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t27101#農薬登録制度についてのパブコメ意見〜登録申請をOECD書式に変更する前にやるべきことがある#14-03
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【参考サイト】農水省:農薬登録制度に関する懇談会の頁
       農薬の登録申請時に提出する試験成績及び資料に係る関係通知の改正案に関する意見・情報の募集について
       改正概要OECDドシエ様式の作成ガイダンス(案)

   反農薬東京グループのパブコメ意見

 農水省は、2月3日〜3月4日まで、農薬の登録申請時に提出する試験成績及び資料に係る関係通知の改正案についてのパブリックコメント意見募集を行いました。
 今回の改定は、下記の3項目です。
 @農薬の登録申請時に提出する資料の様式の変更
 A農薬の家畜代謝試験及び家畜残留試験ガイドラインの導入
 B作物残留試験の供試農作物の改正
 反農薬東京グループは、質問を含め、33の意見を出しましたが、その中で、@に関する主張の概要を紹介します。

★早期登録をめざすOECD書式
 農薬登録の際に提出すべき試験成績については、農水省の通知で、その内容や運用等が決められていますが、現在の提出書式を、国際機関OECD(経済開発協力機構)が提唱する方式に合わせようとする改定が提案されました。国際共通の書類導入で、「新しく開発した農薬の登録制度申請が各国で、早期にできる」「農業者にとっては、新しく開発された農薬を早期に使用できる」が利点だそうです。つけたし的に「消費者への国内農産物の安定的な供給につながる」が挙げられていますが、消費者が食の現状について求めるのは、安全・安心であり、この視点抜きにした早期農薬登録はありえません。わたしたちは、優先すべき課題として、登録制度自体の改定を視野にいれ、次ぎのような意見を述べました。
★登録前に消費者の意見を聞く
【意見2】登録及び変更登録の前に、毒性や残留性試験データを公表し、登録の可否に
  ついて、国民の意見を聞くように、制度を改めるべきである。
  その際、登録申請者が、登録及び登録変更しようとする製剤について、適用作物や
  適用病害虫への薬効・薬害、農薬使用者への影響、作物残留性と残留農薬による人
  への影響、農作物・魚介類・家畜への影響、環境・生態系への影響など、登録をめ
  ざす農薬製剤に、どのようなメリットがあり、デメリットがあるかをまとめた文書
  の提出を義務づけ、登録前にパブコメを実施することが望まれる。
 [理由] 日本では、農薬取締法による農薬登録制度が実施されているが、―中略―そ   の後、使用者の中毒、魚介類の被害、食品汚染、環境汚染等の防止のため、規制条   項等が追加改定されてきた。いずれも、登録後、農薬使用による被害等が先行し、   その後追いの改定であり、登録制度そのものの欠陥が露呈した結果でもあった。   また、従来の制度は農薬メーカーや使用者等の利益のみで決められ、消費者や一般   国民は、一方的にリスクを負わされるだけであるのに、登録そのものの可否につい   て意見を言うシステムがないのは問題である。    ―中略― メーカーが提出する試験成績が、法運用規定に抵触していなければ、   登録保留基準に適合することが、その判断基準であるが、適正に運用されていると   はいえない。たとえば作物残留試験で、残留基準を超えた場合は、登録を認めない   のではなく、残留基準を緩和して、登録を認めるという、本末転倒した運用がなさ   れている。   農薬に関するパブコメは、(1)活性成分の健康影響評価について食品安全委員会が、   (2)残留基準案については厚労省が、(3)水質汚濁や水産動植物への影響については、   環境省が実施しているが、すでに登録された農薬成分の、剤型、適用作物、使用方   法等の変更登録ついては、上述のように既にある残留基準は、登録の可否の判断基   準にはならない。 ★再評価制度の早期導入を 【意見3】農薬使用を認めるにあたって、現行の試験だけでなく、新たな知見による毒   性試験、より広範なフィールドでの圃場試験の実施を義務づけ、人や環境・生態系   への影響などについて、データをとるようメーカーに義務づけた上で、被害拡大防   止をめざした再評価制度を早急に導入し、使用規制を迅速に行えるようにすべきで   ある。  [理由]1、「農薬登録制度に関する懇談会」では、再評価制度が検討されているが、   この制度は未だ、実現していない。   2、農薬取締法による販売禁止農薬の指定は、当該農薬の人や環境への影響が明確   になってからの、事後指定である。農水省は、人や環境への影響を二の次にし、代   替農薬がないとの理由で、問題となった農薬の使用規制や登録失効させることなく、   メーカーが製造廃止の届けを提出するのを待つのみである。−後略−   3、人や環境に影響があることが懸念されている農薬や、新たに登録された農薬は、   その使用地域において、作物への残留や大気・土壌・水系汚染状況、使用者や散布   地域周辺の住民など人の健康への影響、生態系への影響などを、集中的に調査し、   データ収集することを義務づけ、再評価に資するべきである。 ★情報公開の徹底を 【意見5】申請者が提出した毒性試験や残留試験成績は、国民が、メーカーの主張の正   当性が検証できるよう、原則、データをすべて公表すべきである。  [理由]現行の抄録や農薬評価書にある資料は一部しか公表されておらず、これらが、   公表されても、その内容に空白の不開示個所が多々みられる。   「我が国における農薬登録制度上の課題と対応方針(案)についての意見」(2009年   6月)のパブコメ募集の際、私たちは、情報公開の徹底を求めた。この時、『公開さ   れている農薬抄録は、07年6月20日現在、66件にすぎず(2014年1月15日現在166成分   となる)、しかも、試験に用いた成分の純度すら非公開となっている。メーカーと消   費者が対等の立場で、話し合えるには、情報公開を徹底することが不可欠であ   る。』『農薬の毒性及び作物残留性のデータについては、従来のように、守るべき   企業の財産として、公開を拒むことは、許されない。国民への情報公開を原則とし、   企業秘密の保持に関しては、別途の法的制度で守ればよい。』と主張した。 ★新たな試験や使用規制農薬の指定も求める 【意見1】農薬は環境中に放出されるもので、登録時に提出される現行の試験成績だけ   では、環境や人への影響について、ただしく判断することができない。以下のよう   な試験成績の提出が必要である。   (1)生態系全体への影響評価が必要である。   (2)発達神経毒性試験、発達免疫毒性試験、環境ホルモン作用による人や生物への影   響試験を実施すべきである。   (3)上記について、動物実験にかわって評価できるインビトロな試験方法を開発・実   施すべきである。 【意見2】新たな農薬については、地域を限って、実験ではみられない広範な植栽地で   仮使用し、環境汚染実態、生態系への影響、残留実態などの試験データとって、評   価しなおす、再評価制度をとることがより科学的である。
 さらに、水系汚染については、日本の環境に即した水生生物による登録保留基準の見直し、土壌汚染については、土壌生物への影響評価の実施すること、また、農薬取締法の水質汚濁性農薬指定に類した蜜蜂等危害性農薬、鳥類危害性農薬を指定し、危害防止・使用規制につながる法条文の追加を求めました。
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作成:2014-05-25