ネオニコチノイド系農薬・斑点米関係にもどる

t28701#2014年度の農薬によるミツバチ大量死79件〜巣箱退避場所の設置や農薬メーカーにはラベル表示の改善を求める#15-07

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 農薬危害防止運動に関する農水省等への要望と質問で、ミツバチ関連で9つの問い合せをしていましたが、そのうちのひとつ2014年4月以降の被害データについて、農水省が調査結果を公表しました。2013年度(4月1日から14年3月31日)の74件から5件増加し14年度(14年4月から15年3月31日)は79件の被害事例がありました。報告の内容とそれに基づく、新たな指導通知をみてみましょう。

★79件中、斑点米カメムシ用農薬が52件
【参考サイト】農水省:農薬による蜜蜂の危害を防止するための我が国の取組(2015.5月改訂)2015/05改訂版
           蜜蜂被害事例調査の中間取りまとめ及び今後の対策について
           蜜蜂被害事例調査中間取りまとめ(平成 25 年度報告分)H26年度対策
           平成26年度蜜蜂被害事例調査の結果と今後の対策について
            調査結果今後の対策H27年度の被害軽減対策

 養蜂者から被害連絡を受けた都道府県畜産部局により、以下の聞き取り・現地調査が行われました。
 @巣門前の死虫数や生存虫の様子、A被害発生後の蜂群の消長などの被害、B蜂場周辺での農地の栽培作物、C農薬使用状況、D養蜂者への農薬使用情報の提供、E死虫の農薬分析、などです。
 被害報告があったのは103件でしたが、現地調査がなされていない、被害状況解析に必要な情報が得られていない等の理由で、24件が除外され、農水省は79件について、次のようにまとめています。

【発生月別】時期別の内訳は、図(−省略−)のようで、75%の59件が7月中旬から9月中旬でした。この期間は、多くの地で、水稲の斑点米カメムシ防除期と一致しています。
【発生場所別】79件の被害の県別発生件数は表のようでした。北海道が一番多く27、ついで、栃木が8、秋田と福岡で5件でした。北海道において多くの被害が報告されたのは、事例の多数を占める水稲のカメムシ防除期間(7〜9月)に、養蜂者が北日本に移動して養蜂を行っていることと関連しています。
  県名   件数     県名 件数
  北海道 27     岐阜    4
  秋田   5     兵庫    2
  福島     2     福岡    5
  栃木     8     佐賀    3
  群馬     2     熊本    3 
    神奈川   4     大分    4 
    青森/岩手/茨城/千葉/新潟/京都/和歌山/長崎/宮崎/沖縄:各1
 毎年、日本養蜂協会がまとめている農薬による2014年の被害件数は、107件(5131 群)で、30都道府県、99市町村にみられました(2013年の詳細は記事t27502参照)。
【被害状況】2014年度の巣箱あたりの死虫数による内訳は次表のようです。
   被害匹数 発生件数      被害匹数  発生件数
   死虫未確認   5件       6001〜8000    4
   1000未満    9         8001〜 1万    5
   1000〜2000   33         1万0001〜2万  2
   2001〜4000   12         2万0001〜4万  1
   4001〜6000    8
 農水省は、被害の82%にあたる65件で、巣門前に1000匹以上の死虫が見られたとしていますが、アメリカのCCD(蜂群崩壊症候群)ように、短期間で働き蜂が急激に減る、死虫が巣の中や周りに発見されないなどの要件にあてはまる事例はないとするだけで、他の花粉媒介昆虫やただの虫への影響は調査もしていません。

【周辺農地の栽培作物】被害発生時期に蜂場周辺で水稲が栽培されていたのは77%の61件でした。被害地域の栽培作物で、水稲のみ22件、水稲とともに、他の果樹、露地野菜、畑作物が栽培されていたのが39件でした。そのうち、稲の開花期にあった42件、及び、開花期直前及び開花期後2週間程度だったのが10件で、あわせて52件が斑点米カメムシ防除の実施時期でした。このうち、無人ヘリコプター散布が29件ありました。
 周辺で水稲栽培がなかった事例は18件で、内訳(延べ数)はゴルフ場(8件)、果樹(7件)、畑作物(4件)などでした。

【農薬との関連】79件の被害事例のうち、37件で死虫を採取、農薬分析(ネオニコチノイド7種、ピレスロイド5種、フェニルピラゾール2種、有機リン6種、カーバメート3種、その他8種)が行われ、18種の農薬が検出されました。蜂の1匹あたりの重さを0.105gとして、換算された農薬検出値を表1に示しました。表中にある「水稲開花」は開花期の死虫13検体と開花期前後9検体を、「その他」は周辺に水稲の栽培がない地域やカメムシ防除の時期外の死虫15検体についてのものです。
 報告では、斑点米カメムシ防除に使用される農薬(表中*印の成分)ほかのミツバチに対する半数致死濃度LD50(接触及び経口。囲みの注参照)と検出量の関連にも言及されていますが、LD50値の1/10以上の殺虫剤成分が検出された事例は16件ありました。特に、ジノテフラン、エトフェンプロックス、クロチアニジン、エチプロールは有人ヘリや無人ヘリによる空中散布が多い殺虫剤です。
 また、カメムシ防除と関係ないと思われる「その他」15件の死虫の農薬分析では、11検体に13種の殺虫剤が検出され、このうち、LD50値の1/10以上の農薬が検出されたのは10検体でした。また、死虫に農薬成分が検出されなかった事例は4、1成分のみ検出が6、2成分が15、3成分9、4成分が3件ありました。そのうち、LD50値の1/10以上の農薬が2種検出されたものが2検体ありました。
 ミツバチが死にいたる経緯が、花粉収集に訪れた水田などでの直接被曝(散布農薬を浴びたり、作物表面に付着した農薬に触れる)と限定され、ミツバチの行動範囲のどこで、どのような農薬がどの程度まかれたかを、きちんと調べられていないのが現状です。ミツバチが散布農薬で汚染した水に触れる、散布された農薬が、溢液や花粉、花蜜などへ浸透移行することによる間接被曝も否定できません。
 これらを科学的に調べれば、原因農薬をもっと絞ることができるでしょう。
   表1 死虫の農薬分析結果
   農薬名            水稲開花   検出範囲    その他 検出範囲 
                       検出数     ng/匹      検出数  ng/匹 
   アセタミプリド          1       <0.3         1      0.24
   イミダクロプリド                               1     78
   クロチアニジン*        8      0.57-11        7     <0.2-16
      ジノテフラン*          4      <0.5-16        3     <0.5-6.2
      チアメトキサム*         2      <0.5-0.53
      エトフェンプロックス*   7      <0.4-170       2     <0.4-260 
      シラフルオフェン*      2       1.3-3.4                         
      フェンプロパトリン                          1     <5.0
      エチプロール*          9       <0.2-9.2          1     4.9
      フィプロニル           3         <2-3            2    <2-2.4
      アラニカルブ           1          2.2            1    <0.5
      フェントエート*        1        <0.2  
      ピリダベン            1        <0.2            3     <0.2
      テブフェノジド          3       <0.2-0.44         1     <0.2
      クロラントラニリプロール4        <0.4            1     <0.4
      スピノサド            4       <0.2-12  
      トルフェンピラド        2       <1.0-2.4  注;ミツバチのLD50−省略−
      エマメクチン安息香酸塩  2         <1.0   (半数致死量、単位:ng/匹)
【散布情報共有化でも被害防止不十分】
 前年度のミツバチの農薬被害が水稲開花期に集中していたのに対し、2014年度は、開花期直前から開花期後2週間程度にもおよび、被害は拡大していることが明らかになりました。農水省は、22件の死虫農薬分析の結果、15件で、斑点米カメムシ防除で散布された殺虫剤の可能性があると結論づけましたが、ミツバチの被曝経路は不明なものの、水稲以外で使用された農薬も死虫に検出されていました。
 農水省は、いろいろな農薬が検出されたのをいいことに、欧米のようなネオニコ使用規制はとらず、農薬散布状況を農薬使用者と養蜂者の間で共有し、農業者に、散布時間や剤型などを、養蜂者に、巣箱の退避や巣門の閉鎖などを指導しているだけです。
 79件の大量死事例について、情報の共有化が適切であったかどうかを調べた結果は、表2のようで、養蜂者に伝わらなかった事例が32あるだけでなく、養蜂者が連絡を受けたにもかかわらず被害がでた事例が47件ありました。そのうち、巣箱を退避した事例6件では、5件が退避先で被害を受けています。退避先がない、暑さで死ぬので巣門がしめられない事例もあり、農薬散布情報の共有だけでは、被害が防止できないことが明確になりました。
      表2  被害事例における農薬使用情報の共有件数 ()は水稲の内数
    養蜂者の情報   農薬使用者の情報提供   使用情報の共有
               有  なし         計
      有       47(39) 0(0)      有   47(39)
      なし      16(9)  16(4)      なし  32(13)
      計       63(48) 16(4)      総計  79(52)
★新通知では、ラベル表示見直しを指導
 上のような結果を踏まえ、農水省は、水稲斑点米カメムシ防除のネオニコチノイドに限ることなく、ミツバチ被害の多い農薬について、地方農政局などへ、2015年度の新通知をだしました。その中で、前年に比べ、以下のような指摘及び指導事項が新たに追加されています。
  <蜜蜂の被害に関する認識の共有>の項
  ・水稲の開花期のみならずその直前及び開花期後2週間程度の時期においても、
   水田周辺の蜂場の蜜蜂が水田に飛来することがあること。
  <情報交換の更なる徹底>の項
  ・周辺に水稲が栽培されていない地域等でも被害事例が報告されたことから、
   −中略−水稲に加え、一定の面積でまとまって栽培されている、あるいは共同
   防除を実施している作物に農薬を使用する場合は、農薬の散布計画を畜産部局
   を通じて養蜂組合等に伝えること。
  <被害軽減のための対策の推進>の項
  ・退避等の対策の実施に当たっては、巣箱の移動手段の提供、共同の退避場所の
   設置等、地域の実態を考慮した取組みを検討すること。
 さらに、いままでになかった<農薬の使用上の注意事項の遵守>項が新たに加わりました。
 ここでは、『農薬メーカーに対して、農薬ラベルを見た農業者が、養蜂家との情報交換を徹底できるよう、農薬の使用上の注意事項について見直しを要請した』として、農薬工業会や農薬メーカーや輸入者等宛の別通知で、現行の農薬容器レベルにある蜂禁マークや、養蜂への注意事項に加え、『できるだけ速やかに、ラベルに記載されている農薬の使用上の注意事項について、周辺で養蜂が行われている場合には、農薬使用に係る情報を関係機関(都道府県の畜産部局や病害虫防除所等)と共有する等、蜜蜂被害の軽減に資する内容に見直す』ことを求めました。
 私たちは、農薬取締法を改訂し、「蜜蜂等危害性農薬」を指定して、知事の権限で、地域での使用規制ができるよう求めているのですが(2014年3月パブコメ意見の【2】の(D)参照)、農水省は欧米にみられるような使用規制を避け、指導だけで、切り抜けようとしています。

★神奈川県:地域的な規制対策の実施も
【参考サイト】神奈川県議会:H27年第二回定例会6月26日の
     近藤大輔議員質疑中継の蜜蜂が減少する事態への対応について

 神奈川県のミツバチの大量死は水稲防除との関連が不明ですが、6月26日、県議会定例会で、この件が質されました。昨年発生した葉山町3件、横須賀市1件のミツバチ被害蜜蜂を踏まえた質問に対し、農薬との因果関係は特定できないとしながら、環境農政局長は『3月、養蜂家、地元市町、地域農協、ゴルフ場による協議の場として横須賀・葉山地域蜜蜂対策会議を立ち上げた。会議では、被害の発生の状況について情報を共有した上で、農薬使用者は広域に農薬散布をする際、養蜂家へ事前に連絡をいれること、その際、養蜂家は巣箱を移動し、被害を未然に防止することなどを申し合わせた。県では、ひきつづき、国の調査に協力し原因究明につとめるとともに、今後、国や大学の蜜蜂の専門家を現地に招き、被害の防止にむけたアドバイスをもらうなど、被害減少の防止対策に取り組んでいく』と答えました。
 さらに、県独自に、対策をうつ、農薬の制限、アクションを起こすべきとの意見に対し、『特定の農薬が原因であるとわかった場合は国の法制度に従って対応するが、地域的な対応が必要であると判明した場合、代替の農薬使用を指導するなど、農薬使用者の理解をながら必要な指導を実施する』との答弁がありました。

★欧米の使用規制を見習うべき
【関連記事】記事t28401
【参考サイト】アメリカ:EPAのネオニコチノイドの新たな取扱いプロセスを告知する登録者への2015年4月の手紙本文
            大統領覚書による作業部会報告「ミツバチや花粉媒介昆虫の健全化戦略」(2015/05/19)
       カナダ:オンタリオ州のネオニコチノイド使用規制(2015/07/01)

 2013年のEUでの一部ネオニコチノイドの使用規制につづき、アメリカでは、4月、EPAが発表したネオニコチノイドの新規適用拡大をやめるとの方針に加え、5月19日には、大統領覚書に基づき設置された「花粉媒介昆虫健全対策作業部会」が、@冬季のミツバチコロニー減少を10年以内に15%以下にする、A5年以内に、花粉媒介昆虫の生息面積を700万エーカー(約2万8千km2)増やすなどの、目標を掲げた戦略を発表しましたが、ネオニコチノイドの使用規制については、触れられませんでした。
 一方、カナダでは、オンタリオ州が、花粉媒介昆虫保護のため、2017年までに、ネオニコ処理トウモロコシとダイズの栽培面積を80%減らす方針を示しています。

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作成:2015-07-29