農薬の毒性・健康被害にもどる
t29805#次第に明らかになる農薬人体汚染 (その5)花卉栽培者の検出値が高かった#16-06
【関連記事】t27804、その1、その2、その3、その4
【参考サイト】日本産業衛生学会:H27年度東海地方会学会プログラム
バイオモニタリング手法を用いたネオニコチノイド系殺虫剤の曝露評価
○上山純(名古屋大学)、末永隆次郎(久留米大学)、永美大志(佐久総合病院)、
夏川周介(佐久総合病院)、柴田英治(愛知医科大学)、近藤高明(名古屋大学)、
上島通浩(名古屋市立大学)、斎藤勲(東海コープ)
記事t29606などで、名古屋大学の上山さんらの尿中の農薬分析調査に関する報告を紹介しましたが、昨年秋に開催された日本産業衛生学会東海地方会で、「バイオモニタリング手法を用いたネオニコチノイド系殺虫剤の曝露評価」と題する発表を行われたので、その概要を示します。
上山さんらは、記事t27804で紹介した秋田県の農業従事者と一般人の尿中ネオニコチ7種の分析で、「夏期において一般健常成人群に比べて農業従事者群で有意に高値を示した農薬は7成分であったが、農業従事者群の夏期(繁忙期)および冬期(閑散期)におけるこれらの尿中濃度に差がほとんど検出されなかった。」としていました。
今回の報告では、ネオニコの職業的曝露を評価するための予備的調査として、ネオニコを散布する機会のある花卉栽培者、殺虫剤を散布するPCO従事者(ペストコントロールオペレーター)と職業的に使用しない食品配送業者の3群(すべて男性)が対象とされました。7種はアセタミプリドとその代謝物であるデスメチル体、イミダクロプリド、クロチアニジン、ジノテフラン、チアクロプリド、チアメトキサムです。下表に調査結果を示します。
表 職業別の尿中ネオニコチノイド検出値
採取者の職業 花卉栽培者 PCO従事者 食品配送業者
人数 61 50 51
年齢 48.2±12.7 38.4±12.2 43.2±8.4
採取地域 日本南西部 日本中部 日本中部
採取年 2014年8月 2014年8月 2008年8月
採取方法 随時スポット尿 早朝スポット尿 早朝スポット尿
全ネオニコ検出値(7種の合計で単位はnmol/g-Cr) * nmolはナノモルの略称
中央値 7.52 1.24 0.46
ジノテフランの場合
最大値 777 78 124 1nmol=0.202μg
尿中の全ネオニコ濃度の中央値は、上表のように 食品配送業≦PCO従事者<花卉栽培者の順でしたが、幅広い個人間差が見られたということです。そのほか、以下の点が指摘されています。
・検出率は3群ともにジノテフランが一番。
・群別では、全ネオニコ、ジノテフラン、チアメトキサム及びアセタミプリドデスメチル体は
花卉栽培者が他群よりも高値であった。
・花卉栽培者の17人が、調査前11日以内にネオニコを使用していたが、使用履歴と尿中ネオニコ
濃度の関係を個別に解析したが、明確な関連は得られなかった。
・PCO従事者群は食品配送業者群と有意な差が見られず、後者で全ネオニコ濃度が高いケースも
あった。これは、前者50人中、ネオニコ使用1人と少なかったためかもしれない。
今後、ネオニコチノイドの曝露経路について、詳細な検討が望まれます。
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作成:2016-08-31