ネオニコチノイド系農薬・斑点米関係<にもどる

t29202#アメリカで登録取消のスルホキサフロル〜厚労省が登録前提に、残留基準案のパブコメ意見募集中#15-12
【関連記事】記事t29102
【参考サイト】アメリカ第九巡回控訴裁判所:On Petition for Review of an Order of the EPA(9/10)
       EPA:Sulfoxaflor - Final Cancellation Order (11/12)
       EPA:Guidance for Assessing Pesticide Risks to Bees(2014/06/19)
       ダウ・アグロサイエス:9/10の見解11/13の見解
       厚労省パブコメ募集:スルホキサフロルの残留基準設定について(1月2日締切)
       環境省パブコメ募集:水質汚濁に係る農薬登録保留基準値(案)について(スルホキサフロルあり)(1月5日締切)

 アメリカのダウ・アグロサイエンス社が開発した新ネオニコ系の殺虫剤スルホキサフロルについては、同国で、9月にミツバチ毒性評価が不十分だとして、登録の無効の判決がくだされ(本誌291号)、これを踏まえ、11月、EPA(アメリカ環境保護庁)は、同成分を含む7製剤の登録者に、販売・流通を禁止する命令をだしました。
 ところが、日本では、12月にはいって、この農薬を登録すべく、残留基準案と水質汚濁に係る農薬登録保留基準案のパブコメ意見募集が始まりました。国内登録は目下申請中で、適用は水稲のウンカやツマグロヨコバイ、カメムシ類/リンゴ、カンキツ、キャベツ、ダイコン、レタス、キュウリ、トマト、ミニトマトのアブラムシやコナジラミなどです。
 すでに、人への健康影響評価や水産動植物の被害防止に係る保留基準のパブコメは終了しており、私たちの反対意見は受け容れられませんでした(記事t26802a)。アメリカで登録が取消された農薬について、なおも、残留基準を設定し、国内での使用も認めようとしていることに対し、ぜひ、厚労省へパブコメ意見をだしてください。

★パブコメ募集は1月2日が締切
 EPAは、2013年5月、スルホキサフロルの農薬登録を認可し、その後、7製剤が製造・販売されていましたが、2015年11月12日の登録取消し命令では、農家が手持ちの製剤の使用や外国への合法的な輸出は認められるものの、廃棄のための輸送以外、すべての販売・流通が禁止されます。
 このことを踏まえ、私たちが提出した主なパブコメ意見の概要を以下に示します。

反農薬東京グループのスルホキサフロルの残留基準設定についてのパブコメ意見全文

【意見1】食品の残留基準を2ppm以上にすることに反対である。残留試験成績よりもずっと高い値に設定しており、特に、スルホキサフロルの登録取消が命令されているアメリカでの残留基準や、残留データの不明な国際基準が援用されているのは問題である。
      表 主な食品の残留基準案
      10ppm:ダイコン類の葉、ミカン果皮
       6ppm:ハクサイ、コマツナ、チンゲンサイ、レタス、パセリ、ホウレンソウほか
       4ppm:未成熟エンドウ、未成熟インゲン
      3ppm:ブロッコリー、アンズ、オウトウほか
       2ppm:キャベツ、シイタケ、セロリ、トマト、ナス、オクラ、ナツミカン、オレンジ、
         レモン、グレープフルーツ、ブドウほか
<レタスの場合>国内の残留試験2事例で最大残留値は0.42ppm、アメリカ、オーストラリア、EU5カ国でのレタスやリーフレタスの残留試験35事例で、最大残留値は1.416ppmなのに、国際基準6ppmがそのまま援用されている。

【意見2】コメの残留基準1ppmに反対である。もっと低くすべきである。
[理由]TMDI(理論最大一日摂取量)に対するコメの寄与率が食品中で一番高い。国内での残留試験の最大残留値は0.48ppmであり、摂取推定量を低く見せるために算出したEDI(推定一日摂取量)では、暴露評価値を残留基準案より低い0.418ppmとしている。

【意見3】全体的に残留基準が高すぎる。もっと低く設定して、その摂取を減らすようにすべきである。
[理由]1.スルホキサフロルは、ラットの発がん性試験で雄に肝細胞腺腫及び精巣間細胞腺腫、マウスの発がん性試験で雌雄マウスに肝細胞腺腫及び肝細胞癌の発生頻度増加が認められたが、非遺伝毒性メカニズムによるとされた。他の発がん性物質や放射性物質の摂取、がん発症者への影響を考えると、その摂取を出来るだけ減らす必要がある。
 また、ラットの繁殖試験で新生仔死が、発生毒性試験で、胎仔の四肢異常等が、母体毒性がみられる用量で認められた。これらの異常発生はラット胎児期に特異的に発現するニコチン受容体に起因する可能性が考えられたため、ヒトでこれらの異常が発現する可能性は低いとされたが、このような物質の摂取はできるだけ減らすべきである。そのため、残留基準を低くすることが有効である。
 2、幼小児のTMDIの対ADI(一日摂取許容量)比は、84.1%で、安全の目安とされる80%を超えている。
 3.ESTI(短期推定摂取量)が、2014年11月に公表された食品別の一日最大摂取量をもとに、ESTIの対ARfD(急性参照用量=急性中毒発症推定量)比が算出され、厚労省は、この比が単独で100%を超えないことを安全の目安としている。私たちは、『一食品での短期暴露推定量がARfDの100%に達するような基準を設定していては、他の食品、水、空気ほかからの摂取があった場合を考えると、安全の目安とはならない。』とし、10%以下とするよう求めている。提案された残留基準では、下表のように、短期暴露推定量が単独で、ARfDの20%以上の食品がある。
    表 幼小児の場合のESTI  単位μg/kg体重/日
    食品名     基準案  ESTI  ESTI/ARfD
    ハクサイ     6ppm  94.1  40%
    非結球レタス類    6       83.5    30
    ホウレンソウ      6       67.4    30
    オレンジ          2       53.9    20
    コマツナ          6     53.3    20
    トマト            2       54.3    20
    ブドウ            2       61.2    20
    ブロッコリー      3       43.2    20
    レタス            6       53.0    20
    レンコン          6       61.7    20
【意見4】アメリカでは、11月に、EPAが登録を取消し、製剤の販売・流通禁止の命令をだしている。日本では、登録申請時のミツバチへの影響試験成績は公表されておらず、授粉作物への影響が不明なまま、野菜や果樹に適用しようとしている。登録を前提とした残留基準の設定は拙速すぎる。

【意見5】人の健康影響評価を見直すだけでなく、水産動植物やミツバチなど花粉媒介昆虫や天敵、その他の昆虫への影響も再評価すべきである。

スルホキサフロルに続く新ネオニコ系農薬として、バイエル・クロップサイエンスのフルピラジフロンが12月22日に国内登録されました。商品名はシバント箱粒剤で、水稲の育苗に適用されます。

3月4日の厚労省の食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会で、スルホキサフロルの残留基準設定を中止することが決まりました。アメリカで、スルホキサフロルが新たに登録されるまで、設定は延期するとのこと。パブコメ意見は537あったそうです。従って、未登録の状態がまだ、つづきます。
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作成:2015-12-28、更新:2016-03-09