6:食品汚染・残留農薬にもどる    脱農薬ミニノートシリーズ4<農薬も一緒に食べる?>
t27104#茶製品の残留農薬分析結果〜国産茶に、複数のネオニコ系農薬検出例も/台湾への輸出で残留違反は13件#14-03
【関連記事】食品汚染・残留農薬記事一覧

 日本国内の茶に登録のある農薬製剤数は406種(単剤391、複合剤25、うち展着剤22)で、122成分(展着剤を除く)があります。残留基準は、国内で適用できないものも含め、225成分が設定されており、そのうち10ppm以上が77農薬で、一番高いのはシラフルオフェンの80ppmです。このように、残留基準の高いものが多いにも拘わらず、茶葉の残留農薬調査結果は、農水省発表にもでてきませんので、国産茶の残留実態がよくわかりませんでしたが、最近、2つの報告が明らかになりました。東京都健康安全研究センターの輸入茶の調査結果とともに、その内容を紹介します。

★台湾での残留基準違反13件
【参考サイト】台湾:食品医薬品局のHP 農薬残留基準(英語版) 食品薬物消費者知識服務網の不合格食品資訊査詢

 ひとつは記事t27003で紹介した台湾での残留基準違反事例報告で、日本から同国へ輸出された茶製品の残留検査結果に関するものです。昨年11月から3ヶ月間に違反が判明した事例は、表1に示した13件で、煎茶や玄米茶のティーパック(表中TPと略記)、抹茶、粉茶などの茶製品と、加工食品である抹茶ミルクでした。 台湾では、茶については、177の農薬に残留基準が設定されており、基準を超えたり、基準のない農薬は検出されただけで、輸入が止められます。
 検出された農薬では、チアクロプリドが10件と最も多く、0.13〜1.25ppmでした。日本の残留基準30ppmは超えていませんが、台湾には、同農薬の残留基準がないので、製品は返送又は廃棄されます。
 茶製品の産地は京都が多く、静岡、東京なども見られますが、栽培地がどこであるかは明確には、わかりません。
 加工製品である2種の抹茶ミルクの@は森永製菓製品「抹茶オレ100(宇治抹茶)」で、テブコナゾールが、Aは片岡物産製品「辻利抹茶ミルク」で、テブコナゾールなど4農薬が検出されています。
 
  表1 台湾で輸入が差し止められた国産茶の残留農薬値
  銘柄       検出       検出値  日本基準  産地 出荷量 違反公表
            農薬名        ppm     ppm       kg   年月日
  煎茶TP       チアクロプリド     0.21     30     高知   240    13/11/5
  抹茶         チアクロプリド     1.23       30     京都    21.6  13/11/19
  抹茶         チアクロプリド     1.25       30     京都    21.6  13/11/19
  抹茶ミルク@  テブコナゾール     0.03       50     東京   200    13/11/26
  抹茶         チアクロプリド     1.16       30     京都    30    13/12/11
  煎茶TP       チアクロプリド     0.27       30     兵庫    7.2   13/12/11
  玄米茶TP     チアクロプリド     0.25       30     大阪    64    13/12/18
  抹茶         チアクロプリド     0.23       30     愛知   200    14/1/2
  緑茶         チアクロプリド     0.25       30     靜岡     9    14/1/2
  抹茶         チアクロプリド     0.24       30     東京    40    14/1/2
  抹茶         チアクロプリド     0.13       30     京都   120    14/1/2
  抹茶ミルクA  テブコナゾール     0.08       50     東京    8.9   14/1/2
               フロニカミド       0.05       40
           クロラントラニルポール 0.09       50
              トルフェンピラド    0.03       20
  粉茶       ピリミホスメチル    0.11       10     東京    80     14/1/15
 
★ネオニコチノイドの残留分析結果
【参考サイト】アクト・ビヨンド・トラスト:Top Pageにあるネオニコチノイド系農薬残留調査レポート(米・茶)詳細報告

 アクト・ビヨンド・トラスト(以後、abt)は、環境保護活動をする団体等に資金援助やコンサルタントほかを行う一般社団法人ですが、ネオニコチノイド問題をひとつのテーマにしています。2月末に、abtは、自らが実施した茶の残留農薬調査結果を発表しました。分析対象は、残留基準が10から50ppmと高い7種のネオニコチノイドとフロニカミド及びヨーロッパで、ミツバチ被害をあたえたフィプロニル(残留基準は0.002ppm)となっています。
2013年に入手した、国産茶製品14検体(うち1検体は同一商品名のものをイギリスで購入)と緑茶飲料6検体(うち3検体は国内と同じ商品名のものをイギリスで購入)の分析が実施されました。表2に分析結果を示します。

 茶製品14検体のうち、すべての分析対象農薬が不検出であったのは5検体で、台湾と同様にチアクロプリドが検出された製品が一番多く6検体(検出範囲:0.01〜1.29ppm。基準30ppm)、ついで、アセタミプリド5検体(0.01〜0.48ppm。基準30ppm)、イミダクロプリド3検体(0.02〜0.06ppm。基準10ppm)、クロチアニジン5検体(0.01〜0.08ppm。基準50ppm)、フロニカミド5検体(0.21〜1.36ppm。基準40ppm)、ジノテフラン4検体(0.01〜0.23ppm。基準25ppm)、チアメトキサム2検体(0.03、0.04ppm。基準20ppm)で、いずれも残留基準以下でした。7つの茶製品に複数の農薬が検出されました。京都府産玉露に6種、鹿児島県産緑茶(廉価品)と京都府産抹茶に5種、京都府産緑茶(秋摘み)と静岡産緑茶(秋摘み)に4種の成分が見つかっています。このようなネオニコチノイドの複合残留の理由が、異なる成分の農薬を時期を変えて使用しているか、あるいは、栽培場所の異なる茶葉をブレンドしているのかは、はっきりしません。

 ペットボトル入り緑茶飲料6製品の分析では、いずれも9種の農薬は検出されませんでした。次節に述べるように輸入半醗酵茶などでは茶葉にピレスロイド系や有機塩素系農薬が検出されているので、緑茶だけでなく、市販のウーロン茶飲料にも、分析対象農薬を拡大して、調査する必要があるでしょう。
  表2、茶製品のネオニコチノイド等の残留調査結果

  産地   茶製品の種類  検出農薬と検出値

  静岡県  緑茶(秋摘み) アセタミプリド:0.03 、クロチアニジン:0.01、
                             チアクロプリド:0.04、フロニカミド:0.21                       
    静岡県  緑茶(一番茶)     不検出 
    静岡県  緑茶(廉価品)      不検出 
    三重県  緑茶(秋摘み)  アセタミプリド:0.48 
    三重県  緑茶(一番茶)      不検出 
    三重県  緑茶(廉価品)      不検出 
    鹿児島県 緑茶(秋摘み)  イミダクロプリド:0.02、 チアクロプリド:1.01 
    鹿児島県 緑茶(一番茶)      不検出 
    鹿児島県 緑茶(廉価品)  クロチアニジン:0.01、 ジノテフラン:0.11、
                 チアクロプリド:0.10、チアメトキサム:0.04、フロニカミド:0.38  
    京都府   玉露            アセタミプリド:0.12、 イミダクロプリド:0.02、
                             クロチアニジン:0.02、ジノテフラン:0.11、
                             チアクロプリド:0.07、フロニカミド:1.36 
  京都府  抹茶           アセタミプリド:0.16、イミダクロプリド:0.06、
         クロチアニジン:0.08、ジノテフラン:0.23、チアクロプリド:1.29
  京都府 緑茶(秋摘み) アセタミプリド:0.01、クロチアニジン:0.04、
              ジノテフラン:0.01、チアメトキサム:0.03    
  静岡県 緑茶        チアクロプリド:0.01、フロニカミド:0.36
  静岡県 緑茶*       フロニカミド:0.35
         *** ペットボトル飲料 ***       *:イギリスで入手
     C社   緑茶                 不検出
     C社   緑茶*                不検出
     D社   緑茶                 不検出
    D社   緑茶*                不検出
     E社   緑茶                 不検出
     E社   緑茶*                不検出                         
★東京都の輸入茶の調査
【参考サイト】東京都健康安全研究センター:研究年報のTop Page 63巻にある
        輸入農産物中の有機リン等残留農薬実態調査−2011年度− 同有機塩素等残留農薬実態調査

 東京都健康安全研究センターによる2011年度の輸入食品の残留調査で、茶葉3種13検体で、289種の農薬を分析した結果、紅茶5検体には検出されませんでしたが、表3のような農薬が検出されました。
 中国産や台湾産ウーロン茶では、ビフェントリン0.45ppmが一番高く、有機塩素系エンドスルファンやジコホールのほか、複数のピレスロイド系が検出され、多種農薬の複合残留がみられました。中国産プアール茶には、ジコホールやピレスロイド系が検出されていました。いずれも、残留基準や一律基準違反はありませんでした。
 前述の国産茶と異なり、ネオニコチノイド類や2012年後半から検出が顕著になったフィプロニル(記事t26206参照)は検出されていません。
 
   表3 日本への輸入茶の残留農薬調査結果(単位:ppm。東京都健康安全センター年報63号)

  茶の種類    産地   農薬名      検体数 検出数 最小値 最大値 検出率
  ウーロン茶   台湾    シペルメトリン     2   1    ND    0.19   50
              ペルメトリン       2   2  0.02  0.19   100
  ウーロン茶   中国    エンドスルファン   2   1   ND  0.03   50
             エンドスルファンスルフェート2  1   ND  0.06   50
                クロルフェナピル   2   2  0.07  0.08   100
                ジコホール         2   2  0.02  0.03   100
                シハロトリン       2   2  0.02  0.03   100
                シペルメトリン     2   2  0.03  0.05   100
               ピリダベン         2   1   ND   0.03   50
                ビフェントリン    2   2  0.40  0.45   100
                フェンプロパトリン  2   2   0.01  0.02   100
  プアール茶   中国    ジコホール         4   1   ND  0.01   25
                シハロトリン       4   1   ND  0.01   25
                シペルメトリン     4   1   ND  0.03   25
                ビフェントリン    4   4   20  0.04   100
                フェンバレレート   4   1   ND  0.05    25
 
購読希望の方は、〒番号/住所/氏名/電話番号/○月発行○号からと購読希望とかいて、 注文メールをください。
年間購読会費3000円は、最初のてんとう虫情報に同封された振替用紙でお支払いください。
作成:2014-05-25