ネオニコチノイド系農薬・斑点米関係にもどる
t30003#農薬の水系汚染 (2)ネオニコチノイド〜千葉県、名古屋市、大阪府での汚染状況#16-08
【関連記事】記事t25204、記事t27607、記事t29903、記事t30103、
【参考サイト】日本環境化学会:Top Page、第25回環境化学討論会とプログラム
・エムポアディスクとELISA法を組み合わせた河川水中ネオニコチノイド系
農薬分析方法開発に関する研究 ○亀田豊(千葉工業大学工学部)
・大阪府内水道水源河川におけるネオニコチノイド系殺虫剤の検出特性
○高木総吉、安達史恵、吉田仁、小泉義彦、中島孝江、田中榮次、
足立伸一(大阪府立公衆衛生研究所)
・名古屋市水環境中のネオニコチノイド系農薬および類似化合物の濃度分布
○長谷川瞳, 平生進吾(名古屋市環科セ)
本年6月に新潟市で開催された第25回環境化学討論会で発表されたネオニコチノイド系農薬の水系汚染について、前号では、埼玉県の調査結果を報告しましたが、今号では、千葉県、名古屋市、大阪府での汚染状況を紹介します。
★千葉県内水系20個所でネオニコ検出
【参考サイト】千葉工業大学:、研究者情報にある亀田豊
亀田研究室のHP:Top Page、パッシブサンプリング法
3M;Top Page、3M エムポア ディスク
千葉工業大学の亀田さんは、環境中の微量物質を吸着ディスクを用いるパッシブサンプリング技術で採取し、ELISA法(酵素免疫反応による発色を利用)で分析する測定方法を研究開発し、水系のネオニコチノイド7種の分析に適用しました。
千葉県北西部の16河川と1水路20地点で、2015年11月に採取した水検体中には、すべての地点でいずれかのネオニコチノイド農薬が検出されました。
この分析方法では、通常の化学分析方法にくらべて、検出値が高くでたり、クロチアニジンとジノテフランの分離が完全でないなど、問題点がありましたが、20ng/L以上のネオニコチノイドが以下の地点で見出されました。
@市川市:江戸川(大洲)、真間川(三戸前橋)、A千葉市:花見川(花見川大橋)、都川(日本橋)、B柏市:大津川(宮根橋)、大堀川(北柏橋)、手賀川(手賀曙橋)、利根川(大利根橋)
亀田さんは、次ぎのような指摘をしています。
・柏市付近と松戸市付近ではジノテフランとクロチアニジンの濃度が高く、特産である
ほうれん草、ねぎ畑の存在が影響している可能性が示唆された。
・花見川においては、他の地点では低濃度 であるイミダクロプリドとチアメトキサムが高濃度であった。
この原因として、八千代市におけるトマトやイチゴなどへの農薬使用が推察された。
・水系汚染の影響がネオニコチノイド系農薬の通年測定及び暴露量評価を利用し水生昆虫の
生態リスク評価に関して明らかにする必要がある。
★大阪府の三大水源河川のネオニコ汚染
【参考サイト】大阪府立公衆衛生研究所:
大阪府水道水中微量有機物調査にある2012年農薬類調査、2013年調査結果
大阪府立公衆衛生研究所の高木、吉田さんらは、府内水道水源の農薬汚染調査を継続して実施していますが(記事t26401、記事t27607参照)、2014年8月、15年2月、8月および16 年2月に、3大水源河川である淀川水系、猪名川水系および石川水系について、それぞれ 6 地点合計18地点で採取した結果を発表しました。
【採水地点】@淀川水系:御幸橋(木津川)、御幸橋(宇治川)、宮前橋(桂川)、枚方大橋、 鳥飼大橋、豊里大橋、A猪名川水系:万善橋、北野橋、ゴルフ橋、銀橋、呉服橋、軍行橋、B石川水系:瀧尻橋、諸越橋、新北橋、喜志大橋、おおさと橋、石川橋。
【河川水中のネオニコチノイド検出状況】7種のネオニコチノイドの季節別検出状況は表1のようで、アセタミプリド、チアクロプリド、ニテンピラムはすべて、検出限界以下でしたが、ジノテフランが最大467ng/L、クロチアニジンが最大47、チアメトキサムが最大22、イミダクロプリドが最大14ng/L検出されました。
表1 大阪府水源河川中のネオニコチノイドの検出値 (単位:ng/L=ppt)
農薬名 2014年8月 15年2月 15年8月 16年2月
アセタミプリド < 5.0 < 5.0 < 5.0 < 5.0
イミダクロプリド < 5.0〜14 < 5.0 < 5.0〜12 < 5.0
クロチアニジン < 5.0〜47 < 5.0〜23 < 5.0〜37 < 5.0〜25
ジノテフラン < 5.0〜 257 < 5.0〜73 6.5〜 467 < 5.0〜54
チアクロプリド < 5.0 < 5.0 < 5.0 < 5.0
チアメトキサム < 5.0〜7.5 < 5.0 < 5.0〜22 < 5.0〜5.6
ニテンピラム < 5.0 < 5.0 < 5.0 < 5.0
高木さんらのまとめを以下に示します。
・夏季においてはジノテフランおよびクロチアニジンの検出率が高く、イミダクロプリド
およびチアメトキサムが数地点で検出された。
・冬季においては、夏季同様ジノテフランの検出率が高く、クロチアニジンは数地点、
チアメトキサムが 1 地点において検出された。
・夏季と冬季を比較した場合、夏季の方が検出濃度も高く、検出率も高い結果であった。
しかし、冬季においても検出されたことから、季節に関係なく河川に存在していることが
わかった。また、一部の地点で検出濃度が夏季と同レベルであったことから、正確な
汚染状況を把握するためには1 年を通してモニタリングするだけでなく、水環境における
ネオニコの動態解析が必要であると考えられる。
・検出されたネオニコ系殺虫剤の濃度比は河川により異なっていた。猪名川水系および
石川水系では下流に行くにつれて検出濃度が高くなる傾向であった。淀川水系は合流河川である
木津川、宇治川および桂川では検出濃度は異なっていたが、合流後の淀川においては、検出濃度に
変化は認められず一定濃度で存在しており、これは、周辺での使用状況によるものと考えられた。
・ジノテフランとクロチアニジンの検出率が高いことがわかった。また、冬季においても
検出されていることから、1 年を通してモニタリングする必要がある。
★名古屋市内21個所でネオニコほか検出
【参考サイト】名古屋市:Top Page、名古屋市環境科学調査センター
平成27年度公共用水域及び地下水の水質常時監視結果にある河川・海域・ため池の状況
名古屋市環境科学調査センターの長谷川さんらは、市内水系で、表2に示したネオニコチノイドなどの12物質(ネオニコチノイド6種とニテンピラムの代謝物2、ミツバチ大量死の原因のフィプロニルとエチプロール)の分析調査を実施しました。
河川水10、海水5、溜池水6検体が、2015年7月〜2016年4月に、図のような21地点で、採取されました。その結果は表2に示すようで、全ての検体からネオニコチノイド系農薬が検出されました。
検出率が90%を超えたのは、アセタミプリド、イミダクロプリド、クロチアニジン、ジノテフラン、チアメトキサムで、検出濃度が一番高いのはジノテフラン(水広下池番号21)290ng/L、次はチアメトキサム140ng/L(天白川新島田橋F)でした。河川水8検体と名古屋港の海水5検体に6種のネオニコが見出されたほか、前者のすべてにフィプロニルが、後者のすべてにエチプロールが検出されたのも注目されます。ニテンピラムそのものは検出されませんでしたが、2、3のため池水にその代謝物であるCPFとCPMFが見出されました。
長谷川さんらは、ネオニコチノイドほかが市内の水環境に広く分布しており、郊外地域で濃度が高い傾向があり、田畑や庭、公園などで使用したものが環境中へ放出した結果と考えられるとしています。
図 名古屋市内の採水地点 −省略−
表2 名古屋市内の水系におけるネオニコチノイドほかの検出値 −省略−
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作成:2016-10-28