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   電子版「脱農薬てんとう資料集」第6号<農薬危害防止運動について>

ネオニコチノイド系農薬・斑点米関係にもどる

t31002#農薬危害防止運動へ消費者・市民からの提案 「今こそ人とミツバチ等への農薬被害を食い止めよう」集会開催(その1)人の被害防止について#17-06
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 5月31日、参議院議員会館会議室で「今こそ人とミツバチ等への農薬被害を食い止めよう」集会が開催されました。集会参加者は農薬被害者や関心のある市民、国会議員、農水省など約70名。午後2時から4時半まで終始真剣な雰囲気の中で開催されました。
 最初に、この集会の開催に尽力してくれた小川勝也参議院議員から挨拶がありました。小川議員は、自分は反農薬ではなく、慣行農業も必要と思っているが、ネオニコチノイド農薬が生態系を狂わせ、将来の人類の営みに大きな影響を与えると言うことはほぼ確実である。皆様方からいろんなご意見をいただいて国会で発言したり、質問主意書を出したりして、国会議員としての仕事を果たして行きたいと思っていると力強く語りました。
 集会は二部に分かれ、第一部は「人への被害を防ぐために」、第二部は「食・農を支えるミツバチや野生のポリネーターを守るために」で、今号では、第一部を紹介します。(発言は要約です)

★深刻なクロルピクリンによる被害
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 まず、農薬による被害について3人から報告がありました。
 最初に「クロルピクリンによる健康被害」では、青森県から駆け付けた被害者が「クロルピクリンの被害を一人でも多くの人に知ってもらいたい」と前置きし、被害を訴えました。
 「現在地に移ってきたのは26年前だ。現地に移ってから4月になると非常に気分が悪くなる。いらいらする。頭痛、めまい、無気力。冬場にはぜんそくが起きて呼吸困難になる。それがクロルピクリンによるものだと分かったのは、専門医に農薬の暴露による化学物質過敏症だとの診断書をもらってからだ。
 近くに住む人に話を聞いた。長く住んでいる人は全部影響を受けている。動物も早く死ぬ。しかし、憎まれるから我慢をしている。国は危害を与えないような対策を考えていただきたい。役人は2年位で変わっていくが、住民はそこにずっと住み続けている。」と、農水省に対策を訴えました。

★住宅地通知無視の農薬散布:青梅市
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 続いて、東京都青梅市の「住宅街での農薬散布中止を求める会」から、PPV(梅輪紋ウイルス)に梅が感染したため、アブラムシによる感染を防ぐためとして、住宅の庭にまで農薬散布をしていると写真を示しながら説明しました。
 「今日、要望に対する農水省の回答を見たが、ほんとうに目を疑った。『回覧板とか、町内放送での周知の徹底、飛散防止には、ネットを使うなどで適切に散布している』とあるが、全く違う状況だ。そのことをご報告いたします。
 住民は農薬の危険性を認識していません。このように散布当日も洗濯物を干したり、隣の家は窓が開いています。散布する業者の認識も全く杜撰です。
 1700本伐採した梅の公園には、切り株が点在しています。当初の説明では、伐採し、抜根するとしていたが、実際には、除草剤グリホサートを切り株に注入する方法が多用されています。住宅街でもやっています。どのくらいの量使っているのか、心配です。今では抜根と言う言葉も消えています。
 今年の1月の反農薬東京グループの質問(注:PPVは梅にどういう被害をもたらすのか、また、農薬でアブラムシを絶滅できると思っているのか、感染したアブラムシが一時間ほどで感染能力をなくすというのはなぜか、などの、素朴な質問をいくつかあげ、科学的説明を求めていた。記事t30603参照)にも「判明していない、知見を有していない、報告は承知していない」という回答が農水省から返ってきています。半分手さぐりで、実験場のような状態でやっているわけです。そういうことはやめていただきたい。環境調査、健康調査の実施も求めていますが、未だに実施されない状況です。」

★千葉県の学校での農薬使用状況
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 続いて、千葉県で化学物質過敏症の発症者や、家族、支援する人が集まった「生活環境を健康にする会」から県内の学校や公共施設での農薬使用について2010(平成22年)からの調査結果が報告されました。以下要約
 県立学校は、137校のうち、約6割の92校が農薬を使用していた。その約半数の51校が有機リン系農薬を使用していた。除草剤を使用していたのは28校だったが7年後の2016年度は、農薬使用している学校が46校、有機リンを使っているところが18校で、7年かかってようやく半分になったわけだ。
 しかも、まだ、生息調査もなく、物理的防除もなく、毎年同じ時期に同じ薬剤を散布している学校が18校あります。除草剤を5月から10月にかけて毎週のように撒いている学校がある。
 大きな問題は、行政の担当者が住宅地通知をご存知ない。素直に「住宅地通知は知りませんでした」とおっしゃる方が何人もいる。
 平成28年度の問題点として、@26年度から毎年生息調査、物理的防除もなく農薬使用しており定期散布が疑われる学校が18校、A年に何回も除草剤を使用している学校が6校、ジクワット、パラコート、マラソン、EPNなど危険性が高い農薬を使用している学校もある。などがあげられる。
 農地でないのに、農薬は市街地で結構な分量がまかれている。行政ばかりではなく、ガーデニング、自宅の庭、公共施設でも結構使われています。
 住宅地通知は、罰則を求めるなり、義務化するなりして、本当に周知徹底してやっていただきたい。

★農水省への要望と回答
 集会での農水省への要望と回答全文

 集会第一部では、事前に農水省に対して、4分野10項目の要望を出し、集会での回答を求めました。要望と回答の要点を報告します。
 なお、第二部のミツバチ、ポリネーター被害については、記事t31102参照。
【1】農薬取締法について
 <要望1>農薬取締法には「人畜」と言う言葉が使われているが、「畜」とは何を指す
  か明らかにし、被害防止を。
  <回答>「畜」の定義はないが、牛、豚、蚕、養蜂家が飼育している蜜蜂も入る。

 <要望2>農薬取締法には製造者などに使用上の注意の記載を求めているが、
  農薬使用者にも使用上の遵守すべき義務を明らかにして、必要に応じて法的に処罰することを
  検討すべき。
  <回答>使用する現場の状況に応じて多岐にわたるため、遵守義務には馴染まない。
   農薬の使用に当たってはラベルを確認し、使用するよう指導している。

【2】住宅地通知について
 <要望1>住宅地周辺では物理的、耕種的、生物的防除を優先するよう義務付けること。
  <回答>法令上の義務化は馴染まない。住宅地通知の一層の周知・徹底に努める。

 <要望2>有機リン、ネオニコチノイド、ピレスロイドなど神経毒性のある農薬の
  散布をやめ、周辺地域への散布周知を義務付けること。
  <回答>農薬は登録前の審査で神経毒性を含む毒性を評価している。事前通知に
   ついては、住宅地通知で規定しているので地方公共団体を通じて関係者への
   周知・徹底を指導する。

【3】クロルピクリンの使用について
 <要望1>住宅地周辺でのクロピクの使用を禁止し、代替法をとることを義務付ける。
  <回答>周辺住民に健康被害の発生に十分留意すること等を使用上の注意事項に
   含めている。人家に隣接する畑での使用は避ける等の指導もしている。
   引き続き適正使用の周知徹底に努める。

 <要望2>使用地域では行政や農業者、一般住民や環境保護団体などが話し合う場を
  設けてクロピクに頼らない手法の推進を検討する。
  <回答>クロピクは使用後速やかに被覆すること、朝夕の湿度の低い時間帯、住宅地が
   風下になる場合は処理を控えるなど、使用上の注意事項に含めている。引き続き
   適正使用の周知の徹底に努める。IPM技術の普及を図って、適宜機会を設けて
   紹介していく。

 <要望3>10ヘクタール以上のほ場でクロピク処理をしている地区での環境調査を行うこと。
  <回答>環境省が水質基準、水産基準を定めるための審議を行う予定。その結果、
   影響が懸念される場合にはモニタリング調査の実施を検討すると言っている。

 <要望4>省令で努力規定になっている被覆を義務規定にする。
  <回答>適正な指導が徹底されるよう指導する。

【4】PPV対策
 <要望1>PPV防除対策では住宅地通知を遵守すること。
  <回答>アブラムシ防除が有効な手段。登録農薬をラベル通りに使用する。青梅市では
   事前周知、風向きを考慮し、飛散防止のネットを使用している。今後とも指導に努める。

 <要望2>農薬散布をやめ、他の対策をとること
  <回答>指定地域ではアブラムシ防除が必要。対象となる植物が広範囲に多数
   存在する状況下では即効的で確実である農薬散布を実施。引き続き適切な
   使用を指導する。

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作成:2017-07-27