農薬の毒性・健康被害にもどる

t29601#農薬危害防止運動を前に、農水省・環境省・厚労省・国交省へ要望#16-04
【関連記事】記事t29602記事t29603
      2015年度:記事t28402記事t28501

   反農薬東京グループの2016年度の農薬危害防止運動への要望と質問2015年度の要望・質問と回答

 2015年度の農薬危害防止運動が6月(山口県では5月)から実施されますが、これに先立ち、反農薬東京グループは、3月30日、例年の農水省、厚労省、環境省に加え、無人航空機を所轄することになった国交省あてに、7項目全50件の要望と質問を送りました。
 【1】総括的要望           2件
 【2】農薬による人や野鳥などの危被害 8件
 【3】住宅地通知について       6件
 【4】農薬の空中散布について     16件
 【5】農薬の摂取量を減らすために   8件
 【6】斑点米カメムシ防除とミツバチ被害7件
 【7】その他             3件
その中のいくつかの概要を以下に示します。
★人や野鳥などの被害防止
【関連記事】人の中毒:厚労省人口動態統計科学警察研究所調査農水省調査家庭用品吸入事故。 野鳥大量死魚毒事件
 人の被害について、もっとも件数が多く、毎年、実施要綱で、防止対策がとりあげられているにも拘わらず、危被害の減らない、土壌くん蒸剤クロルピクリンについては、記事t29602を参照ください。
 農薬によるペットや野鳥の毒殺事件や水系汚染による魚毒事件も跡を絶たず、廃棄物防止法違反、動物愛護法違反、鳥獣保護法違反、器物破損容疑などで、警察の捜査が実施されても、加害者が摘発されることは稀れです。そこで、以下のことを要望しました。
 (1)シアノホス(CYAP)のような鳥類毒性の強い農薬は、哺乳類による劇物指定の判
  断基準にあてはまらなくとも、毒劇法規定に準じた取扱いを義務付ける。
 (2)販売禁止農薬、期限切れ農薬の回収を義務づけるよう求めてきたが、農水省は実態の
  把握についても『国において、廃農薬の回収の実施主体、実施回数、回収数量について
  把握等とは考えておりません。』としか回答しない。回収もれのないよう、実態把握を
  行い、回収を義務化を図られたい。このことは、不法投棄による魚毒事件防止にもつな
  がる。
★住宅地での農薬使用や空中散布
【関連記事】青梅市PPV無人航空機
 住宅地通知関連では、東京都青梅市でのPPV対策のアブラムシ駆除農薬散布の問題をとりあげ、不必要な農薬使用をやめることを求めました。
 無人航空機による農薬散布は、今年から、国交大臣に申請し、許可・承認を得ることが、義務付けられましたが、農林水産航空協会の認定機種やオペーレーター認定があれば、協会らが包括申請できるという従来とかわらない状況にあり、これを打破すべく、いくつかの具体的な要望をしました。
 (3)国交省は、農水省が昨年12月に発出したガイドラインの別表2空中散布等の基準にない
  機体による散布の申請には、許可・承認を与えない。
 (4)農水省はいままで「事前周知指導を徹底する」としているが、申請が義務付けられたのを
  機会に、実施主体や都道府県協議会等が散布計画を散布地域だけでなく、HP等で広報す
  るよう義務付ける。
 (5)無人航空機と家屋を含め障害物との距離が30mに満たない場所での農薬散布は、はっきり
  と禁止し、さらに農薬飛散を考慮した緩衝幅は30mより大きくする。
 (6)事故については、当事者まかせの報告書の提出だけでなく、農水省植防防疫課、国交省運
  航安全課のほか、専門家を含めて原因など、科学的な調査を行う。
 (7)国交大臣への申請と許可・承認が必要になったが、申請書には、いままでの機体の事故歴、
  オペレーターの事故歴の記載を義務付け、許可・承認の判断材料とする。
などの要望を行いました。
 また、ドローンについては、散布試験の結果を明らかにした上、その農薬散布の運行基準について、パブコメ意見募集を実施することを求めました。

★農薬の摂取量を減らすために
【関連記事】クロチアニジン:記事t28603記事t29301。グリホサート:記事t28401
 ホウレンソウのアブラムシへの適用拡大で、残留基準を40ppmとされたクロチアニジン(商品名ダントツなど)を、使用しないよう求めたほか、IARCによる発がん性のランクが強化された除草剤グリホサート(ラウンドアップなど)については、残留調査の強化や非農薬系製剤の法的規制をもとめました。

★斑点米カメムシとミツバチ被害
【関連記事】斑点米カメムシ:コメ規格と指定有害動植物。 ミツバチ被害:記事t28805スルホキサフロル

ネオニコチノイドの使用規制については、EUのほか、アメリカ、カナダでも進みつつあります。特にミツバチ、花粉媒介昆虫への影響が懸念されていますが、日本では、蜜源の確保と農薬散布地域からの巣箱の退避が主な対策になっており、農薬使用規制は行われていません。  農薬散布が、ミツバチや花粉媒介昆虫ほかを殺し、生物多様性を損ない、ひいては、授粉作物の生産減につながることは、農業環境技術研究所が、2月4日に公表したプレスリリース、「農作物の花を訪れる昆虫がもたらす豊かな実り−日本の農業における送粉サービスの経済価値を評価−」で、訪花昆虫の経済効果の重要性について報告していることでもわかる(しかも、この研究ではミツバチの寄与が30%であるのに対し、その他の野生のポリネーターの役割が70%であることも指摘されている)。
 (8)斑点米カメムシ類の防除方法として、農薬使用を優先することはやめ、まず、耕種的、
  物理的、生物的防除対策など農薬による化学的防除以外の対策をとることを義務付ける
  べきである。
 (9)農水省は、指定有害動植物について『生産者に対して適時適切な防除に取り組むことを
  求めており、特定の防除方法を強要するものではありません。』としており、防除は、
  必ずしも農薬散布を意味していない。それなら、生物を無差別に殺すことになる農薬散布
  はやめ、斑点米は、生物多様性を生かした水稲栽培と色彩選別機で対処すべきである。
 (10)日本で、未登録のスルホキサフロルは、現在登録申請中だが、アメリカでは、2013年5月
  に一旦登録されながら、ミツバチ毒性が問題となり、2015年11月、EPAは登録を取消し
  た。日本では、ミツバチへの影響試験は、申請者が提出しているにもかかわらず、公表
  されておらず、スルホキサフロルのミツバチへの影響を評価し、その登録の是非について、
  国民が意見をいえないことになる。農水省は、ミツバチ影響試験、天敵昆虫等影響試験、
  鳥類影響試験などの試験成績を開示し、登録の是非について、パブコメ意見募集を実施す
  ることを求める。

  4月26日、農水省・環境省・厚労省から「平成28年度 農薬危害防止運動」の実施についてが公表されました。
        農薬危害防止運動実施要綱ポスター



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作成:2016-04-29