農薬の毒性・健康被害にもどる

t29606#次第に明らかになる農薬人体汚染(その4)三歳児の尿中の農薬濃度#16-04
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【参考サイト】Environmental Research Vol.147,p-89(2016)
    Exposure characterization of three major insecticide lines in urine
        of young children in Japan. neonicotinoids, organophosphates,and pyrethroids
         Aya Osaka, Jun Ueyama, TakaakiKondo, Hiroshi Nomura, Yuka Sugiura, 
         Isao Saito,Kunihiko Nakane, Ayuko Takaishi, Hiroko Ogi, Shinya Wakusawa ,
         Yuki Ito ,Michihiro Kamijima

 名古屋大学の上山さんらの尿中の農薬分析調査は、記事t29101記事t29507で紹介しましたが、いずれも成人を対象としたものでした。
 今回紹介するのは、同じグループのOsakaさんほかによる3歳児を対象とした論文(Env.Res.147巻89頁,2016)です。
 調査地区は、愛知県の2つの近郊都市で、尿の採取は、223人(男児108、女児115)、2012年7-9月(男54と女53)と2013年2月(男54と女62)の2シーズンにわけて実施されました。分析対象は、 表に示す7種のネオニコチノイド、4種の有機リン系代謝物と3種のピレスロイド系代謝物です。
 検出状況をみると。検出率では、ピレスロイド代謝物と有機リン代謝物が約90〜100%に対し、ネオニコチノイドはジノテフランが一番高く57.8%でした。検出濃度の最大値は、有機リンではDMPの230.37μg/L、ネオニコチノイドでは、ジノテフランの62.25μg/L、ピレスロイドでは、DCCAの48.72μg/Lでした。
 論文では、次の指摘がありました。
 ・平均検出値は4種有機リン合計が7種のネオニコ合計より高い。
 ・性差:総ネオニコと4種の有機リン代謝物の平均値に男女差はなかったが、
  3−PBAの平均値は、女児が高い。
 ・季節の影響:総ネオニコチノイド及びDMPのの平均値は、夏が高い。
  3種のピレスロイド代謝物の平均値も夏が高い。
 ・両親が農家、害虫防除業やガーデンセンターで働く子ども(全体の6%))は、
  DMPの平均値が、そうでない子より高い。
 ・しばしば、果物を食べる子ども(全体の90%))のDMPの平均値は、食べない子より高い。
 そのほか、ジノテフランを検出した子どものDMTPや有機リン代謝物合計濃度の方が、
 ジノテフランが検出されない子どもよりも高いことなど、複合汚染に関する指摘もなされています。
 本研究では、農薬が検出された子どもに、通常の健康チェックで毒性症状がみられないとしていますが、チェックの内容が不明ですし、なによりも三歳児という生まれて間もない子どもでの結果だけに、農薬複合汚染が、その後の健康にどのように影響を与えるかが気懸かりです。
 
 表、愛知県における3歳児の尿中農薬検出状況(分析対象:2市の223人)
 成分名          検出率 幾何平均  最大値(クレアチニン補正値)
                 %    μg/L    μg/L (μg/gCr)      
 ネオニコチノイド 79.8* 7種合計4.91nmol/L      *何らかのネオニコが検出された
 アセタミプリド   12.1 個々のネ    2.01 (  1.73)     
 イミダクロプリド 15.2  オニコは   2.52 (  2.82)
 チアクロプリド   0  検出率が   検出限界以下 
 チアメトキサム  25.1 低いため    3.71 (  3.09) 
 クロチアニジン   8.1 幾何平均   8.62 ( 15.19) 
 ジノテフラン    57.8 は、算出  62.25 ( 74.78) 
 ニテンピラム    20.6 しない。    0.98 (  6.43) 
 有機リン代謝物**  4種合計217.56nmol/L      
  DMP     100   14.00    92.41 (229.14) 
  DMTP    95.5  5.24   230.37 (275.89) 
  DEP     99.1  5.32   67.62 ( 71.23) 
  DETP    89.7  0.57   22.52 ( 28.93) 
 ピレスロイド代謝物***                 
  t−CDCA  91.9   0.15   28.15 ( 22.72) 
  DCCA    99.6   0.76   48.72 ( 57.54)  
  3−PBA   100    1.16   25.29 ( 41.62)

 注**:有機リン系農薬とその代謝物
  DMP(ジメチルリン酸):BRP,CVMP、DDVP,DEP,ジメチルビンホス,メビフェンホス,ほか
  DMPとDMTP(ジメチルチオリン酸):クロルピリホスメチル,MEP,MPP,メチルパラチオン,
      マラチオン,メチダチオン,ピリミホスメチル,ジメトエート,ホスメット,ほか
  DEP(ジエチルリン酸) とDETP(ジエチルチオリン酸):クロルピリホス,ダイアジノン.
      エチルパラチオン,イソキサチオン,ホサロン,ほか
 注***:ピレスロイド系農薬とその代謝物
  t-CDCA(トランス-クリサンテマムジカルボン酸):フェノトリン,アレスリン,レスメトリン,
                   テトラメトリン,ほか
  DCCA(ジクロロビニル-ジメチルシクロプロパンカルボン酸):ペルメトリン,シペルメトリン
  3-PBA(フェノキシ安息香酸):シペルメトリン,エトフェンプロックス,フェンバレレート,
                   フェノトリン,デルタメトリン,ペルメトリン,ほか

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作成:2016-05-27