1:農薬の毒性・健康被害にもどる

t27301#農薬危害防止運動の実施の通知 4月25日に発出されたが、内容は例年並み#14-05
【関連記事】記事t26102(2013年度の運動)、記事t26904記事t27203
  農薬危害防止運動:2009年2010年2011年2012年2013年2014年
【参考サイト】農水省:H26年度「農薬危害防止運動」の実施について実施要綱ポスター
       環境省:同上通知。 厚労省:同上通知 

 毎年、原則、6月から8月末までの3ヶ月間、全国で実施される農薬危害防止運動についての、農水省、厚労省、環境省の3局長連名通知が、今年は、いつもより早く4月25日に発出されました。
 その内容は、前年に比べ、大きな違いはありませんが、1ヶ月の猶予を持って、都道府県知事、保健所設置市市長、特別区区長など宛に、実施要綱、農薬による事故の主な原因及びその防止のための注意事項、農薬の不適正使用の主な原因及びその防止対策、毒劇物たる農薬の適正販売強化対策を示したことは、早く発出するようにという私たちのいままでの運動の結果だと思います。

★住宅地通知の遵守の強化がうすれた
 今年度の実施要綱の趣旨の文面から、住宅地での使用の記述が簡略化され、昨年版にあった「さらに近年、農薬の使用地域周辺の住民等の健康影響に対する配慮が強く求められており、農薬を安全かつ適正に使用することの必要性が高まっている。」が
削除されていました。「住宅地等における農薬使用に当たっての必要な措置の徹底」の項は、前年と同じで、この通知を守るようもっと強調してほしいものです。
 また、記事t27303ように、昨年度は、無人ヘリコプターでは死亡事故1件を含め36件の事故がありましたが、「航空防除における農薬使用に当たっての留意事項の徹底」の項内容も、前年と同様でした。
 今年、新たに追加されたのは、農薬の適正使用等についての指導等の項目や具体的な防止対策の項に「最終有効年月を過ぎた農薬を使用しないこと」。また、事故の絶えないクロルピクリンについては、使用後の防止対策に「土壌くん蒸剤を使用した際は適正な資材により被覆を完全に行う」が記載されたほか、「クロルピクリン剤等土壌くん蒸剤の使用に当たっては、揮散した薬剤が周辺に影響を与えないよう風向き等に十分注意するとともに、直ちに完全に被覆する」が、昨年の第5番目のから、第1番目に記載順序の変更があったくらいです。

 さらに、運動を啓発するポスターは、昨年と代わり映えせず、左図のように、
 ・ラベルの記載事項を守りましょう ・防護装備をしっかり着用しましょう ・周辺環境への配慮をしましょう
 とあるだけで、周辺への注意を促すイラストもなく、2年前にあった「近所の方に事前に使用をお知らせ」という言葉も復活しませんでした。

★三省への要望に対する回答
 記事t27203でその一部を紹介しましたが、農薬危害防止運動についての、私たちの要望に回答が来ました。その主な内容を紹介します。(全文はこちら、関連のミツバチ被害問題は記事t27202参照)

【農薬による人の危被害について】
  [関連記事]記事t26904t27201
 複数の省庁・部局が行っている農薬事故や中毒情 報を一元化すべきだとの要望に対しては、『目的や性格の違うデータを無理に統合することは、それを損なうものであると考えております。』といままでの回答と同じ内容で、進展がありません。

【クロルピクリン被害防止について】
  [関連記事]記事t26703
 私たちの要望、@農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令で、クロルピクリン使用者においても、計画の届出を義務付けること。A現行の努力規定にすぎない第八条(被覆を要する農薬の使用)で、クロルピクリンを罰則つきの義務規定にすること。B住宅から100m離すなど具体的数値を入れることなどの要望に一切、応えず、指導強化をいうのみです。その内容が、上述のように、例年とあまり変らぬ、被害防止運動実施要綱では、周辺住民の健康被害が抑えられると思えません。

【無人ヘリコプター散布】
  [関連記事]記事t27203
 住宅地周辺での無人ヘリ散布は止めることを求めましたが、緩衝幅は、環境省が実施している「農薬の大気経由による影響評価事業」の結果を踏まえて検討することとしています。
 現在、農林水産航空協会に一任している無人ヘリコプター関係の諸権限を、国が責任をもって実施する体制をとるよう、法的整備すべきだとの要望には、『現段階で法律を制定するなどの新たな規制を定めることは考えておりません。今後とも、農薬の空中散布が安全かつ適正に実施されるよう、「無人ヘリコプター利用技術指導指針」に基づき指導してまいります。』との回答でした。
 また、無人ヘリコプターの製造に関する法規制が総重量が100kgから150kgに緩和されたことに対しては、現在認定されている機種は、100kgを超えて飛行することは出来ず、メーカーの開発にまかせるとの回答が返ってきました。
 さらに、『無人ヘリコプターの大型化に伴い、法的整備による新たな規制を行うことが必要となるとの状況にないと考えています。』との答えもありました。
 無人ヘリコプター散布農薬の成分別数量を尋ねましたが、『農林水産航空協会が農薬別の使用量・散布面積を取りまとめていないときいております。』と他人ごとのような返事でした。私たちは、農林水産航空協会に尋ねましたが、やはり、統計データはないとのことなのです。同協会を所管する農水省は、データをまとめるよう指導すべきです。

【住宅地通知】
  [関連記事]記事t26101記事t26202記事t26501
 昨年4月に改定・発出された通知「住宅地等における農薬使用について」に関しては、02年の農薬取締法改定で廃止した防除業者の届出制度を復活するつもりはなく、『引き続き周知に努めてまいります。』とのことでした。私たちは、今後とも、個別の不適切の事例をモグラたたきのように、ひとつづつ、つぶして行かねばならないようです。

【除草剤使用について】
  [参考サイト]農水省通知:非農耕地専用と称する除草剤の販売等について(2003年2月28日)、除草剤表示についての省令(2004年6月4日)
 農薬と同じ成分の非植栽用除草剤は農薬取締法の対象外であるため、私たちは、農薬と同等に扱うべきだと、主張しています。国は、製造販売について、非植栽用であることを明示するよう義務づけていますが、成分別数量を尋ねたところ『農薬取締法の対象ではないことから、数量等の把握は行っておりません。』との回答でした。2012年度の点検結果では、製品の容器や包装に表示違反はなかったものの、全国5,360箇所の販売所のうち、2046箇所で農薬でない除草剤を扱っており、439箇所に陳列棚は陳列棚に農作物に使用できない旨の表示がなく、指導したとのことでした。

【神経毒性のある農薬について】
  [関連記事]記事t24005記事t24902記事t26903記事t27002
 有機リン系、カーバメート系、ピレスロイド系、有機塩素系、ネオニコチノイド系農薬、フェニルピラゾール系農薬など神経毒性の強い農薬の使用削減については、『新たな科学的知見などにより評価が見直された場合には、有機リン系農薬、カーバメート系農薬に限らず、登録の変更や取消しも検討することとなります。』との通り一遍の回答。
 ヒトの発達神経毒性を評価する方法を確立すべきではないかとの質問には、OECD(経済開発協力機構)によりガイドラインが策定されており、一部農薬では試験成績が提出されているというだけで、通知で、試験の実施を義務付けるようとの考えはみられません。

【農薬処理した種苗について】
  [関連記事]記事t25802記事t26403
 種苗法では、農薬の使用履歴を表示することになっています。適切な表示がなされているかの検査を種苗管理センターが行った結果、2012年度は15,852点中、農薬の使用回数や有効成分名が表示されていないなど、農薬使用履歴に関する不完全な表示が9点あったとのことです。しかし、種苗管理センターは、表示があるかどうかだけを調査し、その表示が正しいかどうかは調べていません。果たして、これで十分なのでしょうか。

【茶の残留農薬について】
  [関連記事]記事t27104
 茶の残留農薬調査事例が少ないことを指摘しましたが、『米、麦、大豆のほか、比較的農薬が残留しやすく、かつ食品としての摂取量も多い果菜類、葉菜類及び果実のうち、生産量の多いものを調査対象としている』とのことで、今後に、期待せざるをえません。

★都道府県、保健所設置都市へも要望
 この通知を踏まえ、4月30日付けで、都道府県47、保健所設置都市(含む政令指定都市)71に、次ぎのような農薬危害防止運動についての要望をだしました。(2)については、農水省へも質問しましたが、直接、都道府県等にお尋ねくださいとのことで、なんだか、私たちが国の下請け仕事をしているようです。
 反農薬東京グループからの要望:2014年度の農薬危害防止運動及びホウレンソウ適用農薬について

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作成:2014-05-25