農薬の毒性・環境汚染にもどる

t30202#パンゾール(オルソ剤)の危険性を知らせず配布した市に賠償責任判決〜福山市が浸水被害後の消毒に安易な指導#16-10
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      記事t17206t17607記事t21009記事t21008(クレゾール)
【参考サイト】医薬品医療機器総合機構パンゾール(オルトジクロロベンゼン72.5%、クレゾール7.5%)と
                   医薬品回収の概要(2009/04/22))

 異常気象がのせいか、各地で、川の氾濫などによる浸水被害の報道が目につきます。床上、床下が浸水した場合、水が引いてから衛生上の観点から薬剤を使って消毒するのが普通です。
 旧伝染病予防法時代に使われた毒性や刺激性の強い消毒剤が未だに使用される場合があります。最近、浸水後、保健所がもってきた殺菌殺虫消毒剤「オルソ剤(商品名パンゾール)」を使用して、さまざまな健康被害を受けた人が原告となって裁判を起こし、被告の市に損害賠償を命じるという判決がでました。
 原告は、2008年8月に広島県を襲った集中豪雨で、経営している店舗(お好み焼き)が浸水被害を受けました。同日、市の保健所の職員が店舗を訪れ、消毒用としてオルソ剤(商品名パンゾール)と逆性石けんが入った瓶2本と説明書を手渡したとのことです。  渡されたパンゾールは、有機塩素系のオルソジクロロベンゼンが72.5%、クレゾール7.5%、残りが有機溶剤と界面活性剤ほかという製品で、すさまじい臭気がします。
 適用は便所のウジ殺し・殺菌・消毒や下水や塵芥その他の不潔場所の殺虫・殺菌・消毒、電車や停車場その他公衆集会場等の環境消毒になっており、食品を扱う店舗内で使用するようなものではありません。
 原告は、8月29日、20mlのパンゾールを2Lの水で希釈して店舗内に少なくとも2回散布しました。翌30日、原告が店へ行くと薬剤の臭いが充満しており、換気しても変わらず、次第に喉や皮膚に痛みを感じるようになり、気分が悪くなったということです。
 31日、保健所職員2名がふき取り作業に訪れ、原告の家族も一緒にふき取り作業を行いました。9月になって原告は、接触皮膚炎、急性咽喉頭炎、気管支炎などになり、投薬治療を受けました。その後も、急性気管支炎、気管支ぜんそくなどと医者に通い続け、2012年、慢性閉塞性肺疾患と診断され、塩化ビニル製床材にパンゾールを撒いたことにより発生した塩化水素による障害も疑われ、化学物質過敏症も発症していると診断されました。
 市の保健所職員は、原告に対して十分な注意を与えず、説明書にも薬剤の危険性や有害性の説明もなく、マスク等保護具着用の説明もなかったとのことです。
 2012年、原告は市を被告として約1000万円の損害賠償請求の裁判を起こしました。2016年9月、広島地裁福山支部は、原告の症状はパンゾールを店舗に散布したことによって生じたとし、原告の訴えを一部認め、市に約51万円の支払いを命じました。しかし、原告が訴えていた化学物質過敏症については認めませんでした。
 オルトジクロロベンゼンやクレゾールなどという危険な薬剤をその危険性や防護方法を知らせることなく、漫然と手渡した市の責任は問われましたが、一度の被ばくでずっと具合が悪く、化学物質過敏症まで発症してしまった原告に対して賠償金額はあまりにも少ないのではないかと思われます。
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作成:2017-01-30