行政・業界の動きにもどる

t29103#農水省 農薬残留試験で、作物グループ化提案〜農薬メーカーや使用者のメリットのみ#15-11
【関連記事】2003年改定農薬取締法とマイナー作物:記事t14004記事t14603記事t15103記事t16308
       ポジティブリスト制度について:食品汚染・残留農薬記事一覧及び
              電子版 脱農薬てんとう資料集 第3号「残留農薬ポジティブリスト制度について」(2005-05発行)
       2011年残留試験事例数の変更:記事t23502
【参考サイト】農水省:農薬を使用することができる作物群作物分類代表作物
       環境省:農薬登録保留基準について
       日本食品化学研究振興財団:残留基準における農産物食品分類表試験用検体
       FAMIC:Top Page農薬登録申請の頁
             農薬の登録申請に係る試験成績について(12農産第8147号)別表1別表2別添
             「農薬の登録申請に係る試験成績について」の運用について(13生産第3986号)別表1-1 適用農作物一覧表

 農薬登録において、重要なのは、残留基準を決めるための作物残留試験です。現状では、製剤別、適用作物ごとに、それぞれの使用方法により残留値がどれほどかを示す試験成績を提出することになっています。
 しかし、農水省は、この運用の形骸化を目論見、2003年の改定農薬取締法施行の際には、生産量が少なく、残留データのないマイナー作物には、適用外使用を認めました。2006年のポジティブリスト制度にあたっては、厚労省は残留基準として、野菜類とかイモ類など、作物名のない大雑把な登録保留基準の一部を転用しました。
 そして、本年10月23日、農水省はHPに「農薬を使用することができる作物群」という頁をつくり、残留試験の簡素化の集大成ともいうべき、作物グループの具体化に踏み切りました。グループ化というのは、作物をいくつかのグループに分け、その中のある作物で残留試験が実施されていたら、同グループの試験のない作物も、適用登録するというものです。

★農水省の言い分は
 農水省は、グループ化に際し、@収穫する部位、A収穫物の形、B農薬を散布する時点での収穫物の重さと表面積の比、C収穫時の状態や収穫のタイミング、D実際に食べる部位、E病気や害虫による被害を防ぐために必要な農薬の使い方や時期、などを配慮する。さらに、@果実類の「作物群」、A「作物群」で登録する場合の基本的な考え方、B果実類の「作物群」で登録する場合に必要な科学的データ(作物への残留に関する試験、代表作物)を提案、パブコメを実施するとしています。
 果実についての資料をみると、かんきつ類、仁果類(リンゴなど)、核果類(モモなど)、ベリー類及びその他の小果実(イチゴなど)、熱帯および亜熱帯果実類(果皮も食するものと食さないものは別類)の6つに分類し、それぞれに代表作物を決め、残留試験データの提出が求められます。
 かんきつ類の小作物群では、小粒かんきつ、中粒かんきつ、大粒かんきつに分類され、小粒かんきつの代表作物はカボス、スダチ、ユズ、レモンの4種、このケースでは、いずれか1種類の作物で残留試験事例が2例以上あれば登録要件に適い、登録されれば、当該農薬が使用可能となる作物は、カボス、キンカン、スダチ、ユズ、レモン、その他の小粒かんきつの果実となります。すなわち、小粒かんきつの場合は、たった1種類の2事例の残留試験で6種類以上の小粒かんきつに使えるようになるわけです。

★消費者にはメリットない
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【参考サイト】農水省:農薬登録制度に関する懇談会の頁
           「我が国における農薬登録制度上の課題と対応方針(案)」に対するご意見・情報の募集原案
     当グループ意見、パブリックコメント意見に対する農水省の見解最終対応方針(2009/9/11公示)

 私たちは、農水省が2009年6月に実施した「我が国における農薬登録制度上の課題と対応方針(案)についての意見」募集で、『作物グループ化によって、メリットがあるのは、農薬登録に必要な薬効・薬害・作物残留性試験数を減らせる農薬メーカーと、使用可能な農薬数が増える農業者であり、残留農薬を取り込むことになる散布地域の住民や消費者にはメリットはない。国民には、作物グループ化により、個々の農作物の残留性がただしく評価できることを、また、大気汚染や作物に残留した農薬の摂取量をどれだけ減らすことができるかを科学的に示す必要があるが、これも出来ていない。』という意見を提出しました。
 その答えが、今回のグループ化です。科学的装いを施した農水省のパブコメ案に対しては、今後とも、しつこく追及して行きましょう。

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作成:2015-11-27