農薬の毒性・健康被害にもどる

t30106#農村医学会の農薬中毒報告 グリホサート、フェニトロチオン、パラコート・ジクワットがワースト3#16-09
【関連記事】記事t29302
【参考サイト】農水省:H26年度 農薬の使用に伴う事故及び被害の発生状況について
           発生状況推移詳細情報
       日本農村医学会:Top Page農薬中毒部会日本農村医学会雑誌
       永美大志ほか:農薬中毒臨床例全国調査 2010〜12年度 (日農医学誌64巻1号)

 日本農村医学会の[農薬中毒部会]は、全国の研究協力施設、厚生連関連の病院、救急救命センターから農薬中毒の症例について報告を受け、その内容を解析しています。2007〜09年度については、記事t25503で報告しましたが。2010-12年度の3年分の事例のまとめが、長野県佐久総合病院の永美大志さんらにより、農村医学会誌64巻1号14-22(2015)に掲載されましたので、その概要を紹介します。

★2010〜12年の中毒数は137人
 農村医学会関連の121施設に「農薬中毒報告用紙」を送り、回答を依頼、その結果、前の3年間より、75件減の137中毒事例が37施設から集まりました。
次頁の表1〜4に、調査結果を示します(出典はすべて永美論文で、表中 ( )は2007-09年の数値)。
 曝露状況別、診断別の症例数を表1に示しました。2010-12年は、症状診断別では、急性中毒数が一番多く82.4%の117件で、うち自殺が92件を占めました。散布中等が前3年より減り19件、誤飲・誤食が増え18件みられました。遅発神経症例が報告された1例は、有機リン剤DEP(ディプテレックス)の服毒だったということです。
 表2に、曝露状況別、農薬分類別の症例数を示しました。グリホサート(商品名ラウンドアップほか)などのアミノ酸系除草剤が42人、MEP(フェニトロチオン、商品名スミチオンほか)などの有機リン剤が35件、パラコート・ジクワット(商品名プリグロックスほか)などのビピリジウム系除草剤が12件の順でした。これら3種は前3年よりも件数が減っていますが、土壌くん蒸剤だけが、6件増えて8件ありました。
症例報告の多い農薬は、表3のように、グリホサート30件をトップに、MEP18,パラコート・ジクワット12、グルホシネート10、マラチオン8で、前3年のアセフェートにかわりに、クロルピクリンが6件(同一環境曝露事件で3件の被害例あり)みられました。
 論文の著者らは、件数は多くありませんが、神経毒性作用のない殺ダニ剤トルフェンピラド(ハチハチ)やクロルフェナピル(コテツ)でも死者がみられることや、石灰硫黄合剤による化学熱症にも注目しています。
 自殺に使われた成分別の件数は表4のようで、3年間の死亡例は23あり、うち8件が除草剤パラコート系、3件が有機リンMEPでした。著者らは、パラコート系の除草剤の死亡率がまだ、90%近くあることに懸念を示しています。
 厚労省人口動態統計では、農薬による死者数は、年間300人台で(記事t28803)、農村医学会の調査は死者数が年間平均で、その2%程度でしかないことを考えると、中毒者の調査も、農村医学会で把握しているのは、実態のごく一部だと考えられます。
   表1 2010〜12年の曝露状況別、診断別の症例数の分布 −省略−
   表2 2010〜12年の曝露状況別、農薬別の症例数の分布 −省略−
   表3 2010〜12年の症例報告の多かった農薬成分と症例数−省略−
   表4 2010〜12年の自殺症例の多かった農薬成分の転帰数−省略−


購読希望の方は、〒番号/住所/氏名/電話番号/○月発行○号からと購読希望とかいて、 注文メールをください。
年間購読会費3000円は、最初のてんとう虫情報に同封された振替用紙でお支払いください。
作成:2016-09-29