農薬の毒性・健康被害にもどる
t29507#次第に明らかになる農薬人体汚染 (その3)尿中の農薬濃度の経年変化#16-03
【関連記事】その1、その2、その4
【参考サイト】Environ Sci Technol:Vol.49(24):14522,2015
Temporal Levels of Urinary Neonicotinoid and Dialkylphosphate
Concentrations in Japanese Women Between 1994 and 2011
Jun Ueyama, Kouji H. Harada, Akio Koizumi, Yuka Sugiura, Takaaki Kondo,
Isao Saito and Michihiro Kamijima
連載その1で紹介した名古屋大学の上山さんや京都大学の原田さんほかが、ヒト試料バンクに冷凍保存されていた尿中の農薬を分析し、『日本人女性における1994年から2011年の間の尿中ネオニコチノイドとジアルキルリン酸濃度の経年レベル』というタイトルの論文をEnviron Sci Technol誌に発表しました。
論文によると尿の採取年ごとの検体数は表1のようで、45から75歳で職業的被曝のない成人女性のものです。男性データがないのは、経年比較可能な試料がなかっためということです。
表1 採取年別の検体数と採取年齢
年度 1994年 2000 2003 2009 2011
検体数 20 20 20 17 18
年齢 53.3±5.7 52.6±5.0 62.6±4.3 64.0±8.1 68.1±5.2
分析対象となったのは、表2に示す7種のネオニコチノイドと有機リン剤の4種の代謝物(これらは、フェニトロチオン、ダイジノン、マラチオン、アセフェートほかに由来する)です。
ネオニコチノイドで、検出率が高いのは、ジノテフラン、チアメトキサムで、2011年の最大検出値は、前者が21.4後者が7.25μg/gCrでした。アセタミプリドが低いのは、体内で代謝され、デスメチル体となり、分析にかからないせいでしょうか。
ネオニコ系の出荷総量は、1994年99トン以後、2000年174、03年253、09年409、11年395トンと増えているためか、検出値も増大傾向にあります。(下図参照)
図 尿中のネオニコチノイド濃度と出荷量の推移
名古屋大学らの研究によると、
尿中のネオニコ濃度(右座標の範囲図)は、
ネオニコチノイド7種の出荷量(左座標の曲線)の
増大と関連性があることがわかりました。
一方、有機リン剤総出荷量は94年9035→11年2465トンと年々減少していますが、表にある最大値の増減は代謝物によってまちまちで、ネオニコよりも多く検出されているケースもあります。これは、農薬以外の家庭用殺虫剤やプラスチック添加剤など身の回で使用される有機リンの影響があるのかもしれません。神経系に作用する両成分を同時に摂取することもあり、尿中の検出は要注意です。
表2 年度別の尿中農薬等の検出率*と最大検出値(単位:μg/gCr=クレアチニン)
年度 1994 2000 2003 2009 2011
農薬成分 最大値 検出率 最大値 検出率 最大値 検出率 最大値 検出率 最大値 検出率
アセタミプリド − 0 0.03 5 0.08 10 0.20 30 0.03 10
イミダクロプリド 1.53 10 0.55 20 0.56 10 3.84 50 2.46 40
クロチアニジン − 0 − 0 − 0 12.50 5 1.67 10
ジノテフラン − 0 − 0 5.9 14 16.0 50 21.4 70
チアクロプリド − 0 − 0 3.09 10 2.64 10 1.44 30
チアメトキサム − 0 0.52 40 1.68 50 2.57 80 7.25 80
ニテンピラム − 0 − 0 0.15 10 0.40 10 0.82 30
DMP** 149.9 291.1 96.1 114.1 36.2
DMTP** 156.7 137.5 208.6 219.1 44.3
DEP** 71.4 124.3 26.3 163.0 160.0
DETP** 11.2 6.8 15.8 12.8 10.7
*検出率は論文のグラフより読み取った値。**は有機リン剤代謝物。 −は 検出限界以下
DMT: ジメチルリン酸
DMTP: ジメチルチオリン酸
DEP: ジエチルリン酸
DETP: ジエチルチオリン酸
購読希望の方は、〒番号/住所/氏名/電話番号/○月発行○号からと購読希望とかいて、
注文メールをください。
年間購読会費3000円は、最初のてんとう虫情報に同封された振替用紙でお支払いください。
作成:2016-04-29