ネオニコチノイド系農薬・斑点米関係<にもどる

t29401#指定解除のパブコメをだそう(3月10日締切)
     〜またも斑点米カメムシが有害指定動植物に農薬使用推奨の仕組みは変わらず#16-02

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     パンフ:「知っていますか?斑点米と農薬とミツバチ大量死」
【参考サイト】農水省:「指定有害動植物の見直し検討会」の頁
           11月2日検討会概要資料 指定有害動植物の見直しについて
           別紙1 都道府県による重要性評価別紙2 リスク評価方法
           別紙3 指定有害動植物の見直しに係るリスク評価別紙4 指定有害動植物の見直し(案)


 農水省植物防疫課は、今年1月26日に、昨年11月に開催された「指定有害動植物の見直し検討会」(以下、検討会という)の結果をホームページで発表し、これを踏まえて、2月10日に見直し案を提示し、3月10日まで、パブコメを実施しています。
 指定有害動植物とは、植物防疫法に基づいて「有害動物又は有害植物であって、国内における分布が局地的でなく、且つ、急激にまん延して農作物に重大な損害を与える傾向があるため、その防除につき特別の対策を要するものとして、農林水産大臣が指定するものをいう」と定義されています。これに指定されると、都道府県の協力で、発生予察事業を実施し、防除対策に関する情報等を関係機関、農業者に提供し、農業者はそれを参考に病害虫防除をしているということです。その際、災害時には、国による薬剤や防除用器具補助、譲渡、無償貸付も可能です。見直し前の現在、85種類が指定されています。
 この法律では、防除の内容は、被害植物の消毒、除去、移動規制、廃棄となっています。植物栽培に使用する薬剤は農薬というのに、消毒や薬剤という語句はあるものの、農薬という語句が条文にひとつもないのは不思議なことです。

★班点米カメムシは2000年から指定
 斑点米カメムシ類もこれに指定され、全国的に発生予察、発生注意報、警報などがだされ、農薬散布が推奨されてきました。指定後、散布面積は増え、カメムシ退治の農薬が水田での殺虫剤のトップをしめています。これは、農産物検査法と連動して、斑点米の混入率によって米の売渡価格ががくっと下がる仕組みのためです。ですから、私たちは農産物検査法の着色粒規程の廃止とともに、植物防疫法の「指定有害動植物」から斑点米カメムシ類を外すことを求めてきました。
 斑点米カメムシ類が指定されたのは2000年(平成12年)だということですが、どういう被害があったのか、どういう手続きで、誰が指定したのか、いくら聞いても農水省は資料はないとしか回答しません。15年1月21日付け、当グループ質問への植物防疫課の回答は以下のようです。(記事t28203)
 「ご指摘のありました指定の判断根拠や経緯を都道府県に通知したような文書は存在せず、保存していない旨を回答したところですが、平成12年3月に植物防疫法施行規則を一部改正したことを農政局等に通知した「植物防疫法施行規則の一部を改正する省令の制定について」(平成12年3月31日付け農産園芸局長通知12農産第1782号)は保存しています」として、官報を送ってきました。
 こんないいかげんなことで、対応しきれなくなったのか、今回、病害虫防除の有識者などによる検討会をつくり、パブコメもすると形式を整えてきたわけです。検討会の主張をみると、最近の病害虫の変化と15年6月に実施された行政事務レビューで、指定有害動植物の見直し期間を短縮すべきとの生産現場の意向を受けただけの見直しであることがわかります。私達の斑点米カメムシの削除要望は無視されています。

★指定のためのリスク評価方法
 検討会では、以下のように(1)から(3)の項目で、〇番号の指標を用いてリスク評価し「指定有害動植物」を決めることになりました。
 (1)国内における分布が局地的でないもの(@発生状況の報告がある都道府県数、
   A発生面積、被害面積)
 (2)急激にまん延するもの(@増殖度(気象条件等による増殖速度)、
    A拡散性(害虫:長距離移動性、病気:胞子、風雨、種子等による伝搬性)
 (3)農作物に重大な損害を与える傾向があるもの(@ 加害度減収又は品質の低下を
   及ぼす程度 A防除の困難性、B農業者及び関係機関からの発生予察情報の注目度、
   C国の施策上重要な農作物への被害の有無)
 リスク評価の結果、指定有害動植物の見直し(案)として、病害虫111種類を選定しました(現行:85種類、追加42種類、削除16種類)。このうち、コメに関しては、9種類が15種類に増えています。
 植物防疫課は、事前に都道府県に作物と病害虫の組み合わせで100種類選定し、6つの評価項目(@発生頻度、A発生量、B発生地域、C経済的被害、D防除回数、E予察の重要度)に重要度による評価点(1〜5点)を付して植物防疫課に報告させて、その合計が300点以上になるものを選定し、指定有害動植物の候補としてあげたということです。

★斑点米カメムシ類のリスク評価
 斑点米カメムシ類のリスク評価は以下のようで、3項目でいずれも、「A」ランク、総合評価は「指定あり」となっています。います。
 <評価1>国内の分布が局地的でない A
          発生報告都道府県:47、発生面積588,446ha、
     防除面積1,629,252ha、発生面積率37.0%、防除面積率102.5%。
  <評価2>急激に蔓延する A
          気象条件による増殖○(高温で急速に増殖)、拡散性△ 短距離飛翔)
  <評価3>農作物に重大な損害を与える傾向がある A
         ア 加害度○、農作物の重要性5、 被害の様式2、被害度10、
         イ 防除の困難性×
         ウ 関係機関農業者の注目度農業者1位、関係者2位
         エ 国の施策上の重要性食料・農業・農村基本計画
  <総合評価> ○(指定する)
  <評価コメント>
  「アカスジカスミカメ、アカヒゲホソミドリカスミカメ、クモヘリカメムシなど多くの種が
   存在し、発生面積が広く、大きな品質低下を及ぼす。関係機関及び農業者からの注目度が特
   に高く、国の発生予察の対象とする必要がある」
★品質低下は経済的被害とのことと
 リスク評価の内容ですが、被害を与えるというその被害については収量減だけでなく、経済的被害として品質低下が入るとなっています。これは今までにない表現です。
 水稲の場合、上記の評価コメントでわかるように、減収という文言はなく、斑点による見かけの品質低下を経済的被害ととらえています。そうしないと、防除の重要度を高くできないのです。
 すなわち、斑点米が多くなると、コメの売り渡し価格が安くなるということで、農業者の注目度が一位であることがそれを証明しています。しかし、既に色彩選別機が使用されており、農産物検査法の着色粒規程を変えれば経済的被害もなくなり、敢えて指定有害動植物に指定する必要はありません。
 また、農薬散布をすることで、田んぼの中の天敵をはじめとする生物を殺し、環境を汚染することに対するマイナス評価もありません。農水省は斑点米カメムシの農薬防除がミツバチ大量死をもたらしていると報告していますが、同じ省でありながら一切無視しています。

★指定削除だと発生予察ができない
 農水省のまとめには、検討会での質疑が簡単に示されています。その中からいくつか、紹介しましょう。(回答は植物防疫課)
  質問:指定有害動植物から外れると、どうなるのか。
  回答:国の発生予察事業の対象とならないことから、植物防疫事業交付金を活用して
     発生調査ができないことになる。

  質問:植防法条文にある「防除につき特別の対策を要するもの」とはどういうことを意味
     するのか。直ちに指定の薬剤を散布するなどの措置を必要とするということか。
  回答:適切に防除を実施しない場合には、被害が生じることがある旨の防除指導は行うが、
     特定の薬剤による防除を強要したり、指示するものではない。

  質問: カメムシ類など、○○類で指定することについて考え方を説明をされたい。
  回答:発生予察の調査現場では、短時間に多数の調査を実施しなければならないことから、
     種まで識別することが困難である場合が多い。また、斑点米カメムシ類や果樹カメ
     ムシ類としているグループの発生や被害、その防除対策については、同様に扱うこ
     とが可能であることから、種の識別を待たずして迅速に防除指導が行えるよう○○
     類として指定することとしている。

  質問:収量に影響する被害だけでなく、品質低下に繋がるコスメティック(事務局注:形や
     色など外観を意味する)な被害もある。品質低下に繋がる被害について、考え方を説
     明されたい。
  回答:発生予察の対象としては、収量の低下のみならず、品質の低下も被害として考えて
     いる。斑点米カメムシ類は、着色粒の発生などにより品質を低下させ、夏季の高温
     等により多発した場合には、大きな経済的被害をもたらす。今回の評価基準の一つ
     である病害虫の「加害度」は「減収又は品質の低下を及ぼす程度」としており、 
     「被害の様式」でも品質低下を経済的被害として評価している。
★パブコメでこの点を主張しよう
 指定有害動植物見直しに関する、農水省植物防疫課による「植物防疫法施行規則の一部改正案についての意見・情報の募集について」のパブリックコメントの締切は3月10日です。
 省令を改定するためのパブコメにしては、改定概要の説明は非常に不十分で、どうして、指定病害虫に選定したのか、これだけ読んで意見を出せるのは生産現場の人ぐらいでしょう。
 しかし、黙っていたらそのまま認めることになります。検討会のHPには、指定有害動植物のリスク評価のあり方などの資料も掲載されていますので、その内容も含め、斑点米カメムシ類の削除のために、できるだけ多くの意見を出してほしいと思います。
 参考までに、この改定の問題点をあげておきます。この中の一つだけでも理由を挙げ、意見として提出してください。

パブコメ意見:斑点米カメムシ類の指定削除を求める

パブコメ:植物防疫法施行規則の一部改正案についての意見・情報の募集について改定概要

 1.農薬以外の防除法を優先すべき「防除」というと、即、農薬散布と解されている。指定
  有害動植物の防除には、通知「住宅地等における農薬使用について」で明文化されている
  ように、農薬以外の耕種的、物理的方法などを優先的に実施することを義務付けるべきで
  ある。
  農薬散布は、天敵やただの虫への影響で、生物多様性が損なわれ、ただの虫が害虫となり、
  農薬耐性をもつ動植物の繁茂につながる。花粉媒介昆虫に被害を与え、生産のマイナス要
  因になる場合の評価がない。
 2.斑点米カメムシ類は「農作物に重大な損害を与える」という理由に当てはまらない。斑   点米は生産量に影響しない。むしろ、カメムシが作るとされている斑点米(着色粒)が   0.2%の混入で、米の売り渡し価格が0.1%の混入米より60キロで600円から1000円も安くな   るという農産物検査法の規定を改めれば、米生産者の被害はなくなる。
 3.農業現場では、水田やその周辺などの除草が指導されているし、生物多様性を保持し、   農薬を使用しない有機栽培者の水田では、カメムシ被害は殆どみられない。また、斑点米   は生産段階でなく、出荷前に色彩選別機によって選別されており、消費者には届かない。   色彩選別機の費用は、カメムシ防除の農薬散布代より安く、農薬散布の必要はない。
 4.カメムシ防除に使用される農薬は、ネオニコチノイド系が多い。この系統の農薬は   カメムシ以外の生物にも多大な影響を与える。   農業環境技術研究所が最近発表した「日本の農業における送粉サービスの経済的価値を評価」   という研究では、花粉を運ぶ昆虫が日本の農業にもたらしている利益は、4700億円と推定   している。そのうちの70%は野生送粉者によるものだという。   農水省は、2014年に農薬によるミツバチ被害を調査し、カメムシ防除の農薬がミツバチの   大量死をもたらしていると報告している。農薬を田んぼに撒いて、経済的被害をなくそう   と思っても、一方で、その利益をもたらしてくれる昆虫を殺している。ミツバチに限らず、   農薬でカメムシの天敵を殺すことによってさらに、被害を大きくしているわけだ。
 5.カメムシ防除の農薬散布は無人航空機が多用される。改定航空法で、ドローンも含めて   無人航空機飛行には許可が必要になったが、周辺住民の事故への恐怖や健康被害は後を絶   たない。
 6.指定には、生産現場の意向が強く反映されている。そもそも、品質の被害は経済的被害   であるとしているが、本末転倒といえる。品質で経済性を評価するとすれば、消費者の考   えもいれるべきである。   斑点米カメムシ防除に多用されるジノテフランは水系を汚染しているだけでなく、残留農   薬調査では、検出率が最も高い。そのため、ヒトの尿中にも見出されている。残留農薬が   多いコメは、低品質とみなされるべきである。

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作成:2016-02-28