環境汚染にもどる

t27802#Q&Aを修正したものの〜農薬によるミツバチ被害についての農水省からの回答#14-10
【関連記事】連載記事:ネオニコチノイドとミツバチ被害を巡る動き t26402(第一回)t27202(最終回)
      記事t27502記事t27606
【参考サイト】農水省:
        6月20日 蜜蜂被害事例調査の中間取りまとめ及び今後の対策について
        9月18日 農薬による蜜蜂の危害を防止するための我が国の取組(2014.9月改訂)
       農業環境技術研究所畜産草地研究所
        7月18日 夏季に北日本水田地帯で発生が見られる巣箱周辺でのミツバチへい死 の原因について

 農水省は、昨年の8月に公表した「農薬による蜜蜂の危害を防止するための我が国の取組Q&A」(t26502号参照)を、今年6月の農水省及び7月の農業環境技術研究所(農研機構)の報告を踏まえ、修正しました。いままで、年間数件の被害とあった個所を大幅に書き直した上、大量死の原因が水稲斑点米カメムシ防除農薬の可能性が強いことを認め、対策を提示しましたが、「水稲のカメムシ防除に重要な農薬です」としている点は全くかわりません。
 ここでは、私たちは、先の斑点米カメムシ防除農薬の使用を止めよという要望と並行して、農水省に質していた「 斑点米カメムシ農薬防除とミツバチ被害等についてのお尋ね」への主な回答を紹介します。
 9月8日:反農薬東京グループからの農水省への質問と回答

★殺虫剤を直接あびることとは、
[質問1]6月20日のプレスリリース「蜜蜂被害事例調査の中間取りまとめ及び今後の対策について」で、『蜜蜂被害は、水稲の開花期に多く、水稲のカメムシ防除に使用した農薬(殺虫剤)を直接浴びたことが原因の可能性があると考えられました。』としているが、その内容について、下記のいずれを意味するか。
  (1)散布の際に、農薬が直接、ミツバチの体に付着する
  (2)散布された農薬が付着した水稲や周辺植物(茎葉、稲穂など)にミツバチが直接触れる
  (3)散布農薬が付着した花蜜や花粉をミツバチが触れたり、食べたりする
  (4)散布農薬が溶けた水にミツバチが触れたり、飲んだりする
[回答] 「−前略−水稲の開花期に発生した被害の67%で巣箱に異常がないことを確認してから被害に気づくまでの間(被害発生期間)に、周辺にカメムシ防除のための殺虫剤散布が行われていたとの報告がありました。−中略−死虫から検出された、カメムシ防除に用いられる3成分(イミダクロプリド、クロチアニジン、エチプロール)については、蜜蜂の毒性を示すLD50値(半数致死量)の1/10程度〜LD50値程度が検出されたものもありました。これらの農薬の散布液が少量付着しただけでも蜜蜂が死ぬ可能性があると考えられます。」とし、「これまでの限られた事例からは(2)(3)(4)の可能性を推測させる積極的なデータは得られていません。」とのことで、散布液滴が散布中に直接ミツバチにかかることを意味するのだそうです。

★粒剤散布について
[質問2] 『蜜蜂が暴露しにくい形態(粒剤の田面散布)の殺虫剤を使用する』とあるが、粒剤の問題点はないか。
(2-1)斑点米カメムシ防除に適用のある粒剤、無人ヘリコプター適用剤はどのようなものがあるか。
 [回答]水稲の斑点米カメムシ防除に適用のある粒剤としては、ジノテフランやエチプロール、クロチアニジンなどを有効成分とする剤が登録されています。このうち、ジノテフランを有効成分とする剤の幾つかでは無人ヘリコプターによる散布が可能です。
(2-2)粒剤の中には、単位面積あたりの活性成分量が、希釈液の散布の場合よりも、3倍程度多いものがあるが、粒剤を使う場合、環境負荷が増大し、水生生物への影響は増さないか。
[回答]水生生物への影響については、まず、環境省において、水産動植物の毒性試験結果に基づき基準値を定め、これと最も高くなる使用方法で使用した場合の環境中予測濃度と比較し、基準値を下回る場合に登録をしています。これにより、水産動植物の被害が発生し、かつ、その被害が著しいことが無いような、使用方法で農薬が使用される仕組みとなっています。
(2-3)粒剤を無人ヘリコプターで散布する場合、風圧による微粒粉塵の生成や飛散も問題となると思われる。粒剤から生じた粉塵がミツバチに付着する場合の影響及び飛散する農薬粉塵の粒径分布と飛散距離を示されたい。
[回答]農林水産省では、−中略−「無人ヘリコプター利用技術指導指針」を定め、粒剤の空中散布を含め農薬の散布時の飛散防止(ドリフト対策)を適切に講ずるよう指導しております。なお、粒剤から生じた粉塵がミツバチに付着する場合の影響及び飛散する農薬粉塵の粒径分布と飛散距離は、当方として把握しておりません。
(2-4)斑点米カメムシ防除について、秋田県は『粒剤は粉剤や液剤に比べ効果が劣るため、農薬飛散による周辺農作物への影響が懸念される場合のみ使用する。』としていることは、指導に反しないか。
[回答]秋田県では、巣箱が水田の近くに置かれ蜜蜂への影響の懸念がある場合についても、周辺農作物への影響が懸念される場合と同様に取扱うよう指導していると聞いております。−中略−地域の実態に合わせて、被害軽減の必要性や対策実施に要する労力等も考慮して指導していただきたいと考えております。粒剤を必ず使用するよう指導しなければならないとは考えておりません。

★花粉媒介昆虫が減るとどうなる?
[質問5]農薬のミツバチや花粉媒介昆虫のへの影響と昆虫類による農作物生産への影響について
(5-1)日本養蜂協会の「ポリネーター利用実態等調査事業報告書」(2014年3月)によれば、イチゴ、メロンなどの生産に影響があるとされているが、ほかにどのような作物に影響するか。施設栽培と露地栽培にわけて、該当作物を教えられたい。
[回答] ミツバチはイチゴ、メロンの他、施設栽培ではスイカやナス、露地栽培では、カボチャやうめ、リンゴ等の授粉に用いられています。ミツバチが不足することに なれば、これらの作物の生産に影響を及ぼす可能性があります。

(5-2)貴省は日本養蜂協会と同様なポリネーターに関する調査を実施しているか。
[回答] 農林水産省では、日本養蜂協会と同様の調査は行っていません。

追記:農業環境技術研究所のプレスリリース(2016/02/04)
 農作物の花を訪れる昆虫がもたらす豊かな実り−日本の農業における送粉サービスの経済価値を評価−
 日本生態学会誌 65:217(2015)

(5-3)殺虫剤等の農薬散布により、水田や果樹園、畑などの昆虫の種類や個体数がどのように 変化するかを調べているか。
[回答] 行っておりません。

 農薬使用により、花粉媒介昆虫がどのような影響を受け、農作物の生産がどうなるかについて、ベースになるデータがないというのは、心細いことです。
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作成:2014-10-26、更新:2016-02-04