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t30802#農薬の登録申請試験に関する通知改訂は生物多様性保持に逆行 (その3)作物群による農薬登録拡大へ#17-04
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【参考サイト】農水省:農薬登録制度に関する懇談会の頁
           農薬資材審議会の頁
           農薬を使用することができる作物群作物分類代表作物
       FAMIC:Top Page農薬登録申請の頁にある
          農薬の登録申請に係る試験成績について(12農産第8147号農産園芸局長通知)
             別表1別表2別添
          「農薬の登録申請に係る試験成績について」の運用について(13生産第3986号生産資材課長通知 )
             別表1-1 適用農作物一覧表
       環境省:農薬登録保留基準について
        日本食品化学研究振興財団:残留基準における農産物食品分類表試験用検体

   農水省パブコメ:通知改定案(作物群による農薬登録)に関する意見・情報の募集について

  反農薬東京グループの意見と農水省の結果概要農水省の考え方(3/31)


 農水省は、農薬登録に関する通知改定の第4段として、原則、作物ごとに必要な薬効、薬害、作物残留性に関する試験を同一作物群の一部の適用作物の試験成績で、当該作物群全体における試験成績として活用できるとした、登録要件の簡素化をめざしました。
 いままでにも柑橘類については、作物群による登録が可能でしたが、さらに果樹について、@仁果類(ナシ、ビワ、リンゴなど)、A核果類(モモ、アンズ、ウメ、サクランボなど)、Bベリー類等の小粒果実類(ぶどうやブルーベリー、ヤマモモなど)の区分わけをして、登録しやすくしました。Aの具体例をあげれば、薬効・薬害試験がモモ6事例、同群の1種で2事例あれば、その他は、データがなくても適用可となるわけです。
 このような作物群への適用の拡大の導入について、2003年の農薬取締法改定前から、私たちは、一貫して、製剤ごとに作物の薬効、薬害、残留性試験の実施を求めてきました。残留試験データがない農薬と作物の組み合わせについて、いわゆるマイナー作物で、適用外使用を認めた農水省の経過措置にも反対し、作物のグループ化はやめるべきとの主張もしています。今回のパブコメ意見は以下の内容で提出しました。
  【意見1】作物群による農薬の登録申請、適用拡大をやめてください。
   [理由]1、食品の残留基準設定のもとになる作物残留試験は、製剤と作物の組合
    せごとに、日本の使用状況にあった条件で行うべきである。
    2、作物群による登録について、農水省は、『作物群単位で見れば、より多く
    の試験成績が得られ、信頼性 の高い農薬の登録の検査が可能となる。また、作
    物群に含まれるマイナー作物に 施用可能な農薬の確保も可能となる。』として
    いるが、メリットがあるのは、農薬登録に必要な薬効・薬害・作物残留性試験
    数を減らせる農薬メーカーと、使用可能な農薬数が増える農業者でしかなく、
    人や環境・生態系への影響を防止するため、農薬の使用を減らそうとの考えが
    みられない。
    農薬使用量が増えると、消費者にとっては、食品中から摂取する残留農薬量が
    増えるだけでなく、散布地域周辺の住民は使用農薬による生活環境の汚染の影
    響をより多く受けることになる。さらに、農薬による環境・生態系への影響も
    拡大する。
    すなはち、人及び環境・生態系にとって、作物のグループ化により、農薬の適
    用を拡大することにメリットがない。
    3、いままでの残留基準設定において、海外での残留試験で、当該作物の残留
    試験データがなくても、他の作物を参照にして基準を決めてきたことをさらに
    合法化する。

  【意見2】貴省は、作物群化にあたり、(a)収穫する部位、(b)収穫物の形、(c)農薬
   を散布する時点での収穫物の重さと表面積の比、(d)収穫時の状態や収穫のタイミ
   ング、(e)実際に食べる部位、(f)病気や害虫による被害を防ぐために必要な農
   薬の使い方や時期、などを配慮し、さらに、果実類の「作物群」で登録する場合
   に必要な科学的データ(作物への残留に関する試験、代表作物)を提案するとし
   ています。
   貴省は、まず、いままで、登録された農薬の残留性試験データを、同一作物群に
   ある作物ごとに整理したものを示した上、今回の提案で、作物群の区分とそれぞ
   れの実施試験数を決めた根拠を科学的に説明すべきです。
★残留基準の設定に関係した意見
 作物別の試験のうち、残留試験は、厚労省の残留基準設定のもとになります。このことに関して、以下の意見を述べました。
  【意見3】すでに、同じ作物群にない作物の残留試験データが参照されて、残留基
   準が設定されている事例がみられるので、作物群化による農薬登録の簡素化を図
   る以前の問題として、これをあらためるべきです。
   私たちは、海外で実施した残留試験データをそのまま採用すべきでないと主張し
   ていますが、海外からのIT(インポートトレランス)申請による場合において、
   作物群が異なる作物は残留基準設定の根拠にしないようにすべきです。
    [理由]1、グループ外の作物の残留データが参照され、残留基準が決められて
     いる作物の例の一部を示す。
     基準設定作物:参照作物
     ダイコンの葉:テンサイの葉
     チコリ   :テンサイ
     パセリ   :セロリ、ホウレンソウ
     ニンニク  :タマネギ
     クレソン  :ホウレンソウ、レタス
     キャベツ  :ブロッコリー
     その他のきく科野菜:テンサイの葉
     その他のせり科野菜:テンサイの葉
     ハクサイ :キャベツ、カリフラワー
     ゴボウ  :ダイコンの根
     シュンギク:ホウレンソウ
     レタス  :ホウレンソウ
     オクラ  :トマト、ピーマン、トウガラシ
     ショウガ :バレイショ、 ニラ:ネギ
     ナス :ピーマン、 ベリー類 :イチゴ
     カキ :グアバ
     その他のハーブ:ホウレンソウ、ピーマン、トウガラシ
     その他のスパイス:バレイショ
     2、日本で、農薬の適用作物が拡大される場合、国内での残留試験成績にも
     とづいて、その最大残留値を参照に残留基準が設定されるが、IT申請とい
     うことで、海外で実施された作物群外の不適正な作物の試験データをもとに、
     高い残留基準が決められてはならない。
     3、外国の高い残留基準がIT申請で、そのまま援用されれば、日本で適用
     拡大した場合、消費者は、より多くの農薬を摂取することになる。
 実施された4件の通知改定のパブコメ意見について、3月末に、農水省はその結果と意見に対する考え方を示し、2017年度からの実施に踏み切りました。投稿された意見件数は、以下に示すようで、もちろん、反農薬東京グループがそれぞれ1件入っています。
  ・生体機能や水産動植物への影響に関する試験:1件 ・試験成績の代替:6件
  ・土壌残留試験:1件               ・作物群による残留試験:2件
 農水省の考え方は記事t30902で紹介します。
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作成:2017-05-25