ネオニコチノイド農薬の毒性・健康被害にもどる
t27503#クロチアニジンのパブリックコメントに意見を! 締切は7月31日〜こんないいかげんな評価で決められたらたまらない#14-07
【関連記事】記事t27204、記事t27401
【参考サイト】食品安全委員会:
クロチアニジンに係る食品健康影響評価に関する審議結果(案)についての意見・情報の募集についてと
審議結果案(評価書6版)
クロチアニジンの健康影響評価について、7月1日の食品安全委員会(以下食安委)では、前号で紹介した農薬専門調査会の評価書第6版案が数分間の審議で(食安委議事録)、承認され、同委員会案として、7月2日からパブコメ意見が募集されています。
1月に公表された評価書5版との主な違いは、以下の点です。
1、毒性評価で、厚労省の残留基準のパブコメ意見で指摘された発達神経毒性等の論文 の評価が追加され、ADI(一日許容摂取量)は現状通り、0.097mg/kg体重/日。
2、あらたに、ARfD(急性参照用量=急性中毒発症推定量)0.6mg/kg体重を決定
3、残留データから得られる推定摂取量の見直し
ここでは、食安委の評価書第6版案の概要を紹介します。パブコメは7月31日が締切ですが、インターネットからの投稿は500文字の制限があり、長い意見は分割投稿か、FAX(03-3584-7391)又は郵送せねばならないから注意してください。
当グループの提出したパブコメ意見とパブコメ結果9月11日案
★発達神経毒性はない〜ADIは変らず
食安委は、メーカーが提出したラットのの試験については、『発達神経毒性は認められなかった。』と結論していますが、東京都健康安全研究センターの田中さんによるマウスの発達神経毒性に関する論文(12年5月発行の記事t24902参照)について、いままで、健康影響評価の対象にして来ませんでした。
私たちは、昨年の厚労省の残留基準改訂のパブコメや食安委への要望で、田中論文を評価に組み入れるよう求めてきました。
新たに提出された2つの田中論文について、食安委は、『両実験は被験物質の混餌飼料中の安定性等が不明なため参考資料とした』とし、『行動観察等の検査項目に変化が認められたが、これらの所見はいずれも用量相関性がないか又は群間での差が明確ではなく、食品安全委員会農薬専門調査会は、検体投与の影響ではないと判断した。』としました。
田中論文では、無毒性量は示されてはいませんが、試験データの詳細を示し『実験でのクロチアニジンの投与レベルが、マウスの神経行動パラメーターにいくつかの悪影響を与えた』とされています。グリーンピース・ジャパンの情報開示請求で公表された農薬抄録よりも、はるかに科学的な学術論文であることが、一目瞭然なのに、食安委は、試験期間中に与えられた飼料ペレット中のクロチアニジンの安定性が調べられていないことにいちゃもんをつけ、とるに足りない研究だといわんばかりです。
また、試験された発達神経毒性の発現指標に影響がでたのに、それが、用量相関性がない、すなはち、投与量を増すと、影響も増加するという関連がみられないとして、クロチアニジンの影響ではないと断じているのには、驚きます。
発達毒性試験における投与量の設定、試験動物の数などを考えると、たとえ、投与量との関連が明確でなくても、ある時期に、発達神経毒性の発現指標に影響がでた投与群があるということこそが、重要なのです。
★ARfD;EUの6倍の0.6mg/kg体重
【関連記事】ARfD:記事t20006
【参考サイト】食品安全委員会農薬専門調査会:
農薬の食品健康影響評価における暴露評価対象物質に関する考え方 (2013/06/27決定)
農薬の急性参照用量設定における基本的考え方(2014/02/14決定)
農水省:農薬制度に関する懇談会、第10回(2014/03/17)にある
急性参照用量・短期暴露評価をめぐる懇談会の議論の経緯
急性参照用量の設定について
急性参照用量(ARfD)を考慮した食品中の残留農薬基準の設定について
FAO/WHO合同残留農薬専門家会議(JMPR)及びコーデックス残留農薬部会(CCPR)に関する勉強会にある
暴露評価の必要性など
新たに設定されたARfDは、0.6mg/kg体重とされました。これは、ラットの急性神経毒性試験で得られた無作用量60mg/kg体重を安全係数100で割った値です。抄録によるとこの試験は、アメリカのバイエル社が実施したもので、4つの群(0、20、40、60mg/kg体重)にわけ、各群12匹に、懸濁液状のクロチアニジンを強制的に1回経口投与することによってなされました。いずれの群でも、試験動物の機能観察総合検査や自発運動量検査では、投与の影響は認められず、無毒性量は最大投与量と同じ60mg/kg体重とされました。
まず、実験デザインの適確性が問題です。成獣に近い9週齢の若齢雄ラットを試験に用いていますが、発達途上にある幼若ラットを用いる必要はなかったのでしょうか。
安全係数100も問題です。週齢は安全係数の個体差10の中にいれてよいのでしょうか。それにヒトとの種差を10としてよいのか疑問です。
★食安委のARfDの基本的考え方
食安委は2月に農薬調査会の決定として「日本における農薬等の急性参照用量設定の基本的考え方 」を公表、ARfDを設定に際して必要な評価内容が記されています。基本的考え方の中には、
・評価対象農薬に関する全ての試験並びに化学構造及び作用機序が類似する化学物質
の毒性プロファイルを考慮して設定する。
・安全係数について、種差・個体差及び追加の係数についてはADI と同様に考える。
・ヒトのデータが得られている場合には、ヒトのデータを重視する。
などが挙がっています。
また、毒性試験を評価する場合、どのような試験で、どのような毒性発現を指標とするかが問題となります。急性神経毒性試験が重要だとされ、次ぎに発生毒性試験が挙がっています。後者は、妊娠中のある時期に、高い量の単回投与があった場合、仔に影響がでないかの評価に関連するからです。
食安委のクロチアニジン評価書では、ARfDは、前述の急性神経毒性試験しか評価されていません。ちなみに、EUでは、妊娠雌への経口投与により発生毒性を評価する試験もARfD算出の根拠にされ、ラットへの無毒性量は10mg/kg体重として、ARfDは0.1mg/kg体重となっています。
新たに設定されたARfDは、一生涯にわたる食品の摂食量ではなく、短期摂食量が関係するため、フードファクターのかわりに、食品ごとに一回、最大いくら食べるかという最大摂食量が問題となります。アセタミプリドの場合(厚労省資料のp76)を例にとると、ホウレンソウの小児のフードファクター5.9g/人(旧値10.1g/人)に対し、最大摂食量は81.6g/人と推定されています。
この値を採用し、クロチアニジンの場合を推算すると、残留試験の平均最大値から得られた暴露量は27.8ppmでは、ARfDの67.5%にあたる405μg/kg体重を摂食することになります。仮に、残留基準が厚労省案のように40ppmだとすると、短期の最大摂取量は583μg/kg体重となり、ARfDの97.1%となります。これは、ホウレンソウ1品だけの値ですがら、他の食品、飲料、大気からの摂取を考えると、とても安全だとは、いえなくなるでしょう。
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作成:2014-07-28