行政・業界の動きにもどる
t30904#農薬販売。ネットは無法地帯〜期限切れ、内容不明品、登録失効農薬、毒物・劇物指定のものまで#17-05
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オークションサイトに期限切れ品、失効農薬や毒劇物農薬が出品され、神奈川県は出品者のいる鳥取県に通報しました。鳥取県は出品者を指導するためヤフーに情報提供を求めましたが拒否され、問題のある15件すべての農薬が落札者の手に渡ってしまいました。また、スマホ個人売買アプリでは、農薬取締法で禁止されている農薬の小分け販売が横行しており、ネット販売は法規制逃れの"無法地帯化"していることがわかりました。
★毒物劇物指定の農薬がヤフーオークションに
【参考サイト】ヤフーオークション:Top Page、毒物・劇物又は農薬の出品に関する注意喚起について
4月13日、ヤフー オークションに有効期限切れの農薬が15件出品され、失効登録、中にはラベルがまったくないもの、毒劇物指定のものまでありました。
毒劇物を担当する神奈川県薬務課は、市民からの申し出があったその日のうちに、鳥取県に通報し、同県医療指導課はヤフーに対し出品者情報の提供を求めましたが、「疑わしいだけでは教えられない」(趣旨)として拒否されました。
17日から翌週の間に、すべての農薬が落札されてしまいました。通常毒劇物を店舗で販売するときには、名前、住所、職業を記載し押印した譲受書の徴取が必要ですが、今回はこの手続きも無視され、使用目的もわからないネット上の相手に渡ってしまったのです。
毒物及び劇物取締法では、毒物劇物を販売するときは都道府県(または保健所設置市)への登録が必要で、それには資格を持った取扱責任者の専任、基準に合った設備、帳簿類の整備等のほか、立入検査も受けるのです。
今回、ヤフーの拒否によって、出品者の登録の有無、年齢、取扱い責任者としての適不適もわからず、お手上げとなりました。
★農薬取締法でも、無届販売の疑い
【参考サイト】農水省:無登録農薬と失効農薬の関係
神奈川県:農薬販売届について
福岡県病害虫防除所:農薬販売者の皆様へ
一方、農薬を担当する神奈川県農業振興課は、同日鳥取県に通報し、同県くらしの安心推進課も、ヤフーから出品者情報を得られませんでした。
農薬取締法でも、販売者には適正保管や帳簿類の備付、講習の受講、検査も受けなければなりません。
今回は、出品者情報が無いため、そうした指導が一切できなかったのです。
<主な出品農薬>
農薬名 用途 有効期限 失効 毒劇指定
カルホス乳剤 殺虫剤 切れ 劇物
ダイアジノン乳剤 殺虫剤 切れ 劇物
DDVP乳剤 殺虫剤 切れ 失効 劇物
ラービン水和剤 殺虫剤 切れ 劇物
マイゼット 除草剤 切れ 毒物
★期限切れ、失効農薬も販売可能
神奈川県は、こうした「最終有効年月を過ぎたもの」、「失効農薬の販売に違法性がないか」を、農林水産省農薬対策室に確認したところ、いずれも「販売禁止農薬でなければ、販売・使用は可能」と答えました。
通常では、「失効」=「登録のない農薬」となり、一切の販売ができないと考えますが、国の解釈は違ったのです。保管状況がわからず、20〜30年経過した農薬が、製造時の効果効能を保っているのか、変性してヒトや作物に思わぬ作用をしないのか、疑問が残ります。
また、今回ラベルの取れた農薬(液剤)も出品されましたが、なぜ農水省はこれを許すのか、理解できません。
★個人売買スマホアプリで「農薬の小分け」
【参考サイト】メルカリ(スマホのフリーマーケットアプリ):
メルカリアプリで安心取引!レア商品や掘り出し物も見つかる
若者の間で急成長している「mercari(メルカリ)」は、売りたい物をスマホで撮影しアップすると、買い手付けば取引が完了する個人売買アプリです。
このシステムの問題点は、@ 売買期間が短いため、違法な物がアップされても主催者の監視が行き届かないこと。A 運送業者に売買番号を伝えれば、送り伝票もいらず、売買と代金決済が匿名匿住所でできること、です。
メルカリでは、農薬の小分けが常態化していて、粒剤をビニールに入れてマジックで薬品名を書いただけものが多数出品されています。
神奈川県に、小分けの問題点を聞いたところ、「農薬の容量・容器・表示は、国の登録を受けた製造者か輸入者に限る」とし、「それ以外は違法」と判断しています。元々の製品表示をカラーコピーして貼付しても違法なのです。
匿名で送付できるメルカリが、今後悪用される前に対策が必要です。
★ヤフーは、法令遵守感覚がマヒ
2007年7月にも、劇物のシロアリ駆除剤がオークションに出品されましたが、出品者が神奈川県在住だったため、県薬務課はヤフーに対し、「該当ページの削除」と「出品者情報の提供」を求めました。しかし、同社は2週間これを無視。その後担当部署に電話連絡がつき、ページ削除と出品者情報を得ました。こうした、緊急時に電話連絡できないのは問題であるとして、その後はヤフー(株)法務部と直接連絡できるようにし、併せて事例を全国薬事主管部課長協議会に報告しました。
★行政は、もっと打つ手があったはず
2016年11月に、千葉県銚子市の男がネットオークションで登録農薬を販売し、警視庁は農薬取締法違反(無届)で書類送検しました。このケースでは2014年4月ごろから約100万円を売り上げていました。
今回、期限切れ農薬をオークションにかけた鳥取県の「出品者h」は、調べたところ、6ヶ月以上前から、たびたび農薬を出品しました。「県には捜査権限がないので、ヤフーが出品者の情報を提供してくれなければ、それ以上は指導できない」としていますが、はたしてそうなのでしょうか。毒劇物が使用目的のわからない者に渡るのを防ぐために、警察に通報することはできなかったのでしょうか。
また、鳥取県は1品落札して、出品者の居所をつかむこともできたはずです。一般的な毒劇物販売者、農薬販売者には種々の規制が課せられていますが、これは公衆衛生や安全の確保、目的外使用を防ぐためです。大きな事件事故が起きる前に、ネット販売の規制が必要なのです。(新巻圭)
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作成:2017-06-29