環境汚染にもどる

t27502#農薬によるミツバチ被害〜日本養蜂協会調べで118件#14-07
【関連記事】記事t25203(2010/11年被害統計)、記事t26503(2012年被害統計)、記事t27501
【参考サイト】日本養蜂協会:Top Page
       農水省:蜜蜂被害事例調査の中間取りまとめ及び今後の対策について
           蜜蜂被害事例調査中間取りまとめ(平成25年度報告分)
           平成26年度の水稲の開花期に向けた蜜蜂被害軽減対策の推進について
           農薬による蜜蜂の危害を防止するための我が国の取組(2014.9月改訂)
       農研機構畜産草地研究所:Top Page
        夏季に北日本水田地帯で発生が見られる巣箱周辺でのミツバチへい死の原因について(7/18公表)

 ミツバチ被害についての6月の農水省通知に関連して、同省の養蜂統計とミツバチ養蜂業者の団体である日本養蜂協会(旧日本養蜂はちみつ協会)が公表している被害状況を調べました。

★ミツバチ関連統計でみる推移
 花粉媒介用のミツバチ不足が問題になったのは、2008年から09年にかけてのことでした。農水省は、蜜源植物の栽培面積は減少傾向にあるものの、女王蜂供給対策が功を奏したのか、10年以後、不足は生じていないとしています。
 そのことは、表1、2に示した養蜂関連統計の最近の数字にも表れています。
   表1 養蜂者数等の推移(農水省調べ)
   年度      2010年 2011年 2012年 2013年
   養蜂者数    5353  5790  5934  8314
   蜂蜜生産トン   2639   2684   2763
   国産自給率%  6.2   6.2    6.8

   表2 花粉交配へのミツバチ利用状況
   年度    2010年 2011年 2012年 2013年 
   利用農家数  41662   49501   49809
   蜂群数   146046  130846  131559
   蜂供給の会員数*         649   583
     同上蜂群数*        79365  75049
 2013年度の養蜂者数と飼育群数が前年より、増えているのは、養蜂振興法の改定で、養蜂届の提出を、それまでの業者だけでなく、一般の養蜂者にも義務づけたからと思われます。
 これらの数値は、主に西洋ミツバチに関することで、自然界の花粉媒介昆虫の種類や個体数の変化については、調査はされていないことに留意してください。

★13年の農薬によるミツバチ被害
 日本養蜂協会によるミツバチの原因別被害状況は、表3のようで、ダニ被害が一番多く、つぎが農薬となっています。また、表4に、都道府県別のミツバチ飼育状況と農薬被害状況を示しました。被害合計は前年より12件増え、118件でしたが、被害群数は218群減って、7647群でした(長崎県など5県の被害数が不明なので、実数はさらに増えると思われる)。
   表3 2013年のミツバチ原因別被害状況

   ミツバチ被害原因  被害業者数  被害群数
     農薬        118     7647
     ダニ        356     7856
     熊          56      354
     腐蛆病数値不明     前年同じ    前年2倍
     盗難、スズメバチ数値不明
 一番被害群数が多いのは、北海道の1495群で、愛媛県900群、岩手県811群がつづきます。前年からの被害群数の増減をみると、栃木県や和歌山県は、大幅に減少している県もあれば、香川県、愛知県、福島県のように増加している県もありました。
 昨今の養蜂協会の動きをみると、会員に対して、農水省のミツバチ被害調査に協力を要請するとともに、蜂蜜の残留基準を設定(現在基準のある農薬等は52成分、その他は一律基準0.01ppm適用となる)のため、農水省が協会に依頼した農薬残留モニタリング調査を7団体で行い、301農薬の一斉分析を行うこととしています。愛媛大学からの斃死蜂中の農薬分析のため死蜂の提供依頼については、会員養蜂家約20名で対応するそうです。
 農水省が指導している農薬散布情報を農薬使用者と養蜂者で共有状況、避難の実態 蜜やイネの花粉での残留農薬調査の実施を求めてもいいと思うのですが、そんなアクションはないようです。

 表4 2013年度の都道府県別養蜂者数及び農薬によるミツバチ被害状況(出典:日蜂通信598号)

 県名   養蜂者数             蜂群数100群         被害件数          被害群数   
 年度   2013年  前年増減   2013年   前年増減   2013年  前年増減   2013年  前年増減
 北海道   110      15         63          6     15      4       1495   250
 青森      85       9         55          3      8         7         272   252
 岩手     164      49         37          4     12         5         811   261
 宮城      65     -22         13          3        1        -1          30    25
 秋田      95     - 2         48          2        0         0           0     0
 山形     145      17         47         -1       12                  509
 福島     293      47         87         15       16        13         521   511
 茨城     129      27         47          5        0        -1           0   -70
 栃木     144      27         51        -12        1       -13          10 -2851
 群馬     284      28         48          4      不明 
 埼玉     272      65         69         18        0         0           0     0
 千葉     204      55         47         -2        2        -1          62   -38
 東京     158      29         16          2        2         2         220   220
 神奈川   236      33         20          2        1         1         160   160
 山梨     164     112         12          3        0         0           0     0
 長野     657     124        125          5        3         2         140   104
 静岡     350      87         50          2        2         0          11    -4
 新潟     103      10         12          0        3         1           4   -26
 富山      29       4          6          1        0        -1           0   -13
 石川      47       5          6         -1        1         1         100   100
 福井      24      12          1          0        1         1           5     5
 岐阜     291     112         67          9       不明
 愛知     325      80         53          8        2        -1         650   600
 三重      64      21         28          0        0         0      0     0
 滋賀      65      30         12         -2       不明 
 京都     177      22         11          1        2         1          23    18
 大阪     133     -47         15         -4        2         2         100   100
 兵庫     237     106         39          1        1         0          10     0
 奈良      77      48         15          3        1         0          29   -51
 和歌山   446     272        115         24        2        -5         300 -1124
 鳥取     137      46         26          8        1         1          30    30
 島根     152      41         19          3        2                     6
 岡山     262     130         41          8        5         1          10   -28
 広島     196     105         46          9        3         3          75    75
 山口     225       6         33          3        0        -6           0   -61
 徳島     117      53         19          5        0        -1          0 -10
 香川     129      96         37          7        2         2         900   900
 愛媛     229      68         58          4        6         6         475   175
 高知      46      12          9          2        0         0           0     0
 福岡     193      55         83          4        1        -3          15   -47
 佐賀      60      13         37          0        2         2          72    72
 長崎     173      40         41        -12       不明
 熊本     110       9        102         -2        2         2         400   400
 大分     144      28         52         13       不明
 宮崎      89      27         44         10        4         0         202  -238
 鹿児島   380     254         82         19        0        -3           0  -323
 沖縄      99      22         94         15        0        -1           0    -2
 合計    8314    2380       2038        195      118        12        7647 -2183
 

【囲み記事】行政の代弁か日生協のネオニコチノイドについての見解
【参考サイト】日本生活協同組合連合会:
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       ネオニコチノイド系農薬に関する調査結果と日本生協連の考え方
       植防コメント;ネオニコチノイド系農薬に関する最近の情報(2014/07/02)
       市民キャビネット農都地域部会:Top Page
       「農薬から農業と環境を考える」シリーズ・第2回シンポジウム(5/24)より
        生活クラブ生協:プレゼン「農薬問題ー生活クラブ生協の取組みから」
                「ネオニコチノイド系農薬調査報告」

 日本生活協同組合連合会(日本生協連)は、各地の生協や生協連合会が加入する全国組織で、2012年現在、343の生協が加入し、組合員総数約2700万人の日本最大の消費者組織だということです。
その日生協が5月21日付で「ネオニコチノイド系農薬に関する調査結果と日本生協連の考え方」を発表し、ネオニコチノイド系農薬は問題ないと主張しています。
この文書は、一読して、厚労省や農水省、食品安全委員会が合同で書いたのかと思われる内容です。生協とは消費者の立場で安全、安心を追求する組織かと思っておりましたが、とんでもない勘違いだったようです。
 人の健康との関係では、農薬登録の際に様々な試験がなされていると、農水省の言い分をそのままを伝えています。発達神経毒性については試験項目に含まれていないが、農水省の指導でメーカーから出されており、食品安全委員会が評価した5種のネオニコ系農薬は発達神経毒性の結果を踏まえている、としています。行政資料を無批判に受け容れていては、クロチアニジンの場合のように評価書にない論文も見つけ得ません。
残留基準についても、同様に、TMDIがADIの8割以下なら安全という厚労省の言い分そのままを引き、もし、8割を超える場合は、「より実態に近い」EDIで計算しなおすとのこと。ADIの8割以下なら安全という根拠もはっきりしないのですが、日生協は厚労省の受け売りで済ましています。さらに、食品安全委員会のADIの決め方にも問題があるのに、そのことには、ひとこともふれず、無批判に食品安全委員会の言い分を鵜呑みにしています。
残留分析をすると、ほとんどの検体で定量下限値以下であること、検出されたとしても基準より大幅に低い値であり、基準を超えるものはなかったとしています。残留基準が適正であり、国民の健康を守っているとの前提のもとに、基準を超えるものがほとんどないと強弁することは、市販の農産物は安全だとお墨付きを与えたことになります。ならば、消費者に軸足を置く生協という組織はいらないのではないでしょうか。
ミツバチとネオニコの関係について日生協は、20の行政資料や文献を挙げて検討しているのですが、被害を訴える日本養蜂協会の資料にあたることもなく、「ネオニコチノイド系農薬が日本の蜂群数の減少に関与している明確な事実は見つけられない」としました。農水省は、本号でとりあげたように、水田へのネオニコの散布がミツバチに被害を与えているので注意するようにと通知をだしたばかりですが、日生協の主張には、主体性が全くなく、国際機関や諸外国での取り組み、農水省や行政研究機関の対応の動きを注視し、必要に応じて行政への要望をあげていくというのみです。


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作成:2014-09-28