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t30602#パブコメ意見募集中〜農薬の登録申請試験に関する通知改訂は生物多様性保持に逆行#17-02
【関連記事】記事t19603記事t30504
【参考サイト】農水省:農薬登録制度に関する懇談会の頁
       FAMIC:Top Page農薬登録申請の頁にある
             農薬の登録申請に係る試験成績について(12農産第8147号農産園芸局長通知)
             「農薬の登録申請に係る試験成績について」の運用について(13生産第3986号生産資材課長通知 )
       環境省:農薬登録保留基準の頁

 農薬の登録申請時に提出する試験成績については、2000年に発出の局長通知12農産第8147号と、2001年の課長通知13生産第3986号があり、試験内容の変更が、これら通知の改訂によりなされてきました。本誌302及び305号で述べた農薬原体の成分規格に関する農薬取締法施行規則及び両通知の改訂につづき、3件の改訂案が相次いで示され、パブコメ意見募集が実施されつつあります。それらの概要と主たる問題点を紹介します。

★毒性試験に関する通知改訂−2月28日募集締切
【参考サイト】農水省のパブコメ:
      農薬の登録申請に係る試験成績について12農産第8147号と13生産第3986号の一部改正案概要

 以下の3点の改訂が提案されました。
【生体機能への影響に関する試験】
 現行通知では、『被検物質の急性毒性作用を薬理学的に解析して、急性中毒症発症の可能性と急性中毒症の特徴を明らかにし、急性中毒症の機序と処置法を考察する上で有益な情報を得る 』として、いくつかの動物実験データの提出が求められています。改訂では「解毒方法又は救命処置方法に関する試験成績」と名称を変え、どういう試験をするかの基本設計は削除され、試験提出は、毒劇法による毒物又は劇物に相当する、急性毒性の強い農薬に限ること、となりました。
 急性毒性による中毒者や死者が多いのは、毒劇物だけではありません。MEPやグリホサートなどをあげるまでもなく、毒劇指定のない農薬による中毒・死亡事例も数多くあります。また、急性中毒の後遺症、化学物質過敏症の発症のメカニズムも不明で、治療法もありません。さらには、複合製剤や製剤の補助成分でも死亡する例がありますから、毒劇指定の物質だけが問題なのではないことに留意すべきです。
 農水省は、『可能な限り動物実験に供される動物の数を少なくするという観点からも、当該試験成績の提出を求める農薬を絞ることが適当である。』としていますが、多くの生き物を犠牲にする毒性試験をせねばならないような農薬の開発は出来る限り、細菌や生体細胞などを用いた試験に置き換えるようにすべきです。いまでも、実験動物とヒトとの種差を10、個体差を10としているのに何の根拠もありません。

【水中動態に関する試験】
 農薬が水中での光分解により、どのような分解経路をたどり、どのような化学物質に変化するかの情報を得るために水中光分解動態試験が義務づけられています。使用する水は、緩衝液(酸性度や溶存酸素量などを調整した水)と自然水でしたが、水田以外で使用する農薬については、緩衝液試験は不要になりました。
 このほかに、加水分解動態試験も緩衝水で実施されていますが、自然水中では、微生物や様々な有機物,無機物が存在し、農薬の分解に関与します。単一の農薬だけでなく、複数の農薬が存在する場合もあり、これらの水中動態がどうなるかの試験も必要でしょう。また、水田以外の畑地で多用される除草剤や土壌処理剤が光の届かない地下水中でどのような挙動をとるのかも気になるところです。

【水産動植物への影響に関する試験成績】
 水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準を決めるための試験ですが、現行で必須なのは、魚類急性毒性試験、ミジンコ類急性遊泳阻害試験及び藻類生長阻害試験の3つです。今回の改訂では、あらたに、原体や製剤を用いたユスリカによる幼虫急性遊泳阻害試験が必須になりました。これは、従来のオオミジンコ類よりも感受性の高い種であるユスリカが、次節で述べるように日本の水環境への影響を評価するのに適切だということになったからです。

 反農薬東京グループ:パブコメ意見(2月27日提出)

★水産動植物の種差を考慮した試験
【関係記事】記事t21708記事t25204記事t27905記事t28905
【参考サイト】横山淳史さんのコガタシマトビケラを用いた評価法:
        農業環境技術研究所研究成果情報 平成19年度 (第24集) より
        コガタシマトビケラ1齢幼虫を用いた農薬の急性毒性試験法マニュアルマニュアルDLサイト
       環境省;農薬小委員会の頁第50 回農薬小委員会資料 にある
        水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準の設定における種の感受性差の取扱いについて

 農業環境技術研究所の横山さんらは、日本の河川において重要な昆虫コガタシマトビケラを用いて、農薬の影響研究を行い、ネオニコチノイド系殺虫剤では、急性毒性がミジンコ類と比べ、1000〜10万倍も高いことを報告し、2007年度には、試験方法のマニュアルも公表していました(記事t25204参照)。
 また、国立環境研究所の五箇さんらは、試験に用いるオオミジンコは、外国種で日本の水系には適さないとしていました。
 2016年3月に開催された環境省の第50 回中央環境審議会土壌農薬部会農薬小委員会では、検討資料「環境大臣が定める水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準の設定における種の感受性差の取扱いについて」にあるように、試験する種差の見直しが論議され、オオミジンコよりも感受性の高いユスリカによる試験を追加することが決まりました。その中で、特に、ミジンコより1000倍程度感受性の高いネオニコチノイド系農薬などに対する毒性評価が問題になり、1 年以内にユスリカのデータを申請者に求められることになっています。
 同省の「農薬水域生態リスクの新たな評価手法確立事業(平成23〜26 年度)」で得られた、ネオニコチノイド系農薬の急性毒性濃度の実測値の種差を下表に示します。
    表 ネオニコ系農薬の水生生物別の毒性の比率
     (オオミジンコの急性毒性値を1とした場合)
   水産生物種      最小比 最大比   平均比
   ユスリカ       0.00038 0.00101  0.00062
   コガタシマトビケラ   0.00001  0.00006    0.00003
   ヌマエビ・ヌカエビ   0.00028  0.00030    0.00029
   ヨコエビ          0.00012  0.00038    0.00022
 ユスリカがオオミジンコの990から2600倍、コガタシマトビケラが1万7000から10万倍影響を受けやすいことがわかりますが、試験に採用されたのは、トビケラでなくユスリカだったのはなぜでしょうか。せっかく、マニュアルまで作成した農業環境技術研究所の努力が無になりました。
 なお、クロチアニジンの水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準は、オオミジンコの試験での影響濃度390000μg/L でなく、ユスリカのデータ28μg/L を採用し、不確実係数10 として、2.8μg/Lと設定されていますが、より感受性の高いトビケラ類で得られた影響濃度4.44μg/L(保留基準は0.44μg/L相当)は採用されませんでした。

★後発農薬に関する通知改訂−3月16日募集締切
【参考サイト】農水省;登録申請時に提出すべき試験成績の代替関係の通知改正案に関する意見・情報の募集概要

 後発農薬の原体試験の免除に関するものです。 登録を受けてから15年以上が経過した先発農薬と同一の有効成分を含む後発農薬の登録申請においては、農薬原体の同一性が認められれば、動物代謝、植物代謝、家畜代謝、土壌中動態、水中動態、有効成分の性状・安定性・分解性等(土壌吸着性、加水分解性、水中光分解性及び生物濃縮性に関するものに限る。)、環境中予測濃度算定、農作物・家畜・土壌への残留性に関する試験は、試験成績代替書での提出で代替することができることになるという改訂案です。
 原体の同一性確認のためには、原体純度や不純物ごとの含有量が開示されることが必要です。また、製剤には様々な化学物質が添加されていますから、それらが人や環境に及ぼす影響を判断するには、補助成分ごとの含有量の公表も前提になります。その上で、代替書の内容が妥当かどうかの判断には、国民による公開審査が必要です。

★土壌残留試験に関する通知改訂−3月18日募集締切
【関連記事】記事t27605(2014年の圃場試験見直し案)と当グループのパブコメ意見
【参考サイト】農水省;農業資材審議会の頁にある第16回農薬分科会の配布資料(平成29年2月2日)
           登録申請時に提出すべき試験成績の土壌残留試験の通知改正案に関する意見・情報の募集概要

 現行の土壌の農薬登録保留基準は、土壌生物の保護ではなく、残留により農作物等が汚染され、それが原因となって人畜に被害を生ずるおそれを防止する観点 から定められています。2014年に、土壌半減期の判定基準をそれまでの1年から180日にし、土壌残留試験方法は圃場試験で実施することが決まりました。今年2月2日の第16回 農業資材審議会農薬分科会で、その試験方法の詳細が決められ、改訂案が出されました。試験のやり方を科学的に不偏なものに決めることは必要ですが、私たちは、判定基準そのものを重視しています。EU並に、半減期が3ヶ月以上、かつ90%消失期間1年以上の農薬を登録しないよう求めていますし、土壌生物への影響評価の必要性を訴えています(記事t15702参照)。

★登録申請の試験は一層の強化が必要
【関連記事】記事t27101
  反農薬東京グループのパブコメ意見(2014/03/03))と農水省の回答

 農薬は生物の生命現象に影響を与える化学物質であり、人が食べ物を得るために、それを環境中にばらまくことで成り立っています。私たちは、人も地球上の生物のひとつにすぎないとの観点にたち、生物多様性・生態系を維持するため、その使用が過度にならないよう出来るだけ規制するよう主張しています。
 しかし、農水省は生物多様性を保持しようとする国際的な動きに表向きは賛同しながら、現実ではそれに逆行する施策をとっています。
今回の改訂の中には、農薬に関する試験等を簡素化し、出来るだけ早く農薬を登録し、価格をやすくしようという意図が見えます。これでは、農薬の使用量が増えるだけです。優先すべきは、登録の簡素化でなく、登録申請内容の強化です。以下に、私たちが主張している実施試験の強化項目をあげます。
  ・補助成分の毒性明確化とポジティブリスト化
  ・発達神経毒性、発達免疫毒性などの試験
  ・ミツバチやポリネーター、天敵への影響評価
  ・カエルなど両生類、鳥類への影響評価
  ・ミミズなど土壌生物や微生物への影響評価
  ・複数の農薬使用による環境への影響評価 
  ・生態系への影響、フィールドでの影響評価
  ・人や環境へ影響調査と農薬の再評価制度制定
  ・環境・生態系保護の視点をいれた、大気や水質、土壌の登録保留基準の設定
  ・農薬処理された種苗、育苗箱で農薬処理された苗移植による環境影響評価
■速報■ 新たな通知改訂〜作物群による残留試験緩和---パブコメは3月26日締切
【関連記事】2003-2005年の違法農薬使用を容認する農薬取締法の経過措置の記事:
          記事t14603記事t15103記事t16308
【参考サイト】農水省;
  登録申請に係る試験成績についての関係通知の一部改正案(作物群による農薬登録)に関する意見・情報の募集概要
 下記の果樹で、同一作物群のどれかに残留試験成績があれば、当該作物のデータがなくても、適用可能になる。
   仁果類(りんご、なしなど)
   核果類(もも、うめ、さくらんぼなど) 
   ベリー類等の小粒果実類(ぶどう、ブリーベリーなど)

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作成:2017-02-28