食品汚染・残留農薬にもどる 替え歌の頁のほうれんそう40(歌声版)
t28603#5月19日、クロチアニジンのホウレンソウへの適用拡大と残留基準40ppmを告示される〜手抜きで不誠実なパブコメ回答#15-06
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厚労省へのクロチアニジン残留基準案パブコメキャンペーン
【参考サイト】食品安全委員会:第532回 食品安全委員会とクロチアニジン農薬評価書(第6版確定、パブコメ付)
厚労省のクロチアニジン残留基準案パブコメ意見:
2013年の意見募集と参考資料、意見の集計結果
当グループの意見、全パブコメ意見(グリーンピース・ジャパンのHPにリンク)
2015年の意見募集、基準案と参考資料、経緯
当グループのパブコメ意見、意見の集計結果
パブコメ結果:2015年01月23日パブコメ分
公示文書、別添1、別添2
2013年10月04日パブコメ分
公示文書、別添1、別添2
グリーンピース・ジャパン:4/13ブログ、5/19ニュースリリース、署名サイト
2013年に、厚労省が提示したクロチアニジン残留基準緩和案は、一旦凍結されていましたが、昨年の食品安全委員会による人の健康影響評価と2015年再提案のパブコメを経て、5月19日に告示されました。同時に、農水省は、クロチアニジンの16%水溶剤と0.5%粒剤のホウレンソウほかへの適用拡大等を登録しました。
★パブコメ意見への厚労省の回答
2013年と2015年のパブコメ意見募集では、それぞれ、1657件と271件が寄せられ、厚労省の項目別に分類した延べ件数は以下のようでした。
数字の左が2013年、右が2015年の件数
@農薬の登録、使用に関する意見:694件/131件
A残留基準に関する意見:1405件/195件
B暴露評価に関する意見:12件/12件
C毒性評価に関する意見:99件/56件
D残留農薬検査に関する意見:2件/0件
E食品の輸出に関する意見:15件/9件
F環境汚染に関する意見:210/101件
Gその他の意見:6件/9O件
これらの意見に対し、厚労省は、基準告示と同時に、回答文書を示しましたが、いままでのパブコメでは個々の意見ごとに回答を記載するケースがほとんどだったのに、意見と回答文書に2分されていました。2013年と2015年の提案はその内容が異なるにも拘わらず、回答は、ほとんど同じ文面でした(13年が全16頁であったのに対し、15年は、D項がなく全15頁)。そのため、国民による個々の意見に対し、理由を挙げて、誠実に答えるのではなく、次のような項目で厚労省の考えを述べるだけの解説書に過ぎないものでした。
たとえば、ゴボウ、ニンジン、ギンナンについては、2013と2015年改定案とは異なる基準であるにもかかわらず、2013年も2015年も「コーデックス委員会の基準値に合わせて我が国の基準値を変更しています。」「国内外においてクロチアニジンの使用実態が乏しいと考えられた農作物(ギンナン)については、基準値を削除しています」との記載がみられました。案にないことまで、回答するというのは、国民を愚弄している証拠です。
表 厚労省のパブコメ回答項目
1.農薬の登録、使用に関する意見への回答
(1)今般の残留基準改正の趣旨について
(2)農薬の規制について
(3)蜜蜂への影響について(欧州等の動向と我が国における取組)
2.残留基準に関する意見への回答
(1)残留基準の改正理由について
(2)残留基準の設定の考え方について
3.農薬への暴露量の評価に関する意見への回答
(1) 農薬の長期摂取量の推定について
(2) 農薬の短期摂取量の推定について
4.毒性評価に関する意見への回答
5.残留農薬検査に関する意見への回答
6.食品の輸出に関する意見への回答
7.環境影響に関する意見への回答
8.意見公募手続に関する意見への回答
9.食品の安全性に係るその他の意見への回答
★マーケットバスケット方式のごまかし
私たちは、残留基準設定においては、残留実態を重視するよう求めていますが、厚労省が唯一出してくるのは、個々の作物の残留データではなく、マーケットバスケット方式による農薬の摂取量調査結果で、回答文でも3個所で触れています。この方式は、14群にわけた食品群ごとに、調理方法を勘案して農薬分析します。残留量から推定された一日平均摂取量のデータから厚労省は、クロチアニジンについて『平成 25 年度の調査結果では、食品からの摂取量はADIの 0.01%であり、ADI の 80%を大幅に下回っていることが確認されています。』としていますが、まだ、ホウレンソウに適用がない昨年の調査結果は、たいして意味はありません。食品衛生法のポジティブリスト制度では、個別食品の基準が重要なので、基準を緩和して、国民のクロチアニジン摂取量を増やすことに、歯止めをかける姿勢は全くみられません。
★ARfDを超えないから安全というが
ADIに対する幼小児の理論最大一日摂取量が、成人よりも2倍高いことへの納得いく説明ありません。さらに、新たにリスク管理に取り入れられたARfD(急性中毒発生推定量=急性参照用量)に対する農薬の一時多量摂取量(=短期摂取量:食品ごとに一度に食べる最大量から推定)については、クロチアニジンのARfDがEUよりも6倍高い食品安全委員会の0.6mg/kg体重をそのまま受け入れ、ホウレンソウだけで、幼小児の場合70%を占めることに対する批判には、『短期摂取量は、農薬が高濃度に残留する食品を短期間に大量に摂食するという状況を仮定して推定したものですが、このような状況が生じる可能性は確率的に低い上、そのような状況が複数の食品で同時に生じる可能性はさらに低いと考えられます。このため、短期摂取量の推定においては、長期摂取量の場合と異なり、各食品からの農薬の摂取量を足し合わせるのではなく、食品毎に短期摂取量を推定し、それがARfD を超えないことを確認しています。』としており、他の食品や食品以外の経路からの摂取を無視しています。
★都道府県へのアンケート調査
私たちは、告示前の5月7日、都道府県に対して、基準緩和の反対とホウレンソウのアブラムシ対策に使用しないよう、下のような文面でアンケート調査を行い44都道府県から回答を得ました(記事t28601参照)。
*** ホウレンソウでのクロチアニジン使用について ***
ホウレンソウの残留基準40ppmというのは、クロチアニジン16%の製剤を
4000倍希釈した散布液の濃度と同じで、このホウレンソウを食べろとい
うことは、散布液を飲めということと同等です。メーカーが提出した作物
残留試験での最大残留値は27ppmで、このような高い残留値になる恐れの
あるクロチアニジン製剤を使用したホウレンソウはとても食べられないと
いうのが、消費者の実感です。なお、農水省の残留分析調査では、チアメ
トキサムの代謝物としてのクロチアニジンは、H24年調査で、4検体中1検
体に0.11ppm、H25年で、2検体中 に0.22、0.33ppmとなっています。
[質問]私たちは、クロチアニジンのホウレンソウ等への適用拡大とそれを可能にする
ための残留基準引き上げに反対しますが、貴都道府県はいかがお考えですか。
[回答]43都道府県中40が、国の判断事項であるとし、いわば、農水省や厚労省の意向
におまかせとの考えでした。残りは記載しなかったり、回答できないなどでした。
県の防除基準等への掲載も、効果があれば載せるというのが本音のようでした。
ともあれ、ホウレンソウへのクロチアニジンの適用が、消費者感覚からずれた高い残留基準で認められたことに対し、生産者には、クロチアニジンをホウレンソウに使わない、販売店には同剤を使用したホウレンソウを売らないよう、消費者は反対の声を挙げ続けることしかありません。
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作成:2015-06-27