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t30902#農薬の登録申請試験に関する通知改訂は生物多様性保持に逆行(最終回)パブコメ意見への農水省の考え方より#17-05
【関連記事】記事t29103、記事t30504、記事t30602、記事t30702、記事t30802
【参考サイト】農水省:農薬登録制度に関する懇談会の頁
農薬資材審議会の頁
農薬を使用することができる作物群、作物分類、代表作物
FAMIC:Top Page、農薬登録申請の頁にある
農薬の登録申請に係る試験成績について(12農産第8147号農産園芸局長通知)
別表1、別表2、別添
「農薬の登録申請に係る試験成績について」の運用について(13生産第3986号生産資材課長通知 ) と
別表1-1 適用農作物一覧表
環境省:農薬登録保留基準について
日本食品化学研究振興財団:残留基準における農産物食品分類表と試験用検体
昨年の農薬原体の同等性確認(記事t30201、記事t30504参照)に端を発した、その後の農薬登録に関する一連の通知改定のパブコメでの意見について、3月末に、農水省の考え方が明らかになり、多くは、4月から実施されることになっています。
私たちは、予防原則を主張する際の大前提は、農薬の毒性や残留試験成績の情報公開であるとの認識に立ち、パブコメ意見を述べてきましたが、残念ながら、農水省の壁は崩せていません。同省の考え方をいくつか紹介していきます。
★試験方法の通知改訂について
【関連記事】記事t30602
【参考サイト】農水省パブコメ:通知改定案(試験方法の通知関係)に関する意見・情報の募集について
反農薬東京グループの意見と農水省の結果概要と農水省の考え方(3/31)
私たちは、農水省が「生体機能への影響に関する試験について」を改め、「解毒方法又は救命処置方法に関する試験成績」として、いままで、毒劇法指定に関係なく提出を義務づけられていた試験を、毒劇物指定のある急性毒性の強い農薬に限るとしたことに、反対しましたが、その必然性が薄れてきたとして、受け容れられませんでした。
さらに、以下のような意見に同省の見解が示されましたが、とどのつまりは、人や環境・生態系を守るというより、農薬メーカーや使用者を利するものでした。
【当グループの意見】実験動物から得た試験結果をヒトに適用する場合の安全係数
(現行はヒトとの種差を 10、個体差を 10)を再考すべきである。
[農水省の見解]適切なリスク管理措置を実施すれば、安全性は担保されると考え
ています。頂いた御意見については、食品安全委員会に情報提供いたします。
【意見】有効な解毒法や治療法がない農薬については、登録をすべきでない。
また、毒劇農薬については、毒性試験だけでなく、使用者には、免許制度を適用す
べきである。
[農水省の見解]多くは使用者の意思によるものではない誤飲・誤食等による事故と
なっています。免許制度を適用する必要があるとまでは考えておりません。-後略-
【意見】水産動植物への影響に関する試験成績について、ユスリカ以外に、
コガタシマトビケラを用いた試験成績の提出を求めるべきである。
[農水省の見解]審議会において、コガタシマトビケラについては、国際的に合意さ
れた試験方法である OECD テストガイドラインの対象種になっていないこと、
ユスリカとの感受性の差は、概ね 10 倍程度以下であることから試験対象種とさ
れませんでした。
【意見】本改訂の実施は、平成 30 年4月1日以降に提出される試験成績から適用す
る、とされているが、既存登録農薬についてはユスリカのデータは、一年以内に
提出を求め、早急に、登録保留基準に反映させるべきである。
[農水省の見解]12 成分の既登録農薬については、本改正にかかわらず、農薬登録を
行った申請者に、原則1年以内にユスリカ幼虫試験成績の提出を求め、登録保留
基準の再審議を行うこととされています。
★試験成績の代替について
記事t30602、記事t30702で述べた試験の代替は、登録後15年以上経過した農薬と同一の有効成分を含む後発農薬の登録申請に適用されるもので、同等と判断される場合は、試験成績代替書を提出すればよいことになりました。
私たちは、代替の対象となる試験成績の内容は、すべて公開されるべきというのが基本的立場ですが、このことは一顧だにされませんでした。
『「動物愛護の観点から取組が求められている実験動物数の削減にも資するものです。」とされているが、農作物の生産のために、人や環境・生態系に影響を与える毒性の高い化学物質を農薬として使用していることが、一番問題なのに、貴省は、農薬の使用量をできるだけ減らすという考えがないまま、その登録の簡素化のための改正を行っているとしか思えない。申請者が提出する毒性試験データなどが公開されておれば、余分な試験をする必要はなくなる。それと同時に、動物実験に頼らず、人や環境・生態系への影響評価をするため、細菌や細胞を用いた試験方法を早急に開発することが必要です。』と主張しました。
農水省は、『病害虫や雑草の防除を農薬に頼らず、病害虫の発生状況に応じて、生物的防除や物理的防除等を適切に組み合わせ、環境への負荷を軽減しつつ、病害虫の発生を抑制する総合的病害虫・雑草管理(IPM)の推進にも取り組んでいます。』とし、『安全性評価が簡素化されるわけではありません。』と答えました。
さらに、「関係する行政部局にも伝え、今後の施策決定の参考といたします。」として、以下のような意見があったと、羅列しただけでした。
・ 申請者に、農薬原体の同一性を示す試験データ、製剤の組成、毒性・残留性試験
データ等、試験成績の内容はすべて公開することを義務づけるべき。
・ 農薬が登録された後にも、食品における残留濃度、人の健康や環境への影響など
を調査して報告させ、問題があれば、使用規制につなげることのできる再評価
制度を導入すべき。
・ 農薬の登録の可否について、薬効・薬害、残留性、毒性に関する試験成績を示し、
メリット、デメリットを明らかにした上で、国民の意見を聞く制度とすべき。
・ 農薬の登録審査において、大気を介した人への影響、陸棲生物及び土壌生物への
影響についての評価を導入すべき。
・ 後発農薬の製造者においても、農薬の適正使用の推進に関する取り組みが行われ
るよう、指導すべき。
・ 外国で製造される農薬についても、品質を確保するための検査体制等を検討すべき。
・ 平成 29 年 4 月以前に登録された農薬についても、農薬原体の成分規格が設定
されるよう努めるべき。
・ 農薬の製造者に関する情報を把握しやすくするため、法人番号の活用を進めるべき。
・ 農薬でない除草剤、衛生害虫や不快害虫の殺虫剤、シロアリ防除剤、木材保存剤
等についても、人の健康や環境への悪影響の防止の観点から、農薬と同等に
取締まれるよう、新たな法律を制定すべき。
★土壌残留試験に関して
【関連記事】記事t30702
【参考サイト】農水省パブコメ:通知改定案(土壌残留試験関係)に関する意見・情報の募集について
反農薬東京グループの意見と農水省の結果概要と農水省の考え方(3/31)
土壌残留試験は、土壌残留に係る農薬登録保留基準に該当するかどうかの判断(土壌残留した農薬が後作物に移行して残留基準を超えることがない)を目的にして実施されているだけです。
私たちは、農薬の土壌生物等や生態系への影響評価を実施するよう求めましたが(記事t30702参照)、農水省は、「御意見につきましては、関係する行政部局にも伝え今後の施策決定の参考といたします。」でした。
土壌中の農薬は、圃場の土壌半減期の判定基準について、私たちは、以前から、E
U並に半減期が3ヶ月以上、かつ 90%消失期間1年以上の農薬を登録しないよう求めています。また、集約的な日本の農業では、同一圃場で、多品種作物の連作や輪作、施設栽培や露地栽培が行われ、そのため、多種類の農薬が施用されていることに対して、圃場での農薬使用履歴と土壌残留の関連を調べる必要があることも主張しました。
しかし、これらについては、何の見解も示めされませんでした。
★作物群による登録申請について
【関連記事】記事t30802
【参考サイト】農水省パブコメ:通知改定案(作物群による農薬登録)に関する意見・情報の募集について
反農薬東京グループの意見と農水省の結果概要と農水省の考え方(3/31)
作物群による登録申請に関する通知については、記事t30802で、意見を述べましたが、農水省は下記のような考え方を示しました。
個別作物の試験数が少なくなるとの批判に対し、農水省は『作物群内の数種の作物で実施した試験成績を当該作物群全体における試験成績として活用することで、作物群単位で見れば、より多くの試験成績に基づき、信頼性の高い農薬の登録の検査を可能とするものです。』『作物残留試験成績については、従来の試験数を見直し、平成 26 年4月1日から、生産量が特に多い農作物に対しては6例、生産量が比較的多い農作物に対しては3例として、より多くの試験成績の提出を求めることとしました(記事t23502参照)』と主張しました。
他に、以下のような見解も示されています。
【意見】作物群による残留試験で基準を決める場合には、同群の個別の作物におい
て、農薬が同一適用条件(希釈倍率、散布量、回数、使用方法など)で使用されている
ことを必須条件とすべきである。
[農水省の見解]御意見のとおり、本改正では、@ある農薬を、その作物群に含まれ
る作物に同じ使用方法で使用することが必要な場合に、A農薬登録申請者が、作
物群に含まれる作物のうち、代表的な作物で試験を行い、申請し、B国が消費者
の健康に悪影響をおよぼさないかなどの評価を行い、問題ないと判断すれば、そ
の作物群を登録することとしています。
【意見】仁果類や核果類に使用される農薬の中には、果実の栽培時に適用されるだ
けでなく、食品添加物・防黴剤としてポストハーベスト使用されるものがあり、
両ケースで、分析部位が異なっており、この点が留意された残留試験をすべきである。
【意見】外国からのIT申請で、同一作物群にないものの基準を根拠にしたものがある。との指摘に対し、農水省は『農産物の分析部位については、農薬登録の申請の際に提出する作物残留試験において、両ケースで分析することを求めています。』『頂いた御意見については、厚労省にも情報提供いたします。』としています。
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作成:2017-07-27