農薬の毒性・健康被害にもどる
t29701#農薬危害防止運動で実施要綱通知〜要望・質問への回答は環境省と厚労省のみ#16-05
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都道府県における2016年度の農薬危害防止運動
【参考サイト】農水省:「平成28年度 農薬危害防止運動」の実施について
農薬危害防止運動実施要綱、ポスター。厚労省通知、環境省通知
都道府県:2016年度の危害防止運動
農水省、環境省、厚労省から、4月26日に「2016年度農薬危害防止運動について」の実施要綱が発出されました。その内容を昨年と比べると、無人航空機による農薬散布の項と養蜂被害防止の項に追加修正が見られた程度で、あとは、マイナーな字句修正で、特筆すべき点はありません。毎年同じような文面の対策をだしているだけでは、危被害をなくすことはできません。
私たちは、記事29601に示した要望・質問をだしているのですが、これに対して、農水省は、実施要綱に反映させるどころか、回答は6月まで、待ってくれという始末。国土交通省からは何の返事もありません。
本稿では、厚労省と環境省から所管事項についての回答概要を示します。
★厚労省の回答から
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IARC(国際がん研究機関)が発がん性ランクを強化したグリホサート(ラウンドアップ)、マラチオン、ダイアジノンの3農薬について、水道水の調査結果を尋ねましたが、平成25年度は以下でした。
・グリホサート(目標値2mg/L) 目標値超過地点数:0 (調査地点数:543)
・ダイアジノン(目標値0.005mg/L)目標値超過地点数:0 (調査地点数:751)
・マラチオン (目標値0.05mg/L)目標値超過地点数:0 (調査地点数:647)
また、グリホサート耐性の遺伝子組換え食品が輸入されていますが、グリホサートの残留実態についての質問には、同省がHPで発表している作物名の記載がないH19-23年の残留データが示され、たとえば、H23年についての調査結果は、国産品はデータがなく、輸入品では、検査数:190、検出数:73、検出率:38.42%、検出範囲:0.01-12ppm、となっているだけ。12ppmが何の作物かも不明です。
さらに、新たに検査を強化してください。との要望には、上記の資料をみろとしか答えませんでした。
MEP(スミチオン)の水道水の監視項目目標値については、記事t29708と同じ対応でした。
★環境省の回答から
・クロルピクリンによる危被害について
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10a 以上の圃場で、クロルピクリン処理を実施している地区では、気中濃度の測定や井戸水等の地下水の汚染状況の調査の実施を義務づけを求めた要望には、『環境省においては、クロルピクリンの気中濃度の測定や地下水の汚染調査については実施しておらず、これを使用者に義務づけることは困難と考えますが、住宅地通知により、住宅地等における農薬使用に際しての遵守事項の指導を行っています。 また、農薬危害防止運動においては、土壌くん蒸剤を使用する場合は、農薬の容器に表示された使用上の注意事項等に従い、施用直後のビニール等での被覆等を確実に行う等の安全確保を徹底すること、また、使用場所、周辺の状況に十分配慮して防除を行うよう指導を徹底することとし、クロルピクリンを含めたくん蒸剤の使用による近隣住民等への健康被害が生じないよう注意喚起を行うこととしています。』との回答。こんなことだから、事故が絶えないのでしょう。
反農薬東京グループから群馬県などクロピク出荷量上位5県への質問と要望
・青梅市内の住宅地域等での梅アブラムシ駆除の農薬散布について
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万一、化学合成農薬を使用する場合は、周辺の大気、水、土壌の環境調査や昆虫や生物への影響や住民の健康影響調査を行い、結果を公表されたいとの要望には、『環境省では、作物残留、土壌残留、水産動植物被害防止及び水質汚濁の 4つの基準を定めており、また、登録後の農薬使用場面においても、実環境中で水産動植物被害防止及び水質汚濁の基準を超過する事態が生じていないかを確認するために農薬の河川モニタリング調査を実施し、環境省HPで結果を公表しています。』公表しています。』とし、住民が触れたり、吸入したりする危険性には無頓着です。
・グリホサート、マラチオン、ダイアジノン水系調査について
回答はダイアジノンのみで、『「引き続き知見の集積に努めるべき物質」として都道府県等が平成 6 年から平成26 年までで計 5,469 箇所の井戸を調査し、その結果を「平成 26 年度 地下水質測定結果」として以下に公表しています。これまでのところ、要監視項目の指針値(0.005mg/L)の超過はみられていません。』
・農薬及び非農薬除草剤グリホサート
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PRTR法の指定物質とするとともに、日本でも販売・使用を規制する法律の制定を求めましたが、回答は下記のようでした。
『指定の見直しについては、化学物質の製造、輸入又は使用の動向や一般環境中での検出状況、新たな有害性情報の蓄積等を勘案し、関係審議会の意見を聴きつつ、必要に応じて行うこととしております。 また、非農耕地用除草剤を農作物等の栽培・管理のために使用したり、それを前提とした販売を行うことについては、農薬取締法で規制されていますが、グリホサートを生活環境において使用したり、そのための販売を規制するための法律を制定することは今のところ考えていません。』
・ミツバチ被害について
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回答は、『環境省では、平成 26 年度から平成 28 年度の 3 カ年の予定で、ネオニコチノイド系農薬等が環境中で野生ハチ等の花粉媒介昆虫に与える影響についての調査を、競争的資金である環境研究総合推進費により支援しています。本調査では他系統薬剤との比較等を行うこととしており、今後の調査結果を注視したいと考えています。』
・環境省の研究事業の公表について
環境省が実施しているネオニコチノイドに関する平成 27 年度の2つの調査報告について、出来るだけ早く、HPで公開するよう求めました。
(a)環境省請負業務である「平成 27 年度農薬の環境影響調査業務報告書」については、『実際の環境中における農薬の濃度及びトンボの幼虫であるヤゴの生息実態の調査を実施しています。昨年度の結果は、環境省HPに本年 5 月に掲載予定です。』
(b)環境研究総合推進費による「ネオニコチノイド農薬による陸域昆虫類に対する影響評価研究」(研究代表者 中牟田潔(千葉大学大学院 園芸学研究科)については、『平成 26 年度から、一部の農薬が環境中で野生のハチ等の花粉媒介昆虫に与える影響についての調査を競争的資金である環境研究総合推進費により支援しています。』として、中間報告(5-1407)のHPのアドレスを示しただけ。このような資料はすでに、眼を通しており、単なる概要報告にすぎないので、より詳しい内容の報告を求めたのですが。
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作成:2016-05-27