残留農薬・食品汚染にもどる

t29301#ホウレンソウを主要作物とする46農協にアンケート調査〜クロチアニジンを使いますか#16-01
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  替え歌の頁:ほうれんそう40(フォーティー)
  脱農薬ミニノート:「農薬も一緒に食べる? クロチアニジン残留基準の大幅緩和」

  農協あて:ホウレンソウとダントツに関するアンケートのお願い

 ネオニコチノイド系農薬のクロチアニジンの残留基準は、市民団体や消費者団体が反対する中、2015年5月、驚くほど大幅に緩和されました(記事t28603ほか)。ホウレンソウの3ppmから40ppmに引き上げを筆頭に、カブの葉0.02→40、ミツバ0.02→20、パセリ2→15、コマツナ1→10など身近な野菜の基準が軒並み緩和されました。
 あまりの大幅引き上げに2013年に行われたパブリックコメントには1600件以上の反対意見が寄せられました。驚いた厚労省はARfD(急性中毒発症推定量)を決める、当グループの発達神経毒性の論文を無視しているという指摘などで、告示を凍結し、2014年、食品安全委員会に人の健康への影響の再評価を依頼しました。しかし、ADIもARfDも原案のまま決まり本誌278号参照)、15年に、再提案された基準値は、下げるどころか、反対にさらに緩和された食品さえありました。パブリックコメントを経て5月19日、厚労省は原案通り告示し、同時に農水省もその元凶となったクロチアニジンを含有する製剤2つの適用拡大の登録をしました。

★生産者に伝えたいとアンケート
 このままでは、40ppmという散布液と同じ濃度のホウレンソウを離乳食の子どもたちが食べてしまう恐れがあります。
 この事実を広く、とりわけ、生産者に知ってもらいたいと思い、2015年12月にホウレンソウを主要農産物としている農協にアンケート調査をしました。
 私たちは、行政や企業には何度もアンケート調査をしていますが、農協や生産者団体には初めてです。果たして、回答が来るだろうかと危ぶみながら比較的短い期間で実施しました。回答を寄せてくれた農協は、思った以上に今後もクロチアニジンは使用しないという回答でした。感謝します。

★22都道府県の46単協の35%が回答
 期間:15年12月1日から12月14日
 対象農協:日本農業新聞発行の「都道府県農業協同組合名鑑」平成27年版の「主な農産物」   の欄に「ホウレンソウ」があり、メール(一部ファックス)で問い合わせできる下表の46  農協。
回答:「回答しません」という回答も含めて16農協から返事があり、回答率は35%でした。
  県名  農協数 農協名(JAは省略。○印回答あり)
  北海道   3    むかわ、〇東神楽、〇木野
  岩手県   1    〇新いわて 
  秋田県   2    あきた湖東、〇新あきた
  宮城県   1    〇いしのまき 
  福島県   1    あいず 
  茨城県   1    常陸小川
  埼玉県   3    あさか野、〇いるま野、JA南彩
  千葉県   1    ちば東葛
  東京都   5    〇八王子、東京みどり、東京みらい、〇東京あおば、東京スマイル
  神奈川   2    〇さがみ、湘南
  山梨県   1    西八代  
  岐阜県   3    〇にしみの、○めぐみの、〇飛騨
  愛知県   3    西春日井、海部東、あいち中央
  滋賀県   2    草津市、栗東市
  大阪府   2    大阪中河内、大阪市
  兵庫県   4    兵庫六甲、〇あかし、兵庫西、たじま
  奈良県   1    奈良
  広島県   4    広島市、〇佐伯中央、福山市、〇庄原
  山口県   2    山口美祢、あぶらんど萩
  徳島県   2    徳島市、かいふ、
  福岡県   1    〇北九州
    大分県   1    べっぷ日出
    合計  46   〇は16
★アンケートの前文では
 生産者には、ホウレンソウとクロチアニジンの残留基準の問題点などを十分に認識してほしいと思い、説明をつけました。抜粋を紹介します。
 「特に、子供や妊婦に推奨される食品であるホウレンソウに関しては、従来の3ppm から一挙に40ppmになりました。この濃度は、クロチアニジン16%の水溶剤の適用表にある4000倍希釈した散布液の濃度と同じで、子供が100グラム食べると急性中毒を起こすかもしれないというとんでもない濃度です。(略)
 しかし、このようなホウレンソウはとても食べられないというのが、消費者の実感です。
 クロチアニジンは、多くの野菜や果樹や水稲にも適用があり、水田育苗箱剤の使用で、アカトンボや水生生物に影響を与え、果樹や斑点米カメムシ駆除用散布などで、ミツバチ被害が明らかになっています。水系汚染も判明していますし、人体からも検出されています。EUでは使用規制されており、アメリカでもミツバチ被害の原因農薬のひとつとして使用拡大に歯止めがかかりました。世界の動きは、クロチアニジンをはじめとするネオニコチノイドの使用を減らしていく方向にあります。
 そこで、貴農協に以下のお尋ねをします。お忙しいとは思いますが、どうかご協力ください。」

★アンケートの質問内容
1、貴JA(傘下の生産者や生産部会を含む)では、平成26年度と27年度にホウレンソウを出荷されていますか。
2、ホウレンソウ栽培にダントツ製剤を使用しますか。
3、ホウレンソウのアブラムシ対策として、農薬に頼らないため、どのような方法をとっていますか。
4、この件に関するご意見をお聞かせください。
 上記のように、非常に簡単な質問で、回答は、以下に示すように、選択肢を挙げ、〇をつけるという簡単なものです。
 回答を差し控えたいという2農協は、東京あおば(東京)、庄原(広島)ですが、庄原農協は「当JAではダントツは使用していませんし、組合員の方々に活用していただいている肥料農薬の冊子にも載せていません」とコメントがありました。
 以下に、上記2農協を除いて14農協の回答をまとめます。
 質問1 ホウレンソウ出荷について
  ホウレンソウを主要な農産物と回答している農協への質問ですから、当然、全部が
  「ある」と回答しています。

 質問2 ダントツ製剤使用について
  この質問の選択肢は、@現在使用している、A今後使用を検討する、B今後も使用しない、
  Cその他、です。  
  今後も使用しないは8農協(57%)
  回答の中で一番多かったのが、「今後も使用しない」でした。東神楽(北海道)、
  木野(北海道)、新秋田(秋田)、めぐみの(岐阜)、飛騨(岐阜)、あかし(兵庫)、
  佐伯中央(広島)、北九州(福岡)の8農協でした。
  飛騨は「ダントツをほうれんそうの栽培歴に記載していませんし、使用を奨励することも
  行っていません。今後においても使用の必要性は現在もっておりません」とコメントがあ
  りました。
  現在使用しているのは、いるま野(埼玉県)が「本年度より4%ほどが使用している」との
  ことでした。
  今後使用を検討するに入るものとして、いしのまき(宮城)は、「現在は使用していない
  が、今後使用する可能性もある」としています。
  「その他」と回答した農協とコメント
  新いわて(岩手県):「ご懸念のダントツ等農薬は、岩手県のホウレンソウ登録農薬でな
   いので、当JAでは使用しておりません。」
  八王子(東京):「使用する場合は短期暴露評価を見据えた対応」。
  さがみ(神奈川):「当農協では、神奈川県病害虫雑草防除指導指針に従い、農薬使用の
   指導を行っております。該当農薬は指針に掲載されておりません。」
  にしみの(岐阜):「現在、栽培歴に載っていない」。

  全体的なコメント
   上記コメントとは別の、全体的なコメントは以下のようでした。
  いるま野:栽培生産者は、食の安心・安全を確保するために、農薬の使用基準を遵守して
  おります。
  八王子:生産者のエコファーマー認証制度、東京都エコ農産物認証制度への加入を促進し、
   活用する事で低化学農薬、低化学肥料栽培の野菜の生産を東京都と協力し進めています。
  めぐみの:当JAは、数年前よりネオニコチノイド系農薬の使用については、
   水稲をはじめ大幅な縮小を図っております。農産物の安定生産・安定供給を行う上で、
   農薬使用については極力減らすことを生産者側として勧め、農薬取締法・食品衛生法等
   の法令遵守を生産者に周知徹底及び指導を行っております。
  ひだ:今後も誰でも安心いただけるホウレンソウ生産に努めてまいります。
 
 質問3 農薬以外の方法(複数回答あり)
  いくつか例をあげて農薬以外の方法を尋ねました。防虫ネットと雑草対策が一番多く実施
  されているようです。
   項目        回答数            
  (1)UVカットフイルム  (6) 
  (2)寒冷紗などでの被覆  (8) 
  (3)反射マルチ      (2) 
  (4)防虫ネット      (12)
  (5)天敵利用        (1) 
  (6)高圧気流処理     (0)
  (7)温湯処理       (0)
  (8)水圧処理        (0)
  (9)耕種的処理      (4)
  (10)ほ場周辺の雑草対策  (12)
   (11)その他               (1)
       コマツナ、春菊、チンゲンサイとの輪作。ホウレンソウは害虫の少ない冬季用の栽培が中心(新秋田)
 回答をいただいたのは、全体から見れば、非常に少ない数ですが、私たちが思っていた以上に、クロチアニジンは使われないのではないかと思えました。もっとも、昨年5月にホウレンソウに登録されたばかりですから、今後の動きをみてゆく必要はありますが、安全な野菜を作りたいという生産者の思いを確認できてほっとしました。
 住化テクノサービス社は、施設野菜栽培でのアブラムシ駆除に天敵農薬「カメノコS」(ヒメカメノコテントウ)を登録しており、住友化学も非ネオニコ剤に力をいれるべきでしょう。

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作成:2016-02-28