農薬の毒性・健康被害にもどる

5月31日農薬危害防止運動への消費者・市民提案集会
今こそ人とミツバチ等への農薬被害を食い止めよう


t30901#2017年度農薬危害防止運動についての通知が発出された〜ヒトの健康被害もミツバチ被害も防ごう#17-05
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 4月26日、本年度の農薬危害防止運動についての通知が実施要綱やポスターとともに、農水省、環境省、厚労省より、発出されました。すでに、山口県は、二期に分けた運動を実施しており、一期目は、5月から開始されています。その他の都道府県でも運動月間は5月1日又は6月1日からの開始が多いです。
  反農薬東京グループ:2017年度農薬危害防止運動の頁

★新たなミツバチ被害防止対策
【参考サイト】農水省;「平成29年度 農薬危害防止運動」の実施について実施要綱ポスター

 本年度の実施要綱で、昨年度に比べて、目立つのは、 『蜜蜂の被害防止対策』の項が、前年より1頁分増えたことです。農水省は、昨年公表した調査報告で、ミツバチ大量死と斑点米カメムシ対策の農薬散布との因果関係は認めたものの、被害は巣箱の1%未満で、直接農薬被曝が原因だと結論づけ、相変わらず、農薬使用者と養蜂者の連携を密にし、農薬散布情報を共有化するとの方針を示していましたが、今年の農薬危害防止運動では、水稲の防除に係る情報関係に、下記の事項を追加しました。
   @蜂場が設置される可能性のある場所の周辺(蜜蜂の飛翔範囲を考慮すれば、通常、
   蜂場から半径約2kmの範囲)の水稲のカメムシ防除の時期 等の情報を、畜産部局
   及び 養蜂組合等に伝えること(当該情報は、有人ヘリコプターや無人航空機によ
   る農薬散布の事業計画や地域の農業団体が作成する防除暦等から得ること) 
   A使用する農薬のラベルに、「農薬の使用上の注意事項」や「使用回数」として記
   載されている事項等を遵守すること。
 @で、蜂場から半径約2kmの範囲での農薬散布情報の周知をしっかりしろと、Aで、ラベルにある農薬の使用方法だけでなく、「使用上の注意事項」等を遵守しろということです。特に、2015年の指導で、ミツバチ毒性の強い農薬のラベルに、いままでもあった『ミツバチの巣箱及びその周辺に飛散するおそれがある場合には使用しないでください。』に加え、『受粉促進を目的としてミツバチ等を放飼中の施設や果樹園等では使用をさけてください。関係機関(都道府県の農薬指導部局や地域の農業団体等)に対して、周辺で養蜂が行われているかを確認し、養蜂が行われている場合は、関係機関へ農薬使用に係る情報を提供し、ミツバチの危害防止に努めてください。』と記載するようになったので、このことを、農薬使用者に求めているわけです。
 なにも、目新しいことはなく、当たり前のことで、昨年までの実施要綱になかったことが不思議ですが、農水省は、いままでの指導では、不十分と感じたのでしょう。
 私たちが求めている二点の要望、ラベル記載事項の遵守や散布情報の提供は、農薬使用者の努力規定でなく、義務規定にすること、また、ミツバチ被害がなくならない北海道で、まず、斑点米カメムシ防除の農薬散布を中止することとは、まだ、まだ、隔たりがあります。

 反農薬東京グループは、国の実施要綱の発出を踏まえ、危害防止運動を担う都道府県へもアクションをとっており、国への要望・質問を示した上、2015年につづき、米の農産物規格とポリネーター保護に関する問合せを実施しています。

★人の受動被曝防止は旧態依然
 そもそも、農薬の危被害で最重点に置かれるべきは、ヒトの健康被害についてです。
 しかし、実施要綱の内容は毎年代わり映えがしません。いくつかの事例を挙げます。
【クロルピクリン】散布地周辺の住民の受動被曝による被害が一番多いのは、土壌くん蒸剤クロルピクリンで、2009-15年の被害者数は130人を越えます。防止対策として挙げられている指導事項は、下記のような努力規定があるにすぎません。
  ・農薬使用時の事故防止対策の周知の項にある土壌くん蒸剤の使用に当たっての
   安全確保の徹底:土壌くん蒸剤を使用する場合は、農薬の容器に表示された使用
   上の注意事項等に従い、防護マスク等の防護装備の着用、施用直後のビニール等
   での被覆等を確実に行う等の安全確保を徹底すること。また、使用場所、周辺の
   状況に十分配慮して防除を行うよう指導を徹底すること。
  ・土壌くん蒸剤による水質影響の低減対策:土壌くん蒸剤に関して、ほ場周辺の井
   戸水からクロルピクリンが高濃度で検出された事例があった。井戸水からクロル
   ピクリンが高濃度で検出されたことと同剤を深層処理したこととの因果関係は必
   ずしも明らかではないものの、農薬指導部局は環境部局及び衛生部局から同様の
   情報を入手した場合には、農業現場における使用状況の把握に努めるなど、関係
   機関が連携して対処すること。
 さらに、「農薬による事故の主な原因等及びその防止のための注意事項」には、農薬散布中の人に対する事故防止対策として、『クロルピクリン剤等土壌くん蒸剤の使用に当たっては、揮散した薬剤が周辺に影響を与えないよう風向き等に十分注意するとともに、直ちに適正な厚さの資材を用いて被覆を完全に行う。』とあります。

【住宅地通知】関連する指導事項は、前年と同じで、かわりません。私たちは、ウメ輪紋ウイルス対策として、一般住宅や公園などで、感染媒介虫とされるアブラムシ駆除するための宿主木への殺虫剤散布に反対しています。その根拠は、住宅地通知ですが、通知記載内容の義務化については、実施要綱になんら触れられていません。
 農薬ラベルに『公園、街路樹などに農薬を散布した後は、少なくとも当日は散布区域に縄囲いや立て札を立てるなどにより、関係者以外の者の立ち入りを防ぐ』とあっても、有名無実化しているのが実態です。

【農薬販売】実施要綱では、農薬販売は、単に適正にするよう求められているだけで、毒劇法で指定された農薬、登録失効農薬、期限切れ農薬、ラベルがはがれた製品などのネット販売の取締り強化はみられません(記事t30904参照)。これは、有効期限切れ農薬を使用しないということが、使用者の努力規定にすぎないためです。

 農業生産や景観保持目的を第一とし、人や環境・生態系の保護をないがしろに、農薬を適正に使えばいいという農水省らの姿勢では、危被害をなくすことはできません。
 私たちは、農薬使用を減らすことめざし、5月31日、参議院議員会館での、農薬危害防止運動への消費者・市民からの提案集会行うことにしています。
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作成:2017-05-25