ネオニコチノイド系農薬・斑点米関係にもどる


t28805#ミツバチ被害について〜農水省への質問及び都道府県アンケ調査などから#15-08
【関連記事】記事t28601記事t28607記事t28701記事t28702
  反農薬東京グループ:農水省への農薬危害防止運動に関する要望と質問及び回答

 農水省が6月に『平成 26 年度蜜蜂被害事例調査報告』(記事t28701参照)を公表する前に、私たちは、農薬危害防止運動に関連して、同省に、蜜源や水場について質問を行いました。まず、その回答を紹介します。

【質問1】農薬の影響を受けない蜜源、花粉源や水場の確保が、重要であることは、養蜂者の常識ですが、2010年以後の蜜源・花粉源の種類と面積の推移を教えてください。そのうち、農薬の影響を受けないところは、どの程度あるでしょうか。
[農水省畜産振興課からの回答]2010年(平成22年)以後の蜜源の面積の推移については、下表のとおりです。
               (単位:千ヘクタール)
    蜜源植物   2010年   2011年   2012年  2013年
    みかん      52.8     52.4      51.3   43.8
    れんげ      13.5     11.9      12.8   10.8
    アカシア     7.1      9.3       8.6    7.5
    りんご       6.3     23.8      23.4   22.1
    その他      58.8     65.5      64.9    63.7
    合計       138.4    162.9     160.9   148.0
             注)都道府県が把握しているものを集計。
 なお、「農薬の影響を受けないところは、どの程度か」というご質問について、農林 水産省では、蜜蜂への被害の軽減対策の推進として、都道府県の畜産部局が、養蜂組合等の協力を得て、蜂場の設置される可能性のある場所の情報を都道府県農薬指導部局、農業団体に伝えることや、蜜蜂がカメムシ防除の殺虫剤に暴露する確率の高い場所ではできるだけ巣箱の設置を避けるか、水稲の開花期に巣箱を退避させるよう、養蜂家への指導を行う等の通知を行い、周知を図っているところです。

【質問2】農薬の影響を受けない蜜源、花粉源や水場づくりのため、農水省は、どれほどの予算をとり、どのようなことを実行されていますか。
[農水省園芸作物課からの回答]蜜源植物の植栽については、産地活性化総合対策事業のうち養蜂等振興推進事業(産地活性化総合対策事業の予算23億円の内数)にて、植栽に係る経費への支援等を行っています。植栽場所については、市町村や農業者等で構成される協議会にて検討することになっています。

★農水省が被害防止を自画自賛しても
【参考サイト】農水省:平成26年度蜜蜂被害事例調査の結果と今後の対策について
            調査結果今後の対策H27年度の被害軽減対策
          農薬による蜜蜂の危害を防止するための我が国の取組2015年9月改訂版

 農水省の調査報告には、指導で効果のあった取組みをフォローアップしたとして、25年度に被害報告があり、26年度に被害報告がなかったか、減少した都道府県等に、被害対策への取組状況についての聞き取りを行った結果を載せています。効果があったとするのは、従来から実施している@農薬使用者と養蜂者で、散布情報を共有し、A養蜂者は、巣箱の避難、巣門の一時閉鎖、のほかに、昨年度からはじめた農薬使用者への二つの指導Bカメムシ殺虫剤散布を粉剤から粒剤の田面施用にする、C蜜蜂の活動が盛んな時間帯を避けて農薬を散布する等の配慮などですが、結果的には、前年に比べ、ミツバチ被害全体数は増えていました。ミツバチ毒性の強い農薬の使用規制をしなかったのですから、当然のことです。

★都道府県への蜜蜂対策アンケ結果
【関連記事】記事t28601
    反農薬東京グループ:農薬危害防止運動に関する都道府県アンケート調査

 上にで示した都道府県アンケート調査(44都道府県が回答、石川、滋賀、沖縄なし)で、ミツバチ問題についての質問の中から主なものを紹介します。

【農薬散布情報の入手について】
・有人や無人ヘリ空散情報の入手:21(青森、宮城、茨城、栃木、群馬、千葉、埼玉、静岡、山梨、新潟、長野、福井、岐阜、愛知、徳島、愛媛、長崎、大分、熊本、宮崎、鹿児島)
・農協、農業共済組合、防除協議会や防除暦等:19(北海道、岩手、秋田、山形、福島、長野、岐阜、新潟、山梨、三重、奈良、岡山、広島、鳥取、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀)
・特に収集なし(大阪、和歌山、島根)
・個人散布の情報なし(新潟、青森、熊本)
 空散情報を集めていても、昨年の水稲農薬散布によるミツバチ被害の52件のうち29件が無人ヘリコプターによるものであるという事実が、被害防止になかなかつながっていないことを示しています。

【養蜂者への農薬散布情報の伝達】
 多くの都道府県で、無人ヘリコプター防除実施主体、市町村、農協等から、散布情報が養蜂組合に伝えられていますが、そのやり方はまちまちです。埼玉、静岡、富山、兵庫のように、散布情報を飼育者に郵送で連絡するところもあります。また、高知のように、問合せがあれば、回答するところもあります。福岡県は、県の担当部署が散布情報をとりまとめて、養蜂組合等に提供する一方で、島根県のように、直接情報を伝達しないところもあります。
 京都府は、講習会で散布者に周知を呼びかけを、大阪府は、養蜂関係団体へ農薬の暴露を受ける可能性の高い場所に巣箱を設置しないよう、構成員へ注意喚起を依頼しました。
 奈良県では、養蜂組合に巣箱設置場所情報の提供を求めたが、巣箱盗難の恐れがあることから、巣箱設置場所情報は提供されなかったとのことです。
 三重は、ホームページで窓口機関を示し、情報提供を行う予定だそうです。

【連絡を密にするための手法は?】
 多くの都道府県で、農水省の指導に基づき、農薬使用者と養蜂者の連携のためいろいろなことが実施されています。
・指導、地域情報の提供、チラシ配布:28(北海道、青森、秋田、宮城、福島、栃木、群馬、埼玉、東京、静岡、新潟 山梨、愛知、岐阜、富山、福井、三重、京都、大阪、奈良、和歌山、兵庫、岡山、広島、山口、鳥取、島根、徳島)。
・各地域で情報交換の場、会議開催を設ける:5(岩手、秋田、山形、長野、長崎)
 しかし、現実には、養蜂者に散布情報が伝わらなかった被害事例が32ありました。

【巣箱の退避等について】
 退避のため、なにか援助をしているかを問いましたが、援助補助金のあるところはありませんでした。長野が退避していないという回答をしたほか、
・退避についての知識啓発や技術指導を実施:2(茨城、兵庫)
・情報提供チラシ:5(千葉、東京、静岡、福岡、宮崎)
 農水省の報告には、『地域の取組みとして、巣箱の移動のため JA がトラックを貸し出しているところや、避難地確保のため養蜂が行われていない地域に蜜源となる木を植えて、共同で利用する避難場所を作ることを検討しているところもある。』との記載もあり、新たな通知指導に、避難場所の設置や移動手段の提供などが追加され、今後、どの程度実施されるか注目されます。

【農水省の指導は有効か】
 農水省は、被害防止について上述の@〜Cをあげています。その中の斑点米カメムシ農薬におけるB粒剤の田面散布、C8-12時に散布しない、の指導についての実施状況を教えてくださいとの質問に対して
・指導は有効、通知に従う:33(北海道、秋田、岩手、山形(特に時間帯)、福島、群馬、栃木、茨城(空散は早朝)、千葉(無人ヘリ散布の場合)、埼玉、神奈川、静岡、新潟、長野、岐阜(地域の実情に合わせて)、愛知、三重、京都、大阪、奈良、兵庫、広島、山口、島根、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、長崎、大分、宮崎(粒剤は試験中)、鹿児島)。
・実施状況:回答ないところが多く、調査していない:8(奈良、和歌山、岡山、鳥取、高知、福岡、熊本(粒剤調査なし)、鹿児島)。
・指導の効果は不明;富山、鳥取
・今後検討する:青森、
・時間帯規制は困難:2(熊本、佐賀)
・開花期は使用しない;東京
 多くの道府県で、農水省の指導方針に追従していることが窺われました。
粒剤の田面散布については、従前から実施としたのが山梨と奈良、神奈川、住宅地近くで実施が福井、積極的に実施している地域があるとしたのが岐阜でした。また、宮城は、粒剤の田面散布は直接暴露するリスクは少ないが、巣に持ち帰る花粉の影響が心配されるので,今後の調査結果が必要としています。山梨は、斑点米カメムシ対策は畦畔除草に重点を置き、これまで班点米カメムシの被害が少なかったため、カメムシ防除の農薬使用はほとんと行われていない、神奈川も、予防的な農薬の散布は行わず、畦畔等の除草対策を基本とした指導を行っている。なお、斑点米カメムシの発生が認められる場合は、殺虫効果が期待できる発生時期に限り、粒剤による防除を指導している、とのことです。

【その他の被害防止対策は】
 多くの都道府県は、農水省の指導内容以外に、特段の対策をとっていないようです。 情報共有化については、青森、山口、愛媛、大分は、農薬使用者と養蜂者間の相互理解を訴えています。
 水稲の斑点米カメムシ対策農薬に関して、愛知 富山、福井、熊本は、水田以外の蜜源・水場・エサ場が必要だとし、特に、熊本は、具体策として、巣箱の巣口へ砂糖水や代用花粉を置く手法をあげました。

【ミツバチや花粉媒介昆虫の減少】
 いつごろから、どんな虫がどの程度減少したか尋ねました。
・確認していない、確認が困難:30 
・把握していないや調査なし:10 
 回答のあったすべての都府県は。これらの昆虫減少のデータはないとしています。ミツバチや花粉媒介昆虫、ただの虫の農業地での個体数の調査などしたこともないのでしょう。

【授粉作物の収穫が減少】
 どんな作物が、いつごろから、どの程度減少したかを尋ねましたが、回答のあったすべての都道府県で、収穫減少の事例は確認されないとのことでした。

購読希望の方は、〒番号/住所/氏名/電話番号/○月発行○号からと購読希望とかいて、 注文メールをください。
年間購読会費3000円は、最初のてんとう虫情報に同封された振替用紙でお支払いください。
作成:2015-10-02