残留農薬にもどる

t27705#農水省発表の茶の残留農薬調査〜検出率97%、すべて3成分以上残留、14成分検出の煎茶も#14-09
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【参考サイト】農水省:農産物輸出促進のための新たな防除体系の確立に必要な輸出相手国の残留農薬基準値の調査報告書

 お茶の残留農薬については、農水省に調査をするよう求めても、なかなか実施されません。本誌271号では、台湾での輸入の際の基準違反事例とアクト・ビヨンド・トラスト(環境保護活動をする団体等に資金援助やコンサルタントほかを行う一般社団法人)の調査結果を紹介しましたが、このほど、農水省のHPに「農産物輸出促進のための新たな防除体系の確立に必要な輸出相手国の残留農薬基準値の調査」という報告が掲載されました。
 農産物の輸出を倍増するため、問題点として農薬残留の現状レベルがどうかを、リンゴ、カンキツ(ミカン、ミカン以外)、ナシ及び茶について検討したということで、茶の分析結果が掲載されたので、紹介します。

★4府県の茶葉33検体をドイツで分析
 茶葉については、輸出相手国での残留基準を超える場合にストップされる恐れがあるため、2013年度の残留実態調査として、慣行農法による茶の栽培地(静岡県、京都府、福岡県、鹿児島県)における一番茶の製茶が選ばれました。茶は最大で5回収穫されますが、最も残留が少ないとされるのが一番茶だそうです。
 分析された製茶の種類は、抹茶(3検体)、てん茶(1検体)、かぶせ茶(2検体)、玉露(4検体)、煎茶(23検体)の合計33検体。分析農薬は461成分で、輸出がめざされているEUを想定し、ドイツの分析機関で実施されました。

★28種の農薬が検出された
 調査した33検体で、煎茶1検体をのぞき、32検体から28種の農薬が検出されました。検出範囲と検出率、茶の種類別検出数を、日本、台湾、EUの残留基準とともに、表1に示しました。茶の種類別の数値にある*は、検出範囲にある最大値に対応する茶葉があったことを意味します。
 検出率が、一番高いのは、殺ダニ剤として使用されるクロルフェナピル(商品名コテツ)で87.8%(検出範囲: 0.006-1.15ppm)でした。ついで、ジノテフラン54.5%(同0.05-5.8ppm)で、そのほか30%を超えたのは、ピリミホスメチル42.4%(0.02-0.5ppm)、チアクロプリド36.4%(0.02-1.4ppm)、テブコナゾール33.3%(0.02-3.5ppm)、フルベンジアミド30.3%(0.01-0.47ppm)でした。
 検出値が高かったのは、いずれも玉露で、ネオニコチノイド系殺虫剤のクロチアニジン5.9ppmやジノテフラン5.8ppmが目立ちます。そのほか、1ppmを超えたのは、殺菌剤テブコナゾール3.5ppm、ネオニコ系のチアクロプリド1.4ppm、クロルフェナピル1.14ppmでした。
 また、日本の茶の残留基準は表1のように10ppm以上のものが多く、基準超えはみられません。

 表1 茶葉中に検出された農薬と残留基準比較  −省略−

★複数農薬検出 10種を超える煎茶多数
 次頁の表2に示すように、33検体のうち、32検体すべてから3種以上の農薬が検出されました。検出率は97%で、3〜5種の農薬が検出された茶が全体の約64%でした。中には、12種や14種の農薬が検出された煎茶もありました。
 製茶の際に、収穫畑の異なる茶葉がブレンドされていることも考えられますが、茶の栽培に、いかに、多くの農薬が使用されているかの証しと思われます。
   表2 検出された農薬数別の検体数        

    検出 抹茶 てん茶 かぶせ茶 玉露 煎茶 合計
   農薬数

    0                                1    1
    3                           1    7    8
    4      1     1                   5    7
    5      1                    1    4    6
    6                           2    1    3
    7                   1            1    2
    8      1            1            2    4
    12                                1    1
    14                                1    1
   検体総数 3    1      2       4  23   33
★玉露では、半年以上前散布農薬も残留
 玉露では、2検体について、摘採日までの過去一年間に散布した農薬散布履歴とその残留値が調査されました。
 表3−省略−に示したように、半年以上前に散布したり、散布実績のない検体を13年11月、12月に分析したところ、10種の農薬が検出されたケースがありました。特に、ネオニコチノイド系のクロチアニジン、ジノテフラン、チアクロプリドが1.4〜11ppm検出されており、残留性が高いことを窺わせます。ただし、いずれも、国内残留基準が高いため、流通に規制はありません。

  表3 玉露の農薬散布履歴と残留量の関連 −省略−

 報告では、散布実績がないにも拘わらず検出された農薬について、『隣接圃場からのドリフト、製茶工程の汚染等、農薬残留の問題は散布以外の場面でも生じることが示唆された。』とし、『複数茶園での収穫物の混合が想定される場合には、全茶園での散布履歴の把握が不可欠である』と述べて、茶の輸出には、まだ、問題が多いことが指摘されています。

★国内流通茶も輸出品なみに
 この調査で茶に検出された農薬はすべて、日本の残留基準以下で、食品衛生法違反にはなりませんでした。しかし、表1に示したように、輸出想定相手国の茶の残留基準と比較すると、EU残留基準を超えが16農薬で30検体、台湾の残留基準超えが7農薬で26検体あり、輸出用としては不適合でした。
 さすがに、日本の場合も何十ppmという残留基準ギリギリの検体はありませんでしたが、諸外国に比べ、高濃度で、多種の農薬が残留しているお茶を平気で飲んでいることになりますから、茶経由の農薬摂取量が多いことは間違いありません。
 輸出するために、栽培に使用する農薬の残留値を低くする前に、国内で流通するお茶についても、海外並の残留基準を超えないようにすることが先決と思います。


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作成:2014-11-28