ネオニコチノイド系農薬・斑点米関係にもどる
t29901#ミツバチ被害調査〜大量死の巣箱は1%未満だから、農薬使用規制不要とする農水省(1)被害状況#16-07
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【参考サイト】農水省:蜜蜂被害事例調査(平成25年度〜27年度)の結果及び今後の取組について
概要と報告書、通知28消安第1716号/28生畜第509号
農水省は、国内外で発生しているミツバチ減少について、その原因と対策を講ずべく、2013-15年の3年計画で、ミツバチ被害事例調査を行っていましたが、7月6日にその結果を発表、同時に今後の取組みを提示しました。
ヨーロッパでは、ミツバチ減少の原因のひとつとして、3種のネオニコチノイド系農薬とフィプロニルの種子コート使用が問題となり、2013年12月から全域で使用規制され、現在も続いています。日本では、ネオニコチノイドのクロチアニジン(商品名ダントツ)によるミツバチ被害が2005年、岩手県で発生したものの、農水省はつぎつぎネオニコ系農薬の適用拡大を行い、ミツバチ被害防止には手を拱いてきました。私たちの要求に応じて、本格的に被害実態の調査に重い腰をあげたのは2013年のことです。調査開始とともに、ミツバチ被害はそれまでの年間数件から、50件以上と一気に増えました。
すでに昨年までの調査報告で、斑点米カメムシ防除用の農薬がミツバチに被害を与えることがわかっていました。しかし、その対策として挙げたのは、欧米とは異なり、ネオニコチノイドなどの原因農薬の使用規制でなく、農薬使用者と養蜂者の間の連携を強化し農薬散布情報を共有化する/散布する場合には、ハチの活動時間を避ける/巣箱の退避をおこなうなどの使用上の注意事項を強化しただけでした。また、昨年は、メーカーに対して、製剤包装・容器に蜜蜂被害の軽減のため、農薬使用情報を関係機関と共有する旨を表示することを求めました。これら対策の結果を検証するのが3年目の調査でした。
今号では、全国の被害状況と、農水省が提示した新たな指導方針を紹介します。
★ミツバチ被害調査〜3年間の報告198件
農水省の調査では、養蜂者が巣門前の死虫の顕著な増加や巣箱の働き蜂の減少等の異常を発見、農薬以外の原因が明確ある場合を除き、都道府県に連絡して、畜産部局によるが被害についての聞き取りや被害現場での状況検分が行われます。当該部局はダニや蜂病など農薬以外の原因の有無を調べ、特定できなければ、周辺での農薬使用状況の調査や被害後の蜂群消長の調査に移ります。死虫を採取した場合、FAMIC農薬検査部に送付し、農薬検査がなされます。被害事例はすべて、都道府県が定められた様式で報告書を作成、農水省農薬対策室へ提出されますが、各個の報告書そのものは公開されません。
農水省は『個別の被害事例を特定できるような情報を公にすると、養蜂家と耕種農家のトラブルを懸念し、情報提供に協力を得られないことも想定されることから、都道府県域以上に詳細な発生場所に関する情報は不開示情報とし、調査の個票を含め、公表しない。また、死虫等の分析用試料を採材した場合におけるFAMIC 農薬検査部による分析の結果は、上記の解析に資する目的でのみ使用するものとし、個別の分析結果は同様に不開示情報とする。』としています。このようなデータ隠しは、被害原因の究明には大きな支障となります。
★農薬被害3年で198件〜北海道が46%
【農薬被害発生数】農水省が調査した都道府県別の被害件数を表1に示しました。被害が発生した都道府県数は2013年14、14年22、15年10で、被害件数は2013年69、14年79、15年50で、三年間の合計は198件でした。一番件数が多かったのは北海道で3年間で91件(全国の46%)、ついで、岐阜14、栃木13,福岡9件の順です。
養蜂者の数の順位は表に〇番号で示したようで、長野、和歌山、静岡が上位3県。また、水稲用の有人及び無人ヘリコプターによる空中散布防除面積は北海道が一位の15.3万haで、秋田、山形が10万ha超えで続きますが、いずれも被害順位との関連性はみられません。
表1 農薬によるミツバチ被害の都道府県別件数推移(出典:農水省資料)
2013 14 15年 2013 14 15年 2013 14 15年 2013 14 15年
北海道 35 27 29 東京都 0 0 0 滋賀県 0 0 0 香川県 0 0 0
青森県 4 1 0 E神奈川 0 4 0 京都府 1 1 0 D愛媛県 0 0 0
岩手県 0 1 3 山梨県 0 0 0 大阪府 0 0 0 高知県 0 0 0
宮城県 0 0 0 @長野県 0 0 2 兵庫県 0 2 0 福岡県 3 5 1
秋田県 0 5 0 B静岡県 0 0 0 奈良県 1 0 0 佐賀県 0 3 2
山形県 0 0 0 新潟県 0 1 0 A和歌山 0 1 5 長崎県 0 1 0
G福島県 1 2 0 富山県 0 0 0 鳥取県 0 0 0 熊本県 0 3 1
茨城県 0 1 0 石川県 0 0 0 島根県 1 0 0 大分県 2 4 0
I栃木県 5 8 0 福井県 0 0 0 岡山県 1 0 0 宮崎県 0 1 4
I群馬県 0 2 2 C岐阜県 9 4 1 広島県 2 0 0 H鹿児島 0 0 0
埼玉県 0 0 0 F愛知県 0 0 0 山口県 0 0 0 沖縄県 0 1 0
千葉県 3 1 0 三重県 0 0 0 徳島県 1 0 0 計 69 79 50
〇番号は2015年1月現在のミツバチ飼育戸数の上位10県
【被害規模】1巣箱当たりの死虫数は、1,000〜4000 匹が三年間で111件(約56%)、4001〜10000匹が39件(約20%)で、1万匹を超える被害も、年3〜4件報告されました。
農水省は、ハチ群が維持できないいわゆる「蜂群崩壊症候群」(CCD)は報告されていないとし、大量死のあった巣箱数は、年間2800〜3300で、蜂群の増える夏季の巣箱数が全国合計で約41〜42万箱と仮定し、その1%未満と推定しています。
【発生時期】農水省報告は、ミツバチ被害の発生月をまとめています。それによると、2015年の被害箱数約2800のうち、斑点米カメムシ類の防除時期の7月中旬-9月中旬の発生率が78%となっています。
★2016年度の取組み方針:北海道では散布回数削減を指導
農水省は、ミツバチ被害は小規模(全巣箱数の1%以下)で、アメリカのような大規模な蜂群崩壊は起こっていないとの認識で、ハチの農薬直接被曝を避ければ問題ないという考えを変えません。農薬使用者と養蜂者は散布情報の共有化を徹底する/水稲斑点米カメムシ防除時期(7月〜9月頃)には、特に注意喚起をする、といういままでの方針以外に、夏場の水稲以外に使用された農薬も死虫に検出されたこと、及び、全国的なミツバチの被害の減少にもかかわらず、北海道は、被害が減少しないことから、@都道府県は、水稲以外の作物についても、情報共有等の対策を行うよう通知を発出する。A北海道は、農薬散布回数の削減や、巣箱を退避させることが可能な場所の確保の検討等の対策を推進する、を追加しました。果たして、これで、問題は解決するのでしょうか。
次号予定:ミツバチ死虫に検出された農薬など。
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作成:2016-07-29