井堰で採取した河川水からエンドリンが0.48μg/L、加部橋付近で12:30採取検体には0.40μg/L、同じく15:40の検体では、0.12μg/Lと検出濃度は減少し、翌9月2日の午後の調査では、加部橋付近では0.01ppm、さらに下流の吉井川本流では検出限界の0.01μg/L以下となっていました。
エンドリンは、魚毒性の強い有機塩素剤ですが、1975年には登録失効しており、いまどき、なぜ、河川を汚染したのか不明です。県は現地調査をしたが、河川敷に何か流したような痕跡等は認められず、水質事故原因箇所を特定できるような事実は確認できなかったというのみです。
反農薬東京グループの問い合わせ
購読希望の方は、〒番号/住所/氏名/電話番号/○月発行○号からと購読希望とかいて、
注文メールをください。
年間購読会費3000円は、最初のてんとう虫情報に同封された振替用紙でお支払いください。
作成:2014-01-27