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t29501#アメリカで禁止されたネオニコ系殺虫剤スルホキサフロルの農薬登録が止まった〜パブコメ意見で、厚労省が残留基準設定を中断#16-03
【関連記事】記事t26802a、記事t29102、
記事t29202
【参考サイト】厚労省:スルホキサフロルの残留基準設定についてのパブコメ募集にある概要、命令案、参考資料
反農薬東京グループのパブコメ意見全文と
薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会の資料にあるパブコメ結果概要
記事t29202で呼びかけたように、日本で、まだ登録されていないネオニコチノイド系農薬スルホキサフロルの残留基準設定について、厚労省が2015年12月04日〜2016年01月02日まで、パブコメ意見募集を行いました。
この農薬は、アメリカのダウ・アグロサイエンス社が開発した殺虫剤で、日本では登録申請中であり、すでに、環境省による水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準が設定され、食品安全委員会による食品健康影響評価が終了、ADI(一日摂取許容量)とARfD(急性中毒発症推定量)が設定されていました。
厚労省の残留基準と環境省の水質汚濁に係る農薬登録保留基準が決まれば、いつでも、登録が可能ということになっていましたが、私たちは、日本で登録されようとしているスルホキサフロルが、開発国であり、残留基準の設定を求めているアメリカで、登録が取消されたにも拘わらす、同国の残留試験データに基づく基準を決めることは納得できないとして、多くのパブコメ意見を述べました。
3月4日開催された厚労省の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会では、アメリカでの状況の調査結果が報告され、次節のようなパブコメ意見を踏まえた上、残留基準の設定作業をひとまず中断することが決まりました。これで、申請者の早期の農薬登録の目論見が崩れたわけですが、まだ、予断は許されません。
★537件のパブコメ反対意見があつまる −省略−
【参考サイト】厚労省:農薬スルホキサフロルの残留基準の設定について(3/04公表)
★日本のミツバチは守られるのか
厚労省は、アメリカのEPAの登録取消は『蜜蜂への影響に関する十分なデータの提出を求めなかったことを理由とするものであり、人の健康への懸念によるものではない。米国では、登録の取消後も食品中の残留基準値は維持されており、スルホキサフロルが適正に使用された農作物の流通は引き続き可能。』とし、つぎのような今後の進め方を示しています。
『・米国での登録取消は、上記のとおり人の健康への懸念を理由としたものではないため、食品の安全性の観点からは残留基準の設定には影響しないと考えられる。
・一方、今回の基準設定の理由の一つが米国を参照国としたインポートトレランス申請*に対応したものであったところ、米国では当該農薬の登録が取り消された状況にあることから、現在申請中の再登録の結果を待った上で、基準値案について検討することとする。』
*注 インポートトレランス申請:日本で残留基準がない場合、その作物を輸出しようと
する国が、残留試験成績等を提出、基準の設定を求める制度。
しかし、アメリカで問題となったミツバチ等への影響について、どうするかは、何らふれていません。さらに、ヨーロッパでも、スルホキサフロルの登録取消しを求めた養蜂団体等による訴訟が欧州裁判所で行われており、その対応も不明です。
そもそも、農薬登録の権限をもつ農水省は、ミツバチ等の影響試験の提出を求めているものの、試験内容も不十分で、毒性が強ければ、登録をさせないのではなく、単に、ラベルや容器に使用上の注意の表示がされるだけです。今回の厚労省の基準案では、アメリカなど海外からの輸入作物のためだけでなく、登録されれば、水稲の斑点米カメムシや野菜・果樹のアブラムシへのスルホキサフロル使用につながるわけで、日本でも、ミツバチや花粉媒介昆虫等への影響は避けらないのに、その評価がなされていないのです。
★登録の是非を問うことが求められる
【参考サイト】食品安全委員会:
ADIパブコメ募集と農薬評価書案、反農薬東京グループの意見とパブコメ結果
急性参照用量についてのパブコメと反農薬東京グループの意見
環境省:水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準値(案)に対する意見の募集について
改定案資料と反農薬東京グループの意見とパブコメ結果
このような状況下での、スルホキサフロルの農薬登録はとても認められません。私たちは、人の健康への影響に関しては、食品安全委員会のADIやARfD、厚労省の残留基準、水産動植物に関しては、環境省の登録保留基準について、パブコメ意見で、甘すぎる提案に反対してきました。しかし、ミツバチ等の昆虫への影響や生物多様性保持の立場で、農薬登録について意見を述べるパブコメ意見募集はありません。
メーカーが新農薬の農薬登録や既存農薬の変更登録を申請した際には、登録の是非そのものについて、国民の意見を聞くことを求めて行きたいと思います。
反農薬東京グループ:ダウ・アグロサイエンス日本への要望と質問と
反農薬東京グループ、グリーンピース・ジャパン、ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議:農水省、環境省への要望
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作成:2016-03-31