食品汚染・残留農薬にもどる

t29708#水道水の農薬目標値〜厚労省水道課は反省の色なし#16-05
【関連記事】記事t26105記事t26205

【参考サイト】厚労省:2015/09ののパブコメ 水道水中における農薬類の目標値見直しについて
              見直し案当グループの意見見直し案及びパブコメ結果とその対応について(16/02/17)

 4月1日から、水道法による水道水の水質管理目標設定項目である農薬の目標値のいくつかが緩和されました。農薬については、水道基準はなく、総農薬方式という管理目標があり、個々の農薬がその目標値を超えたからといって、ただちに、給水制限となるわけではありません。 私たちは、水道の農薬規制をEUの個別農薬で100ng/L、総農薬で500ng/L以下にするよう求めていますが、実現しません。そんな中、昨年9月、下表のような農薬の目標値の改定が提案され、パブコメ意見募集を経て、原案通り通知されました。
    表 農薬目標値の改定値
   農薬名        旧目標値   新目標値
   アシュラム       0.2mg/L     0.9mg/L
   ジクロベニル      0.01      0.03
   ダイアジノン      0.005      0.003
   トリシクラゾール    0.08           0.1
   フェニトロチオン    0.003          0.01
   マラチオン       0.05           0.7
★パブコメ意見で反対したが
   厚労省への要望:水道水質の農薬フェニトロチオンの目標値についての要望(3/11)要望と回答(4/04)

 農薬の目標値は、体重53kgの成人の一日の水摂取量を2Lと仮定し、食品安全委員会が策定したADIの10%を超えないように設定されるのが通常の理論的算出方法ですが、私たちは、各農薬について提案値は高すぎると反対しました。
 アシュラムとジクロベニル、マラソンについては、非遺伝毒性メカニズムとされているが、動物実験で、発がん性が認められること。ダイアジノンとトリシクラゾール、マラソンは、食品安全委員会の設定したADIよりも低い値がEUなどで設定されていることなどがその理由です。
 フェニトロチオン(MEP、商品名スミチオン)については、その残留基準は、169食品について設定されており、食品だけで、理論最大摂取量/ADI比が、小児では242%となり、水道目標値が0.01mg/Lでは、対ADI比の10%以下にするという目安を大幅に超えてしまうことを指摘して、緩和に反対しましたが、厚労省の回答は、食品安全委員会の農薬評価書をあげ、食品より摂取される推定摂取量はADIの80%を超えない(国民平均において26.8%、一番評価が厳しくなる小児においても53.3%)から、安全管理上妥当であるというのです。
 そもそも食安委の推定量は、残留基準値より低い実残留データを基にした値で、対ADI比が低くなるのは、計算のごまかしにすぎません。それなら、水道でのMEPの実測データを目標値にすればいいのです。

★環境省指針と整合性がとれないMEP
【関連記事】記事t23103
【参考サイト】環境省:水質汚濁に係る環境基準にある要監視項目及び指針値(人の健康の保護に係る項目)

 厚労省水道課は2013年に、農薬目標値の大幅見直しを実施しましたが(記事t26105参照)、この時の目標値等の通知には、80件もの誤りがあり、私たちの指摘で初めて気づき、正誤表をだすというお粗末な対応をとったという経緯があります(記事t26205参照)。

 MEPの目標値は、明らかに誤りで、環境省*の水質汚濁公共用水域及び地下水についての水質汚濁に係る要監視項目指針値0.003mg/L以下との整合性も取れません。新指針をただちに撤回すべきです。
   注*:2010年、環境省が、ゴルフ場使用農薬の暫定指導指針値を0.03mg/L→0.1mg/L
    に緩和する提案(ゴルフ場の排水指針値は水道目標の10倍にあたるよう設定される)
    をした際、私たちは、残留基準を基にした食品由来の理論最大摂取量がADIの80%
    を大きく超え、緩和により、いっそう、水からの摂取を10%以下にすることが困難と
    なるとし、同省案の0.1mg/Lを撤回させた。

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作成:2016-07-29