環境汚染にもどる

t27607#第23回環境化学討論会:農薬の水系汚染(その1)横浜市の河川と大阪府の浄水場調査〜鶴見川でテブコナゾールが99%の検出率白アリ防除剤か?#14-08
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【参考サイト】日本環境化学会:Top Page
    第23回環境化学討論会プログラム(於京都大学):口頭発表ポスター発表

 農薬の水系汚染については昨年の本誌264号で、第22回環境化学討論会において報告された滋賀県、愛媛県、新潟県、大阪府、東京都の河川水などの調査結果を紹介しました。 今号と次号(記事t27704)の2回にわたり、5月に京都で開催された第23回の討論会での研究発表内容を紹介します。

★横浜市鶴見川水系の汚染
 関東学院大学の鎌田さんらは いままで水道水水質管理目標にある農薬類、特に、ネオニコチノイド系農薬の水系汚染について、調査してきましたが、引き続いて、横浜市鶴見川水系で、殺虫剤16、殺菌剤16、除草剤26、その他1の59種の農薬成分の汚染状況を調査しました。  2013年4月〜11月の間、ほぼ、2週に1回の割りで、河川水採取が行われました。検出された農薬は24種で、検出率が20%を超えたのは以下の8農薬でした。表に、検出率と最大値を示しました。
  表1 検出率20%以上の農薬
   農薬名       検出率 最大値
   テブコナゾール     99%  60ng/L
   オリサストロビンE    55
   テフリルトリオン     34  190
   オリサストロビンZ    33
   ブロマシル        32   110
   アメトリン        23   50
   ジノテフラン       20
   ピリミノバックメチルE 20  110
 ネオニコチノイド系農薬7種については、イミダクロプリド、クロチアニジン、ジノテフランの3種が検出されており、ジノテフランの検出率は20%ですが、他はそれよりひくく、検出値は記載されていません。
 99%の検出率で見出されたテブコナゾールの季節変化を下図に示します。採取場所による特徴はなく、濃度のバラツキもそれほど大きくありません。果樹や野菜で使用される殺菌剤ですが、木材に処理されたシロアリ防除剤に由来しているかも知れず、検出率が高いの気になります。
      図 テブコナゾールの検出濃度と降雨量の関係 −略−

 また、検出値が高い水田除草剤のテフリルトリオン(検出値190ng/L)や、110ng/L検出されたものに、果樹園でよく使われる除草剤ブロマシルや水田除草剤ピリミノバックメチルがありました。
 これらの農薬は、水道法の分析対象農薬に入っておらず、今後の汚染状況を継続的に調査する必要性を著者らは訴えています。

★大阪府内の浄水場での農薬汚染
【参考サイト】大阪府立公衆衛生研究所大阪府水道水中微量有機物調査にある2012年農薬類調査2013年調査結果

 昨年、大阪府内河川のネオニコチノイド系クロチアニジンの汚染状況を報告した大阪府公衆衛生研究所の吉田さんらは、水道水中の微量有機物調査の一環として、2012年度の、府内24の浄水施設での原水と浄水中の農薬25種の分析結果を報告しました(試料採取は5月と7月の2回)。
 分析対象農薬は、以下の通りです。
  ・殺虫剤;アセタミプリド、カズサホス、カルボスルファン、クロチアニジン、
       ジノテフラン、チアクロプリド、チアメトキサム、トルフェンピラド、
       ピラクロホス、ホサロン
  ・殺菌剤:オリサストロビン、ジフェノコナゾール、シプロジニル、シメコナゾール、
       チアジニル、テトラコナゾール、テブコナゾール、トリフルミゾール、
       フルスルファミド、ボスカリド、
  ・除草剤:オキサジアルギル、オキサジクロメホン、フェントラザミド、ブロマシル、
       ベンゾビシクロン
   表2に、平均検出率が10%を超えた農薬のリストを示します。
  表2 大阪府内浄水場での農薬調査
  農薬名     試料 検出率 最大値 
  ブロマシル    原水  46%   41ng/L
  クロチアニジン 原水  42   444
          浄水  31    14
  ジノテフラン  原水  35   1036
          浄水  29    41
  テトラコナゾール原水  27    0.91
  オキサジクロメホン原水 21     21
  フルスルファミド原水  17    0.57
  テブコナゾール 原水  17     3.1
          浄水   13     1.3
  オリサストロビン原水  13    59
  フェントラザミド原水  10    38 
 殺虫剤で、検出値の高かったのは、ネオニコチノイドのジノテフランとクロチアニジンで、表の最大検出値1036と444ng/Lは、いずれも泉南市の金熊寺( きんゆうじ)川を水源とする六尾浄水場における5月の調査結果で、急速ろ過処理後の浄水での検出値はそれぞれ39、7.7ng/Lと減少しています。7月の調査では、原水で、それぞれ26と1.7ng/Lでした。
 他のネオニコチノイド系は、アセタミプリドが原水で<0.51〜2.6ng/L、チアクロプリドが原水で<0.29〜0.50、チアメトキサムが浄水で<2.4〜3.3ng/Lでした。
 殺菌剤では、5月に、猪名川水系の池田市古江浄水場の浄水で79ng/Lのオリザストロビンが検出されたのが、一番高い値で、同成分は、7月に淀川水系の大阪広域水道企業団村野浄水場や同水系の吹田市泉浄水所でそれぞれ58、59ng/L見出されました。
 除草剤では、ブロマシル検出値が41ng/Lと一番高かったのは、泉浄水所の7月原水。水稲用除草剤のフェントラザミドの50ng/Lは、前述の六尾浄水場の5月浄水で、この時、原水は38ng/Lでした。

 著者らは、原水検出率は大阪府内の農薬出荷量と相関関係は認められると考察し、春、夏の2回の測定結果から得た水道水由来の推定曝露量を一日摂取許容量と比較するADIの0.0000056〜0.038%であったと推定していますが、EUの基準100ng/Lを超える農薬がみられるのは心配です。

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作成:2014-10-26