行政・業界の動きにもどる
t30201#農薬登録申請に関する農取法施行規則や通知の改定でパブコメ〜原体の同等性確認強化が目的というが#16-10
【関連記事】記事t27101(2014年の改定パブコメ)
【参考サイト】農水省;農業資材審議会にある第15回農薬分科会 (2015年11月4日)の配付資料、議事概要、議事録
同分科会第1回検査法部会(2015年12月22日)の配付資料、議事録、議事概要
同分科会第2回検査法部会(2016年3月29日)の配付資料、議事録、議事概要
農水省は9月、農薬登録に関して、農薬取締法の施行規則と関連通知の一部改定案を提出し、パブコメ意見を募集しました。
農薬取締法では、登録は製剤(有効成分に補助剤などを加えたもの)ごとになされます。必要な試験成績が整っており、登録保留基準がクリアされておれば、農林水産大臣がそれを登録・公告するというわけです。今回の改定は、製剤でなく、有効成分を含む原体に関するもので、「原体」とあった用語は、「農薬原体」となり、『有効成分と、その製造の過程において使用され、又は生成された成分との混合物であって、農薬の原料となるものをいう』とされました。試験内容の見直し目的は、原体の製造法や、原体中の有効成分や不純物の組成等を明確にしょうというもので、昨年11月に農業資材審議会農薬分科会に設置された検査法部会での、農薬原体の成分管理についての論議をまとめた「農薬原体の成分規格の設定に用いる試験成績について」という報告がベースになっています。
★改定内容について
【参考サイト】農水省:農薬取締法施行規則等の一部改正案に関する意見・情報の募集について
・概要、省令案の新旧対照表、
・「農薬の登録申請に係る試験成績について」の新旧対照表、
・「「農薬の登録申請に係る試験成績について」の運用について」の新旧対照表
農薬登録については、2014年4月からOECDの主張を取り入れた改定が行われましたが(記事t27101参照)、今回の見直しも欧米の意向が如実にでています。
日本の行政も業界も、いままで、農薬は世界一厳しい毒性評価が実施されており、適正に使用すれば、人の健康や環境・生態系に対する安全性に問題はないと、繰り返し主張してきました。しかし、改定案をみて、それが科学的に根拠のないものであったことを知り、驚きを禁じ得ません。原体の製造段階の同等性や、製造された原体と毒性試験に用いた原体の同等性の証明すら、きちんとなされていなかったのです。そのため、以下のような内容の改定が余儀なくされたと思われます。
【施行規則改定】申請書様式に、原体製造方法、製造場の名称及び所在地、成分の種類及び含有量を記すことが明文化された。
官報(平成28年10月31日本紙第6889号 農林水産省令第七十一号でこの改定省令が発令されました。
【登録申請に係る試験成績についての通知改定】「原体」がすべて「農薬原体」とされたほか、提出すべき試験成績に「農薬原体の組成に関する試験成績」が追加された。具体的項目は以下である。
・農薬原体中の成分の種類及びその含有量 ・農薬原体の製造方法
・農薬原体に含有される不純物及びその由来 ・農薬原体の組成分析
・農薬原体中の含有量の上限値、下限値の設定 ・添加物及び不純物の毒性
・農薬原体の同等性 ・農薬原体の分析法
「有効成分の性状、安定性、分解性等に関する試験成績」を作成する際の指針について、試験方法や報告事項が見直された。
【同運用についての通知改定】「原体」→「農薬原体」となったほか、加水分解性と水中光分解性に関する試験については、試験の必要のない場合が明文化された。
【改定事項の実施について】2017年4月1日(予定)以降の登録申請に適用となっている。既存農薬についての実施は適用任意。
★パブコメ意見として
私たちは、農薬中の不純物の含有量を農薬取締法の「公定規格」とするよう、また、
原体純度や不純物や補助成分組成などを開示するよういままでも求めてきましたが、なかなか意見が受け容れられません。以下にパブコメ意見を紹介します。
反農薬東京グループ:パブコメ意見
農水省:募集結果について(10/31公表)
結果概要、御意見とそれに対する考え方、新旧対照表
★不純物、補助成分の開示が不可欠
一見、農薬の登録申請の内容を厳しくした案のようですが、今回の見直し内容にある事項が開示されないならば、原体の同等性について、国民は判断できません。
食品安全委員会の農薬評価書でも、農薬の純度や不純物、補助成分は明らかにされてこなかった事実をみると、もし企業秘密として、申請者が開示しないなら、国の手で、同等性を確認するため、市販の製剤を分析し、不純物、補助成分の内容を明らかにしてもらう必要があります。さらに、このような企業秘密の壁に加え、私たちは、本来製剤ごとに必要な試験成績の提出を簡素化し、登録を容易にしようとする農薬業界の動きにも注意を払わねばなりません。
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作成:2016-10-28、更新:2016-11-02