食品汚染・残留農薬にもどる
t28201#ARfDを超えたらどうするか〜アセタミプリド残留基準で厚労省のごまかし#15-02
【関連記事】記事t20006、記事t27305、記事t28102
【参考サイト】厚労省:薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会資料(2014年2月20日)にある
食品摂取量切り替え、農産物摂取量、畜水産物摂取量、 旧フードファクター
食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会(2015年1月20日)、アセタミプリド残留基準資料
アセタミプリド残留基準設定に関する意見の募集について、概要と参考資料、当グループのパブコメ意見
パブコメの結果14の意見があり、これに対する厚労省の回答はこちらで、
5月19日に改訂された残留基準が公示されました。
クロチアニジンに続いて、ネオニコチノイド系のアセタミプリドの残留基準改定案が1月20日の食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会で論議され、
パブコメ意見の募集が2月26日から3月27日まで実施されています。その内容を紹介します。
★基準緩和が30作物、TMDI増加
基準緩和された食品は、表1の30品目です。*印はいままで基準が設定されておらず一律基準=0.01ppmが適用されていたもので、16品目あります。
表1 基準が緩和される作物の残留基準案(単位ppm)
作物名 現行基準 改定案 作物名 現行基準 改定案 作物名 現行基準 改定案
コムギ 0.01* 0.3 クレソン 0.01* 3 ビワ 0.1 2
オオムギ 0.01* 3 シュンギク5 10 オウトウ 2 5
ライムギ 0.01* 3 レタス 5 10 ラズベリー 1.6 2
その他の穀類0.01* 3 ネギ 4.5 5 ブラックベリー1.6 2
ダイズ 0.01* 0.3 その他ユリ科0.2 5 クランベリー0.6 2
ラッカセイ0.01* 0.2 ニンジン 0.01* 0.2 ハックルベリー1.6 2
エンドウ 0.04 2 その他セリ科0.01* 10 その他果実 1 5
ソラマメ 0.04 2 マクワウリ0.01* 0.2 綿実 0.6 0.7
その他の豆類0.01* 2 シイタケ 0.01* 0.2 ナタネ 0.01* 0.1
カンショ 0.01* 0.2 その他キノコ0.01* 0.2 ハチミツ 0.01* 0.2
基準緩和により、現行の2010年のTMDI(理論最大推定摂取量)は表2のように増加し、ADI=0.071mg/kg体重/日に対する比率も増えていますが、幼小児でも52.6%で、厚労省は80%以下で安全だとしています。
表2 TMDIとそのADI比−2010年と2015年の比較
国民平均 幼小児(1〜6歳) 妊婦 高齢者(65歳以上)
2010年 2015年 2010年 2015年 2010年 2015年 2010年 2015年
TMDI 816.6 1172.6 474.7 616.8 709.4 1101.4 890.6 1404.4μg/kg体重/日
対ADI比 21.6 30.0 42.3 52.6 18.0 26.5 23.1 35.3 %
★ARfDを超えたら、精密化で安心?
【参考サイト】厚労省:急性参照用量を考慮した残留基準の設定について(短期摂取量の推定等について)
一方、ARfD(急性中毒発症推定量)は0.1mg/kg体重で、作物毎の一日最大摂食量をもとに算出したESTI(農薬の一時多量摂取量)の対ARfD比が100%以下なら安全としています。30%以上の作物は、表3のようで、一般で18品目、幼小児で22品目ありました。特に、幼小児のレタス類で100%、レタスとブドウで90%、モモで80%が懸念されます。しかも、*印をつけたブドウの90%はとんでもないごまかしです。
一般の場合は、アセタミプリドの残留量を基準の5ppmで計算しているのに、幼小児の場合は基準値で計算するとESTIの対ARfD比は150%となるのです。そこで厚労省は、作物残留試験で得られた最大残留値2.67ppmを基準値の代わりに採用し、めでたく100%以下に抑えることにしました。非結球レタスでも同様です。残留基準10ppmとして計算すれば、ESTIの対ARfD比は150%となります。このため、残留量を作物試験で得られた最大残留値の2.67ppmであったと仮定して計算し、40%にさげました。個別作物のESTIがARfDの100%を超えないことを安全の目安とするというならば、それを超えた場合は、非結球レタスやブドウにアセタミプリド製剤を使用してはならないということで、問題は解決するのに、表の注に『精密化を図った』と書き込み、残留量に低い数値をとり、みかけ上安全だと国民をごまかす厚労省ってなんでしょう
表3 作物別のESTIのARfD比〜一般人(1歳以上)と幼小児(1〜6歳)の場合(単位%)
作物名 一般 幼小児 作物名 一般 幼小児 作物名 一般 幼小児
キャベツ 30 50 トマト 20 50 グレープフルーツ30
コマツナ 20 40 ナス 10 30 リンゴ 30 60
ブロッコリー 10 30 キュウリ 10 30 リンゴ果汁 20 70
ケール 40 トウガン 30 日本ナシ 30 60
チンゲンサイ 40 スイカ 10 30 西洋ナシ 30
タカナ 40 ホウレンソウ 10 30 モモ 30 80
シュンギク 30 レンコン 30 50 イチゴ 10 30
レタス類 60 100 ズイキ 50 ブドウ 70 *90
非結球レタス 40 *40 オレンジ 20 50 イチジク 40
レタス 60 90 オレンジ果汁 20 40 茶 20 30
ネギ 20 30
*原注:残留試験で得た最大残留値を考慮して、短期摂取量の精密化を図った
★蜂蜜の残留基準:0.01から0.2ppmに
蜂蜜の残留基準は、現在、50農薬について設定されていますが、ネオニコチノイド系農薬の基準はなく、すべて、一律基準(0.01ppm)が適用されています。2013年の愛媛大学の蜂蜜残留農薬調査がきっかけとなり(記事t26401参照)、玉川学園購買部が販売した和歌山県有田産の「たまがわはちみつ有田市ミカン蜜」に0.05ppmのアセタミプリドが検出され、回収措置がとられたことがありました(記事t26605、記事t26803参照)。
その後、農水省と蜂蜜業者、養蜂者は、一律基準が適用されると、販売できなくなるケースが増えること心配したのでしょうか、蜂蜜の残留基準を増やしていこうと、調査をしていますが、今回、その第一弾として、いままでの20倍の0.2ppmが基準として提案されたわけです。608検体の残留調査結果では、512検体が定量検出限界の0.01ppm未満、96検体が定量検出限以上であったとなっており、最大残留値は0.19ppmだったそうです。
農薬散布された蜜源や花粉植物が、ミツバチの行動範囲の半径5km以内にあれば、農薬が残留した花蜜や花粉を巣に持ち帰ることにより、蜂蜜への残留が避けられないと思われます。
今後、水稲や野菜、果樹だけでなく、森林・街路樹や公園の花卉、野草など非食用植物に使用される農薬の蜂蜜汚染の実態を調査する必要があるでしょう。
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作成:2015-02-27、更新:2015-05-22