ネオニコチノイド系農薬・斑点米関係<にもどる

t28905#環境省の農薬環境影響調査(その2)ネオニコなどの水産動植物のリスク評価方法の検証計画#15-09
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【参考サイト】国立環境研究所:農薬の環境影響調査(平成 26年度)業務報告書(2015/03/27)

 H26年度のネオニコチノイド等の環境への影響調査事業には、「水産動植物への被害防止に係るリスク評価方法検討調査」というもうひとつのテーマがありました。
 通常の魚類、オオミジンコ及び藻類の3点セットの急性毒性では評価が不十分な農薬(例えば、ネオニコチノイド系農薬、フェニルピラゾール系農薬、昆虫成長制御剤(IGR)、摂食阻害剤等)があることが判ってきました。また、ミジンコの種類については、オオミジンコは日本の環境に当てはまらないとい声もあり、現行の登録保留基準(水産動植物)におけるリスク評価方法(不確実係数の設定方法、試験生物種・試験方法)の検証を行って課題と今後の検討の方向性を整理することを目的とする調査がなされることになりました。。
見直しに向けた検討を行うため、どのようなデータ(例えば、どの生物、急性・亜急性・慢性毒性のどのステージ)が必要でどう取得を進めればいいか、どのような手順で具体的な検討や関係者間の調整を進めればいいか等について年次計画案が策定されました。

★評価の見直しあたって
【参考サイト】横山淳史さんのコガタシマトビケラを用いた評価法:
  農業環境技術研究所研究成果情報 平成19年度 (第24集) より
  コガタシマトビケラ1齢幼虫を用いた農薬の急性毒性試験法マニュアルマニュアルDLサイト
  
 ネオニコチノイド系農薬、フェニルピラゾール系農薬、昆虫成長制御剤(IGR)、摂食阻害剤等のより適切な水産動植物への影響評価手法を検討するには、これらの農薬の作用機序が根本的に異なるため、画一的な方法による解決を目指すのではなく、薬剤の作用特性に応じて、評価対象種および評価方法について議論する必要があるとし、まず、次年度以降の計画策定にあたり、農業環境技術研究所の横山さんらが開発したコガタシマトビケラのEC50値を用いて、オオミジンコの水産基準値との相対関係をまとめました。
 結果を下表に示します。
 表 検討対象農薬の半数影響濃度EC50(単位はすべてμg/L)

農薬名       (a) オオ  (b)コガタシマ         農薬名    (a)の  (b)の
          ミジンコの  トビケラの             EC50   EC50
           EC50     EC50   a/b				      a/b
 アセタミプリド      49,800     3.35      14,866     フィプロニル    190     0.153     1,242
 イミダクロプリド    85,000     4.22      20,142     テブフェノジド  820     > 830      0.99
 クロチアニジン  > 40,000     4.44     > 9,009     ピリプロキシフェン 75     −     −
 ジノテフラン	    > 972,600    10.4     > 93,519  ブプロフェジン   800      181      4.42
 チアクロプリド  > 97,200     5.27     > 18,444  ピメトロジン  > 99,000  112,000   > 0.884
 チアメトキサム  > 106,000     −          −
 ニテンピラム      > 99,900    45.0      > 2,220
★水生生物の農薬感受性の一層の評価を
 不確実係数の設定方法の見直しはコガタシマトビケラ EC50値を用いて検討する。表で明らか
 になように、オオミジンコ EC50値とコガタシマトビケラ EC50値との比(表中(a)/(b)は、
 ジノテフランの93,519倍以上までと、5桁異なるものもある。

 平成27年度は、ネオニコチノイド系農薬等については、水生節足動物の感受性(毒性)デー
 タを収集し、オオミジンコ毒性値との比較を行う。
 IGR剤および摂食阻害剤については、オオミジンコを用いた亜急性毒性・慢性毒性試験の実験
 的試行を行う。
 平成28−29年度は、データの収集を継続し、最終的にネオニコチノイド系農薬等については、  薬剤による感受性の振れ幅が小さく、かつ高感受性の水生節足動物種の探索、あるいは、  様々なネオニコチノイド系農薬等の毒性値の種間差を把握するための複数種の選択を試みる。  IGR剤および摂食阻害剤については、効率的かつ安定した亜急性毒性、慢性毒性評価のための  試験法を開発する。
 となっています。いずれにせよ、日本で水田での農薬使用が多いので、アキアカネへの影響を含め水系汚染をなくすことは重要です。

★継続されるH27年度の事業
【参考サイト】環境省:平成27年度農薬の環境影響調査業務入札公告

H27年度の農薬の環境影響調査業務仕様書によれば、業務の目的は、前年につづき、『残効性・最遷移行性の高い農薬(具体的にはネオニコチノイド系+フィプロニノル(以下ネオニコチノイド系農薬等という。)の環境中への残留実態及びトンボ等水生節足動物類(以下「トンボ等」という。)への毒性に関する情報について把握するとともに、環境中のネオニコチノイド系農薬等及びその残留状況がトンボ等の生息状況に及ぼす影響を考察することを目的とする。』となっており、具体的には、下記のようです。
【毒性調査】
 ネオニコチノイド系農薬等及びその他の農薬のうち主要な農薬(有機リン系、カーバメート
系、ビレスロイド系、ネライストキシン系、ジアミド系等で、近年の生産・出荷量専を勘案し
て、優先順位の高い物から、可能な限り選定)のトンボ等への毒性評価に関する知見を収集し、
トンボ等への影響に関する考察を実施する。
【実態調査】
 前年に抽出された湖沼等7個所を調査対象として、水田用水と関連する所としない所、また、
底質のサンプルを採取する。当該地でのトンボ等の生息状況について、定量的なデータを取得
し、農薬残留実態や気象、土地利用環境省、水路状況との要因についても把握し、トンボ等へ
の影響に関する考察を行う。
 さらに、あるエリアにおけるトンボ等の生息密度及び種の構成が過去から現在までどのよう
に変化したかを推計する方法、ネオニコチノイド系農薬等の使 用が始まつて以降その変化に
どのような影響を与えたかを考察する方法の検討を行うとともに、それらの推計・考察に用い
る、データ(具体的には.博物館所有の標本等)の在処・入手方法の整理を行う。
【取りまとめ】
 上記の考察を踏まえて、ネオニコチノイド系農薬等の殊留・蓄積状況がトンボ等の生育状況
に及ぼす影響の有無を把握することを目的として、上記で得られた各々のデータの因果関係に
ついて解析を行う。
 となっていますが(実施するのは国立環境研究所のグループで、事業報告の納入期限はH28年3月28日)、 ネオニコの影響があるフィールドでは、使用を止め、その後、水産生物や生態系がどのように回復するかを調べる必要もあるでしょう。

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作成:2015-12-28