行政・業界の動きにもどる
t28001#有機リン剤アセフェートの適用作物削除など登録変更の農水省通知〜ADIが10分の1に下がってから4年目にようやく#14-12
【関連記事】記事t22401、記事t22502、記事t22605、記事t22904、記事t26803 →アセフェート関連
記事t20006、記事t27503 →ARfD関連
【参考サイト】食品安全委員会:アセフェートの毒性評価書(2010年)
農水省:農薬登録制度に関する懇談会の頁、10回(3/17)の資料、11回(7/29)の資料、12回(8/20)の資料
厚労省:薬事・食品衛生審議会 (食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会)11/27の資料とARfD関連の短期摂取量
静岡県病害虫防除所:農薬安全使用指針・農作物病害虫防除基準(試験版)
制限が追加された農薬一覧、短期暴露評価により変更される農薬の使用方法について
和歌山県農林水産部農業生産局果樹園芸課:短期暴露による農薬使用制限情報
浸透性有機リン剤アセフェート(商品名オルトラン、ジェイエースなど)のADI(一日摂取許容量)が食品安全委員会による毒性再評価の結果、それまでの10分の1である0.0024mg/kg体重/日となったのは、2010年の7月です。しかし、この結果に伴う残留基準の規制強化などは、一向進みませんでした。
★最初の指導は09年12月だったが
一方、農水省は、食安委の上述決定の前年、2009年12月、「アセフェートの適用作物から、かんきつが削除されることについて」との通知を発出しています。ここでは、『ADIが正式に決定された後、厚労省の薬事・食品衛生審議会において残留基準値設定の審議が行われる。審議が最も早く進んだ場合、2010年の夏頃に基準値が告示され、猶予期間を経た2011年春頃までには、アセフェートの「かんきつ」への適用がなくなる可能性がある。―中略―「かんきつ」への残留基準値がなくなった場合、一律基準の適用を受け、基準値超過を招くおそれがある。』として、中晩柑類への適用自粛が指導されました。さらに、同通知には『今後、アセフェートに登録のあるその他作物についても見直しが行われ、同様に関係者より連絡が行われる。』と書かれていました。(記事t22401参照)
しかし、私たちの度重なる要望にもかかわらず、登録の変更も行われず、法令に基づかない単なるお願いのままで、消費者が高い濃度の残留アセフェートの摂取を強い
られる状況が、4年以上、続いていました。
★登録変更を予告する農水省通知
農水省は、本年9月10日、通知「短期暴露評価 により変更される農薬の使用方法の周知等 について」(11月一部改訂)を発出しました。
同通知では、『農薬の登録に当たっては、これまで、残留農薬の摂取量について、ADIを超えなければ食品安全上問題ないものと判断されてきましたが、今般、急性参照用量 (ARfD)を超えないかという点についても評価(短期暴露評価という)されることとなりました。』(囲み記事参照)
『ARfDの設定や残留基準値の改定を待って使用方法の変更をした場合は、残留基準値の改訂後も変更前の使用方法が表示された農薬が流通し、変更前の使用方法で当該農薬を使用したために残留基準値が超過する事案が発生するなど、生産現場に混乱を来す可能性があります。』とされ、さらに、『農薬製造者に対して、自ら短期暴露評価を実施し、登録を受けている農薬の使用方法を変更する必要があるかを確認した上で、使用方法を変更する必要がある場合は、ARfDの設定や残留基準値の改定を待たずに、十分な時間的猶予をもって、変更登録の申請することを要請している』とあります。
翌11日の事務連絡で、農水省はアセフェート系17製剤の使用制限を伴う変更登録の申請内容を明らかにしました。
全国農業協同組合連合会が登録しているジェイエース水溶剤のお知らせ内容の一部は下図(-省略-)のようです。同会が、7月10日に申請した登録変更では、かんきつのほかに、トマトなど計7作物への適用削除と、10作物で、希釈倍率、使用方法、回数、使用時期等の規制強化があることがわかります。
事務連絡には、変更理由として『今後行われる食品安全委員会で設定が想定されるアセフェートのARfDを基に検討した結果、複数の適用作物で想定ARfDを超過することが予想され、超過しない使用方法へ変更する必要があると判断したため。』 と書かれています。
★消費者二の次、メーカー有利の法運用
アセフェート製剤の登録変更(制限だけでなく、緩和されたものもある)が、実際に告知されたのは、11月17日です。その後、厚労省の薬事・食品衛生審議会 (食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会)が11月27日、短期暴露評価に必要な、人が最大食べる量についての作物別数量案のリストを公表しましたが、食安委によるアセフェートのARfDの評価はされておらず、 残留基準も前のままです。
使用規制強化の登録変更があった場合、いままで通り使用できなくなると思ったら大違いです。ラベルを新登録内容に変更する必要もなく、すでに、生産者が保有している製剤は、旧内容のまま使用しても、処罰の対象にはなりません。すなはち、新たな登録通りでなくとも、使用可能なのです。
ただし、残留農薬量が基準を超えないよう、使用者は注意が必要だというのが、農水省の指導通知の主旨です。このような農薬取締法違反を問わない指導は、農水省が、消費者の残留農薬過剰摂取を防止するよりも、ただ、ただ、メーカーや使用者の便宜をはかるだけの法運用をしている証拠です。
【囲み記事】ARfDと短期暴露評価
ARfDは、24時間内の摂取で、急性中毒を発症する推定量のこと。短期暴露評価は、同時間内に農薬を大量に摂取した場合の急性毒性についての影響評価をいい、短期農薬推定摂取量 ≦ ARfDとなれば、安全だとされます。
具体的にどうするかについては、農水省が、本年開催した3回の農薬登録制度に関する懇談会で、食品安全委員会や厚労省の提案を元に論議されてきましたが、残留による短期農薬摂取量の推定には、作物ごとに@食べる量、A残留する農薬の量を知ることが必須です。@についは、120人以上の食べた量のデータをとり、その最大に近い値にする、Aについては、4件以上の残留試験データから残留最大値をとることが、基本となっています。
【FAMICにある農薬の使用についての質問Q&Aより】
B-3.農薬の購入後に登録内容の変更があったが、それに気づかずに使用し
た場合は農薬取締法違反になるのでしょうか。
回答
ラベルの内容を守って使用したのであれば、農薬取締法違反には該当
しません。農薬の使用期限も守ってご使用下さい。
登録内容とともに残留農薬基準も変更している場合があります。
この場合、ラベルの内容を守って使用する限り、農薬取締法違反に
問われることはありませんが、作物に残留農薬基準を超えて農薬が
残留する可能性があります。都道府県やメーカーの提供する最新の
情報を確認の上、ご使用下さい。
なお、販売禁止農薬に指定された場合は、使用も禁止されますので、
使用すると農薬取締法違反になります。
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作成:2014-12-26、更新:2015-01-15