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t30504#農薬登録制度に関する省令等の見直しは原案どおり〜申請内容の公表は、農薬メーカーの権利や利益を害すると#17-01
【関連記事】記事t30201
【参考サイト】農水省:農薬取締法施行規則等の一部改正案に関する意見・情報の募集について
・概要、省令案の新旧対照表、
・「農薬の登録申請に係る試験成績について」の新旧対照表、
・「農薬の登録申請に係る試験成績について」の運用について」の新旧対照表
反農薬東京グループのパブコメ意見と農水省の結果概要と回答
農水省は、昨年9-10月、農薬登録申請に係る試験成績について、その内容や届出形式をOECD方式に適合するよう改定提案を行い、パブコメ意見を募集しました(記事t30201参照)。この提案で、いままで、世界一厳しいと言ってきた日本の登録制度は、使用された農薬原体と製剤中の原体の同一性すら、科学的に立証されていなかったことが明らかになり、私たちは、驚きを禁じえませんでした。
パブコメでは、私たちの主張を含め3件の意見があり、10月31日に同省の回答が示されるとともに、同日、ほぼ原案通りに改定された省令が官報で告知されました。
私たちは、パブコメの中で、試験成績をいくら厳密にしても、その内容が開示されねば意味がないとして、農薬中の不純物の含有量を農薬取締法の「公定規格」とするよう、また、 原体純度や不純物や補助成分組成などを開示するよう求めました。
農水省の回答を以下に示します。
★何がなんでも、知らしむべからず
私たちの意見は『農薬に関する情報は出来る限り開示すべきである。開示内容を申請者の意向に合わせるのではなく、農薬摂取や被曝の影響を受ける国民の知る権利を優先させねばならない。特に、原体の純度、不純物や製剤の補助成分を秘密にする理由はない。』です。
これに対して、農水省は『農林水産大臣は、農薬取締法上、申請日に提出された毒性試験成績等に基づき、評価を行い、農薬の使用による人の健康への影響がないと、判断できる場合に、農薬の登録をしています。このため、農薬原体の純度、不純物や製剤の補助成分等の情報を開示すると否とにかかわらず、人の健康は保護されているといえます。』と大見得をきりましたが、その実は、『公にすることにより、他者による製造が容易になる等、申請者の権利、競争上の地位その他の正当な利益を害するおそれがある情報であり、情報公開法第5条第2号イに該当することから、情報公開法のルールにどおり、公表しません。』にあります。
農水省は『農薬の製造に用いられる農薬原体については、有効成分の含有量の下限値(特に必要な場合には、異性体の含有量の上限値又は下限値を含む)及び考慮すべき毒性を有する不純物の含有量の上限値を、農薬取締法第14条第3項の検査方法を定める告示において定めて、公表します。』としかいいません。
農薬成分は他者が分析すればわかります。申請された毒性データが盗用かどうかは、調べればすぐわかります。メーカーが自己利益を守りたいなら、特許化やノーハウ化を選択すればいいのです。
にも、かかわらず、市販される農薬製剤は、すべて、国が定めたとおりであるから、国民は疑義を挟むことまかりならぬとして、情報公開しないのは、とても、納得できません。
『今回の改正は、農業資材審議会農薬分科会検査法部会の議論を踏まえ、登録時に農薬原体に成分規格を定め、市販される農薬の製造に用いられる農薬原体の組成が成分規格の範囲に収まるよう管理することにより、農薬の安全性を確保するためのものです。一般的に農薬原体の製造方法を変更しなければ、農薬原体の組成が一定の範囲に収まると考えられることから、(成分規格を定めて農薬原体の組成を管理する場合と比べれば劣るものの)一定の水準の安全性は確保されるものと考えています。』、と農水省はいいますが、ラウンドアップなどグリホサート系の除草剤は、原体成分よりも、補助成分の界面活性剤ポリオキシエチレンアミンの急性毒性が強いことが知られており、製剤中の補助成分を無視した上、毒性・残留性試験など、登録申請に際して提出された試験成績の詳細を不開示にして、安全が確保されるとはよく言えるものです。
★有害成分を規制する公定規格は不要と
農薬取締法第一条の三には、農薬の種類ごとに『含有すべき有効成分の量、含有を許される有害成分の最大量その他必要な事項についての規格(以下「公定規格」という)を定めることができる』という条文がありますが、同規格が、いままでに、設定されていない理由を尋ねました。
回答は『農薬の銘柄ごとの品質の差を少なくし、その水準を向上させることを目的として、昭和26年に制度が設けられました。しかし、昭和20年代後半から、それまでの無機化合物に代わって、有機化合物を有効成分とする農薬が次々に開発され主流となり、その後の科学技術の向上に伴い、農薬の種類が多種多様化するとともに、個々の農薬の品質向上が図られてきました。
このため、@公定規格を設定することにより、農薬の品質の確保及び向上を図るという目的の意義が薄れたこと、A公定規格を設定することにより、むしろ科学技術の向上に伴う品質の改善を妨げるおそれがあったこと、B公定規格を設定しなくとも、登録時に農薬の品質の検査を行うことにより、その品質を確保することができることから、現在まで、公定規格を設定したことはありません。』と、条文が農薬の品質保証に役立たず、有名無実化していることを自認し、公定規格を設定しないことへの居直り発言をしています。
いままで、メーカーが安全性をなおざりにして、多種多様の合成農薬を開発し、急性毒性で多くの農民を中毒死に追いやり、POPs系農薬や不純物としてのダイオキシン類が食品中に残留して私たちの体内に検出されるようになり、魚や野鳥や昆虫など環境中の生き物を殺し、生物多様性の危機を生み出し、いまや、有機リン・カーバメート、ネオニコチノイド、ピレスロイドなどが人の脳・神経系をおかす恐れが警告される事態になっています。
公定規格による法規制がないことは、たとえば、農薬中のダイオキシン類の含有量を報告させているものの、製剤ごとの含有量を公表しないという農水省のメーカーサイドに立った姿勢にも反映されています。
★情報公開なくして安全なし
農水省の省令等の改定は、表向きは、農薬原体の同等性の確認ですが、その背景には、ジェネリック農薬の拡大につながる農薬登録の簡素化にあるように思えます。
環境中にばらかれ、食品から摂取する農薬の製剤組成や毒性データなどは、影響を受けるすべての人が知るべきことで、決して、メーカーが秘密として守ることではありません。
私たちは、住宅地通知の義務規定化/国による使用者免許制度導入/使用規制を含む再評価制度の導入などの実現等をも求めましたが、農水省の回答は、「今後の参考にする」だけでした。
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作成:2017-02-28