ネオニコチノイド系農薬・斑点米関係にもどる

t29005#2015年の第24回環境化学討論会より〜埼玉県内稲作地帯の農業排水中のネオニコ季節変化#15-10
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【参考サイト】日本環境化学会:Top Page第24回環境化学討論会プログラム
       埼玉県環境科学国際センター:Top Page同センターニュースレター25号のp-5に
         ココが知りたい埼玉の環境(16)「ネオニコチノイド系殺虫剤」って何ですか?

 埼玉県環境科学国際センターの大塚宜寿さんらが、札幌で開催された第24回環境化学討論会で、「農業排水路におけるネオニコチノイド系殺虫剤の季節変動」という報告をしました。
 試料の採取場所は埼玉県北東部にある見沼代用水(星川)とその支川である新川に挟まれた稲作を中心とする地域2地点で、2013 年4 月1 日から2014年4 月30 日にかけて週に1〜2 回の割りで、試料採取が実施されました。
 A は複数の農業排水路が合流する備前堀川の地点で、排水試料79 検体が、Bの用水では、50 検体が採取され、7種のネオニコチノイドが分析されました。それぞれの最大検出値を報告のグラフからの読み取り数値を示したのが下表です。
 
    表 排水(地点A)および用水(地点B)の農薬分析値 n:検体数

    農薬名      最大検出値  (μg/L)
             地点A(n=79)  地点B(n=50) 
    アセタミプリド    40       2
    イミダクロプリド   320        15   (地点Aはグラフより読み取り値)
    クロチアニジン     89         16 
    ジノテフラン      47         27 
    チアメトキサム      5          6
    チアクロプリド     28            ND
    ニテンピラム      ND         ND
   アセタミプリド、イミダクロプリド、クロチアニジン、ジノテフラン、チアクロプリドは、A地点の方が、Bよりも高い傾向がみられます。最大検出値を示したせいもあり、1μg/L単位の数値は、本誌で紹介してきた、全国各地の一般河川水、水道浄水などや大塚さんの過去の埼玉県内河川水の水系汚染実態(記事t27704参照)に比べ、10から1000倍ほど高い部類にはいります。農業排水の流入率が高いせいだと思われます。

★農薬濃度の季節変化
 検出濃度の高かったA地点の年間の農薬濃度の年間の推移を図(省略)に示しました。
ジノテフランの検出値は8月末に最大47μg/Lですが、10μg/Lを超える時期が大半で年間通じて高い傾向にあることがわかります。水稲斑点米カメムシ対策に多く使われるせいと考えられますが、散布が終わった秋から冬場も高く、残留性が疑われます。
同じくカメムシ対策のクロチアニジンは、8から11月に5μg/Lを超えるケースが多く、9月なかばのピーク89μg/Lを経て、翌年まで、濃度は減少しています。
 イミダクロプリドは5μg/L以下の時期が長いのですが、10月初めに320μg/Lという高濃度を示したほか、5月には33μg/Lが検出されました。イミダクロプリドは水稲育苗箱剤として、春に使用されるのですが、ピークになった秋の、周辺農耕地での農薬使用状況を解明すべきでしょう。
 アセタミプリドも5μg/L以下の時期が長いのですが、8月に24、4月に40μg/Lが検出されています。水稲には使用されないので、野菜や果樹での散布でしょうか。
 チアクロプリドはあまり検出されないのに、5月初めに28μg/Lが記録されていますが、その理由はわかりません。

★雨が降ると、濃度があがる
 図(省略)には、上部に農薬濃度の季節変化とともに、この地域の久喜観測所でアメダス観測された降水量も示してあります。降雨が多かった後に、高い濃度で農薬検出されるケースもみられ、環境中に残留していたものが雨によって水系に流入移行していることが窺われます。
 これらの結果から、大塚さんらは、『ジノテフラン,クロチアニジン,イミダクロプリド,チアメトキサム,アセタミプリドの濃度は,使用が多い時期と考えられる夏期を中心とした6 月〜11 月に比較的に高くなる傾向が見られた。特に降雨後には,複数の化合物に濃度の上昇が見られ,これは農耕地に残留していたものが降雨により排水路へ移行したためと考えられる。特定の化合物の濃度が前後の検体と比べて高くなった検体も見られた。これは,当該地域においてその化合物を含む殺虫剤が直近で使用され,排水路に移行した結果であると考えられる。』としています。
 記事t28802で述べた、環境省の湖沼水質・底質調査結果では、その場所で当年、散布実績のないネオニコが、底質中に検出され例もあります。それぞれの水系でどのような種類のネオニコ製剤が、いつ、どの程度の量散布されているかの使用実態と環境汚染の関連をもっと詳細に調査する必要があるでしょう。環境生物への影響だけでなく、ネオニコチノイドの人体汚染にもつながることを思えば、早急に全国規模の水系調査を実施すべきでしょう
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作成:2016-01-28