ネオニコチノイド系農薬・斑点米関係にもどる
t27402#ホウレンソウにネオニコが多く使われているのに、まだ必要?〜都道府県へのアンケート結果#14-06
【関連記事】イミダクロプリド:記事t24501、記事t24705。
クロチアニジン:記事t26601、記事t27001、記事t27204、記事t27401
【参考サイト】農水省:農薬の残留状況調査における農産物別調査結果(平成23年度)(ホウレンソウ有)
アンケート調査:2014年度の農薬危害防止運動及びホウレンソウ適用農薬について
ホウレンソウの残留基準が緩和されようとしているのは、クロチアニジンをアブラムシ駆除へ適用拡大したためです。そこで、農薬防除基準をつくる都道府県に質問しました。回答がなかったのは石川県、滋賀県、長崎県、沖縄県の4県で、回答のあったのは43都道府県で、アンケートの回収率は85%でした。
2014年6月1日現在、ホウレンソウのアブラムシに登録のある農薬は、成分で9種、農薬の種類で26、製剤数で98あります。たった一つの作物の、一つの害虫に対してこれだけ多くの農薬が登録されていることに驚きます。いま以上に、登録農薬を増やすため、残留基準の緩和することに納得できません。
ホウレンソウに関する質問項目は5つです。以下、項目毎に回答をまとめました。
【質問1】
「貴都道府県が、ホウレンソウ栽培でのアブラムシ対策として、防除基準に掲載さ れている殺虫剤の農薬の種類名(成分名と剤型)を教えてください。」
防除基準(防除指針とも言う)は、農作物の病害虫防除等について、都道府県が作成する指針(ガイドライン)です。この基準を元に、個々の農家や農協が、どういう作物にどういう農薬をいつ、何回、使用するか決めます。
しかし、中には防除基準に農薬名を記載していない県もあり(岡山県)、また、ホウレンソウのアブラムシ対策としての農薬名は記載していないという県も(秋田県、和歌山県、福岡県)ありました。
北海道は、病害虫防除ガイド掲載農薬一覧(ホウレンソウ)の表を送ってくれましたが、その中にアブラムシはありませんでした。しかし、ホウレンソウだけで18種類の農薬をあげています。土壌くん蒸が多く、クロルピクリンなど8種類。有機リン系、ピレスロイド系なども目立ち、劇物に指定されているのは7種類でした。
以下、何種類の農薬がホウレンソウのアブラムシ対策防除基準に書かれているか、県別にまとめます。
北海道(上述)、青森(2)、岩手(2)、宮城(5)、山形(2)、福島(6)、茨城(5)、栃木(3)、群馬(15)、埼玉(15)、千葉(7)、東京都(3)、神奈川(9)、新潟(4)、富山(4)、福井(1)、山梨(4)、長野(5)、岐阜(17)、愛知(例示として載せているだけで防除基準と位置づけていない)、静岡(6)三重(14)、京都(化学農薬は記載していない)、大阪(4)、兵庫(2)、鳥取(3)、島根(10)、広島(アブラムシに限らずホウレンソウの殺虫剤リスト)、山口(14)、徳島(6)、香川(14)、愛媛(11)、高知(6)、佐賀(1)、熊本(4)、大分(9)、宮崎(2)、鹿児島(具体名なし)
回答には、様々な農薬が記載されており、、たとえば、埼玉県は農薬の種類として次の15をあげています。
ベンフラカルブ(粒剤)、メソミル(水和剤)アセタミプリド(水溶剤)、イミダクロプリド(粒剤、水和剤)、ジノテフラン(粒剤、水溶剤)、チアメトキサム(粒剤、水溶剤)、シペルメトリン(乳剤)、ペルメトリン(乳剤)、MEP(乳剤)、PAP(乳剤)、アセフェート(水溶剤)、マラソン(乳剤)。
農薬の種類は、ネオニコチノイド系が目立ちます。
イミダクロプリドが27県、ジノテフランが20県、チアメトキサムが12県防除基準に掲載しています。イミダクロプリドは、2011年にホウレンソウの残留基準を2.5ppmから15ppmに引き上げられ、使用に拍車がかけられたものと思われます(次質問参照)。クロチアニジンも残留基準が決まれば同様のことが起こるでしょう。
ネオニコチノイド系農薬以外にもシペルメトリンなどのピレスロイド系、ダイアジノン、MEPなどの有機リン系もあります。
【質問2】
「アブラムシ対策として、防除基準にイミダクロプリド粒剤を載せていますか。」
ここでは、ホウレンソウのアブラムシ対策としてイミダクロプリド粒剤を掲載しているかどうかだけ尋ねています。この農薬は土壌混和に使用され、残留量が多くなります。掲載していると回答した県は、茨城、栃木*、群馬*、埼玉*、千葉、神奈川など関東が多く、他に四国の香川、高知*でした(2012年の都道府県アンケートでは29都県から回答があり、載せる必要がない/現在は載せていないが16県あったのですが、*は変節した県です。記事t24705参照)
【質問3】
「貴都道府県は、ホウレンソウ栽培でのアブラムシ対策として、適用可能な殺虫剤が不足しているとお考えですか。」
この質問への回答は、以下の通りでした。
1,「不足していない」「現場からそういう要望はない」と回答した県が一番多く、26道府県−北海道、宮城、山形、福島、茨城、栃木、埼玉、新潟、富山、福井、山梨、静岡、愛知、三重、京都、大阪、兵庫、奈良、鳥取、島根、広島、徳島、香川、愛媛、高知、大分−でした。
2,現在使用している農薬に抵抗性が出る可能性があるので、将来、不足するだろうと回答したのは6県で、群馬、千葉、神奈川、山口、福岡、熊本でした。
3,「不足している」と回答した県は、青森、岩手、岐阜の3県でした。
4,不明・把握していないと回答した県、回答がなかった県は、秋田、山形、岡山、佐賀、鹿児島でした。
5,その他に分類される回答は、4都県でした。
東京都の「国の登録内容に従います」佐賀の「農技防で回答お願いします、」和歌山の「ホウレンソウに限らず、農作物全般でIPMの実践を推進」、長野の「アブラムシに限らず、ホウレンソウに適用可能な農薬は総じて少ないと考えている」
この回答を見ると58%が、ホウレンソウのアブラムシ対策農薬は不足していないと回答しています。不足しているという回答は、3県で6.9%です。現在は不足していないが将来不足するのではないと心配している県は、6県。これらの県は殺虫剤の薬剤抵抗性を問題にしています。
【質問4】
「貴都道府県は、ホウレンソウ栽培でのアブラムシ対策として、農薬不使用又は使用を減らす方法を検討し、推奨されておられますか。されている場合、どのような方法ですか。」
アブラムシ対策殺虫剤の薬剤抵抗性が心配なら、できるだけ農薬使用を減らすIPMの方法を推奨する必要があると思われますが、都道府県でどのような方法を示しているか聞いてみました。
1,具体的対策をあげた県は、19県で、 あげられた方法は、UVカットフイルム、寒冷紗などでの被覆、ほ場周辺の雑草対策、防虫ネットの使用、光反射マルチ、ナス科・アブラナ科作物を近くに植えないなど。
2,具体的対策は示さず、IPMを推進しているなどとの回答は15県でした。
3,特にない、農薬に代わる方法はないと回答したのは5道県でした。
【質問5】
「残留量が高くなることが避けられないクロチアニジン製剤の適用拡大について、私たちは反対していますが、貴都道府県のお考えをお示しください。」
1,国が判断すべき事であり、県としてはその遵守にとりくむとか、県としてコメントできないという回答がほとんどでした。
「クロチアニジンが従来から議論のある成分であることは承知していますが,安全性等のデータを持たない県が個別農薬の是非を判断することはできないものと考えます。」との回答が代表していると思われます。
しかし、中には「県として,クロチアニジン製剤の適用拡大を要望はしておりません」(茨城)、「農薬を使用しても生産者、消費者にとって安心のできる登録内容であってほしいと考える」(群馬)「国の残留性分析等の適用拡大試験結果を注視して、判断します」(東京)、「安全性を確保した上で、適用拡大を行うべきと考えます」(埼玉)、「兵庫県の試験研究機関の試験結果から、ホウレンソウの前作でチアメトキサムを施用すると、その代謝物であるクロチアニジンがホウレンソウから検出されることが明らかになっており、葉物野菜のうち、ホウレンソウでは、チンゲンサイ、シュンギクよりクロチアニジンの残留量が多くなる可能性が高いと考えられます。適用拡大があった場合でも、食品衛生法上の残留基準値を超えなければ安全であると考えていますが、作物との組み合わせで残留量が多くなるならば、本県で推進している環境創造型農業での生産を指導するうえで、使用の推奨はしません。」(兵庫)、「クロチアニジンの適用拡大について、特に必要であるとは考えていません。」(宮崎)、という回答もありました。
群馬県の回答で、初めて「消費者」という言葉がでてきます。他の県でも、農薬担当部署の回答とはいえ、作物を食べるのは消費者ですから、消費者のことも考慮してほしいものです。
また、大方の県のように、ホウレンソウのアブラムシ対策の農薬は不足していないといいながら、国が適用拡大を図っていることに、一言の意見も言わず、ご無理ごもっとも的姿勢には疑問を感じます。
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作成:2014-07-01、更新:2015-01-28