:農薬の毒性・健康被害にもどる
t27403#農薬危害防止運動について、地方自治体へのアンケート#14-06
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農薬危害防止運動:2009年、2010年、2011年、2012年、2013年、2014年
【参考サイト】農水省:H26年度「農薬危害防止運動」の実施について、実施要綱とポスター
アンケート調査:2014年度の農薬危害防止運動及びホウレンソウ適用農薬について
今年の農薬危害防止運動の農水省・環境省・厚労省通知は4月25日といつもより早く発出されました。反農薬東京グループは、この通知のあて先である、47都道府県と71保健所設置都市に、それぞれの自治体の危害防止運動等について、4月30日付けで、五つの質問を行いました。同時にクロチアニジンのホウレンソウへの適用拡大関連の質問も都道府県に行いました。
都道府県:47都道府県中43から回答がありました。回答が来なかったのは、石川県、滋賀県、長崎県、沖縄県の4県です。
保健所設置都市(以下設置都市という):保健所を設置できる政令指定都市、中核市、および政令で定める市をいい、全国で71ありますが、回答あったのは、以下の28市で、残りの43からは回答はありませんでした。
回答あり: 秋田市、旭川市、尼崎市、いわき市、小樽市、柏市、川越市、川崎市、北九州市、
京都市、神戸市、さいたま市、静岡市、富山市、豊中市、豊橋市、新潟市、八王子市、
浜松市、東大阪市、姫路市、枚方市、広島市、藤沢市、船橋市、前橋市、四日市市、和歌山市
回答なし:青森市、宇都宮市、大分市、大阪市、大津市、大牟田市、岡崎市、岡山市、鹿児島市、
金沢市、岐阜市、熊本市 、倉敷市、久留米市、郡山市、呉市、高知市、堺市、相模原市、
佐世保市、札幌市、下関市、仙台市、高崎市、高槻市、高松市、千葉市、豊田市、長崎市、
長野市、名古屋市、那覇市、奈良市、西宮市、函館市、福岡市、福山市、町田市、松山市、
宮崎市、盛岡市、横須賀市、横浜市
★農薬危害防止運動の独自要綱について
農薬危害防止運動の実施要綱は、国が通知していますが、地方自治体がそれぞれの状況にあわせて、重点項目を決め、独自の要綱等で指導できるようになっています。
そこで、自治体が作成した要綱等がどの程度あるか調べました。
都道府県では、回答のあった43のうち、34が独自要綱等ありと答え、そのうち17がホームページで公表していることがわかりました。一方、設置都市28は、すべて独自要綱等を作成しておらず、多くは、国や都道府県の要綱に従っているようです。
★農薬危害防止のための研修会
国の要綱では、農薬使用者や販売者、毒劇物取扱者を対象に、講習会等を開催して農薬の適正使用等を普及啓発することとなっています。
都道府県が行う講習会や研修会の回数や参加人数を尋ねた結果を表にまとめました。
43都道府県中、大分県を除く42県が実施していました。なお、大分県は県としてではなく、出先機関である振興局段階で実施しているとのことでした。
回数や参加人数に相当ばらつきがあります。愛知、三重、神奈川などのように、回数も、参加人数も多いところ、富山、富山などのように、参加対象を農薬管理指導士や無人ヘリコプター関係者、防除業者や販売者に限ったところも見られます。
表 都道府県の研修会等の開催回数と参加人数
県名 回数 参加人数 県名 回数 参加人数
北海道 2 559 三重県 414 7278
青森県 2 238 京都府 7 500
岩手県 8 555 大阪府 講習会 213
宮城県 1 159 管理指導士 375
山形県 無人ヘリ3 118 兵庫県 3 600
農薬適正使用4 376 奈良県 1 107
福島県 2 400 和歌山 13 503
茨城県 1 501 鳥取県 1 52 (*販売又は防除業者対象)
栃木県 10 700 島根県 6 309
埼玉県 9 1035 岡山県 2 約80
千葉県 5 1000 広島県 5 572
東京都 安全使用2 175 山口県 県域7 341
管理指導士3 469 各地域6 122
神奈川 285 3458 徳島県 3 190
新潟県 7 479 香川県 27 1486
富山県 管理指導士2 220 愛媛県 3 288
病害虫防除員2 36 高知県 3 150
福井県 2 154 講師派遣21 900
山梨県 3 229 福岡県 6 855
長野県 4 319 佐賀県 研修会 147
岐阜県 15 869 熊本県 3 525
静岡県 163 2825 宮崎県 17 607
愛知県 1182 29178 鹿児島県 10 500
設置都市では、実施していると回答があったところもありますが、市独自の指導ではなく、以下のような内容でした。
・尼崎市:JAを通じ年数回50人程度
・小樽市:農協等と説明会2回、参加人数20
・柏市:1回で庁内の関係部署35 人
・北九州市 学校給食用に出荷している生産者に研修会を開催(約30名)、
農薬の適正な使用・管理を指導する戸別訪問を実施(82)。
・神戸市 農業者組織で、品目毎の農薬の研修
・新潟市:松くい虫関連担当者参加の研修
・東大阪市、貸農園利用者向けに講習会を開催4回、104人、
・広島市、農協と連携して農業技術講習会 115回、1595人。
そのほか、富山市は、農薬関連の単独の研修はしていないが、市主催の農業関連研修会がある。京都市は、年間を通じて研修会を実施しているとの回答がありました。
都道府県や設置都市での研修等については、国が実施状況をきちんと調べ、問題点を発掘してもらいたいものです。
★クロルピクリン使用について
クロルピクリンは、揮発性で刺激臭があり、中毒件数や被害人数が多い土壌処理剤です。その出荷量は年間約6400トン(2012年)で、殺虫剤の中では、D−Dに次いで2番目に多いです。
都道府県の回答で、特別の注意をしていないのが、北海道、東京、新潟、三重、京都、大阪、奈良、佐賀、大分の9道府県ですが、奈良県は『太陽熱利用土壌消毒の普及を進めており、近年、県内からはクロルピクリンによる危害事例は報告されていません。』とのことでした。
残りの県は、それなりに、使用上の注意を喚起していますが、その内容は、バラバラで、研修会を開催し、クロルピクリン工業会のポスターや資料を使ったり、講師を派遣してもらうところもあります。しかし、散布者の保護具、散布後のフィルム被覆についての注意に重点が置かれており、住宅地から100m以上離すとしているのは、神奈川だけです。
一方、設置都市では、「特別なにもしていない」が、回答の3分の2を超える19市ありました。しているとしても、販売業者を指導するなどで、使用者への直接注意喚起をしっかりしてもらいたいものです。
なお、川崎市は、上述の神奈川県の100m規制に従い、農家が市内で使用する場合には指導することとしているとのことです。
★無人ヘリの実施届けは必要だ
無人ヘリコプター空中散布については、国の指導指針はあるものの、実施計画届は義務付けられておらず、都道府県等の独自指導にまかされています。
実施計画や実績届が提出されているのは 次の21府県で、2007年10月のアンケート調査結果の15府県より増えていました(*印が増えた県)。
青森、岩手*、宮城、山形、福島、茨城、栃木*、群馬、埼玉、千葉*(水稲防除の実施主体に提出求める)、長野、岐阜*、愛知*、三重、京都、島根、広島、徳島、高知、佐賀(指導のみ)、熊本*
なお、無人ヘリ空中散布を実施していない5都県(東京、神奈川、大阪、和歌山、沖縄)は当然ながら、提出はされません。
実施計画については、秋田のように届出義務検討中、奈良のようにHPで公表検討中と答えた県や、静岡や兵庫、大分のように必要だとしている県もあれば、北海道、新潟、岡山、山口、香川、福岡のように必要性を認めない県もありました。
検討中を含め、届出実施をしていたり、その必要性を認めている都道府県は半数以上で、国として、省令などで、きっちり届出や散布情報の周知徹底を義務づけ、さらに、住宅地近郊での空中散布禁止地帯の設定につなげていくことが必要です。
設置都市については、旭川市が囲み記事のような指導をしているほか、
無人ヘリ実施計画届の義務化を考えていない(秋田市や富山市、姫路市ほか)や、県の指針に従う(いわき市や、さいたま市、広島市ほか)との答えに分かれました。
新潟市からは、海岸保安林の松くい虫防除の無人ヘリ散布で委託防除業者から事業計画の提出を受け、地区説明会や近隣自治会へチラシ配布、市報や区報で周知するとの回答がありました。四日市市は、 事前の周知等は重要であるとしています。
なお、無人ヘリ空中散布を実施しない市は、尼崎市、小樽市、川越市、川崎市、京都市、豊中市、豊橋市、八王子市、浜松市、東大阪市、枚方市、藤沢市、船橋市、前橋市、和歌山市でした。
★住宅地通知における委託業者の入札資格について
昨年4月に改定された新住宅地通知については、すでに、周知状況について都道府県アンケートを実施したこともあり、今回は、新通知により、行政が農薬散布委託者を選ぶ場合の入札資格条件がどのように変更されたかを尋ねました。
都道府県の回答では、従来通りで変更がないとか、一般的な住宅地通知遵守しかいっていないのが22道府県、仕様書内容を把握していなかったり、この質問にきちんと答えないのが16県ありました。これをみると、殆どの県は、新住宅地通知の趣旨を入札資格条件として反映していないと受け取れます。
わずかに、埼玉は、ウメ輪紋ウイルスの感染ほ場周辺の防除に関する入札の際に、県認定の「農薬指導マスター」又は「農薬適正指導アドバイザー」を含む業者を条件にいれ、香川は、松くい虫防除に際してのみ、従前より、農薬管理指導者(士)の資格を求めているそうです。また、三重は、県管理道路の緑地管理業務等において、仕様書に「農薬管理指導士」の立会があるとのことです。
また、神奈川は『農政部局出先機関が管理する果樹園の委託仕様書に、「この業務にあたる責任者は、県が指定する防除関係講習会等を過去3 年以内に受講していること。又は、農薬管理指導士等の資格を有していること。」』とし、静岡は『農薬管理指導士等の資格や、県が開催する農薬使用に係る研修会を受講した者を業務の実施上の責任者に置くことができる者から選定するよう記載』としています。
一方、設定都市についても、『入札資格条件は変わらない』『把握していない』のほか、神戸市のように『入札を実施する事業に農薬使用を伴う業務内容がありません』と答えたところもありました。
参考のため、いくつかの市の回答をあげておきます。
・静岡市:事務委託により発注しているため、入札の公告をしていないが、今年度から業者の選定に当たって農薬の研修等を受講した実績のある業者に発注した。仕様書は、主任技術者、現場代理人については今年度より「農薬管理指導士の資格を有する者、又は農薬に関する研修等を受講したものとする」を追加した。
・豊橋市:「市有施設における農薬・殺虫剤等薬剤適正使用について」を発出し、農薬による病害虫等防除を業者に委託して行う場合の資格要件を新たに規定した。
・四日市市 三重県農薬指導士の資格を有することを条件として付しています。
【囲み記事】旭川市「病害虫防除実施予定に関する調査等の実施について」
【参考サイト】旭川市農政部農業振興課:平成26年度病害虫防除の実施予定について
実施目的については、有人及び無人ヘリによる防除及び水稲・麦等において時期的に一斉に行われる
地上防除を対象とし、『各農協合意のもと,病害虫防除実施予定及び病害虫防除実施予定の事前周知
方法に関する調査(以下「病害虫防除実施予定に関する調査」という。)を実施し,市民に情報提供
を行うものとする。』となっています。
さらに、『農薬散布を行う農地の所有者,防除の責任者,農薬の使用委託者及び農薬使用者全てが,
農林水産省消費・安全局長,環境省水大気環境局長通知「住宅地等における農薬使用について」(以
下「局長通知」という。)に基づき,農薬散布に伴い周辺住民に影響を及ぼすことがないよう必要な
措置に努めるよう併せて依頼する。』となっています。
調査は、決められた調査様式で。4つの単位農協に、実施予定の7日前までに、計画を提出することに
なります。
情報公開の項では『情報を受けた「病害虫防除実施予定調査票」については市ホームページで公開し,
市民に情報提供を行う。』となっています。
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作成:2014-08-31