農薬の毒性・健康被害にもどる

t29508#福島県鏡石町でのカラス大量死は農薬シアノホスが原因#16-03
【関連記事】シアノホス野鳥事件:記事t25904(埼玉県2012年)、記事t26805(横浜市2013年)
  反農薬東京グループ:福島県への問い合わせ
 2015年12月21日、福島県鏡石町の県立岩瀬農業高校周辺でカラスが大量に死んでいるのが見つかったとの報道があり、県に経緯を問い合わせました。以下に、その回答をまとめました。

★86羽が死んでいた
 県中央地方振興局は、学校からの連絡を受け、個体の回収と現地確認等を行いました。その後も、カラスの死体は、22日に64羽、23日に5羽、24日に5羽、25日に1羽の合計86羽が見つかっており。他の鳥はなかったそうです。
 県が実施した鳥インフルエンザの簡易検査(21日と22日の死亡の9体)結果はすべて陰性で、国立環境研究所に送付し遺伝子検査でも、すべて陰性でした。

★農薬シアノホスが検出された
 原因追究のため、県は、福島県衛生研究所で、有機リン系農薬40種の分析調査を実施しました。検査したのは、12月22日に現場から回収されたカラスの胃の内容物(5検体)、死亡個体のそばにあった油揚げ(1検体)で、シアノホス(一般名CYAP)が下記の濃度で検出されました。
      カラス胃の内容物 @51ppm
         同     A750ppm
         同     B150ppm
         同     C190ppm
         同     D450ppm
      油揚げ     51,000ppm=5.1%
★鳥類毒性が強いのが特徴
 シアノホスは、1966年に住友化学が登録した殺虫剤で、サイアミックスという商品名で知られていますが、毒劇法での「毒物」「劇物」の指定もなく、自由に購入できる農薬です。
毒餌には、シアノホスが市販の3%含有粉剤よりも高い、5.1%という高濃度で検出されており、野菜や豆に適用される50%含有の乳剤か、果樹に適用される40%含有の水和剤が、油揚げに混入されたと思われます。この有機リン剤は、鳥類への毒性が特に強いことが知られており、海外では殺鳥剤としての使用があります。

★なくならない農薬による野鳥の死
 農薬による野鳥の大量死事件については、本誌283号で埼玉県や鹿児島県の事例を報告しました。シアノホスについては、埼玉県で2012年11月にカラス3羽、横浜市で、2013年2月にカラスやハクセキレイ、4月にカラス20羽以上が死亡しています(記事t25904記事t26805)。
 今回の事件は、何者かが毒餌として、シアノホスを仕込んだことは明らかですが、県は『捜査に関しては、福島県警察本部にお問い合わせ願います』とし、さらに、同様事件の再発防止については『引き続き農薬の適正使用と、情報の周知徹底を推進して参ります。』としか答えてくれませんでした。
鳥類毒性の強い農薬や衛生害虫用医薬品などは、毒劇法による毒劇指定で、その販売などの規制を強化する必要があります。


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作成:2016-04-29