ネオニコチノイド系農薬・斑点米関係にもどる

パンフ「知っていますか? 斑点米と農薬とミツバチ大量死」(無料ダウンロードはこちら)
t31003#米の検査規格をどうするか〜都道府県へのアンケートでは、詳細回答した過半数が緩和望む#17-06
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【参考サイト】農水省:農産物検査法及び関係通知等の頁
       米の検査規格の見直しを求める会:Top Page
       生き物共生農業を進める会:Top Page農水省の2015年のアンケート調査票独自調査のまとめ

 農薬危害防止運動について、前号でお伝えしたように、全国47都道府県を対象に私たちの主張を伝えるとともに(記事t30901)、アンケート調査を実施しました。40都道府県から回答を得ました。今号では、米の規格について、記事t31102では、ポリネーター保護について、その結果を紹介します。

★米の検査に関する都道府県アンケート調査
 1000粒に2粒以上の斑点米(着色粒)が混入すると、米の等級がさがるという農産物規格規程が、斑点米カメムシ防除の農薬散布を促し、ミツバチの大量死を惹き起こしています。私たちは、ポリネーター保護を目指し、生物多様性を破壊するネオニコチノイドなど農薬使用をやめることを訴えてきました。
 2015年の危害防止運動の際にも、斑点米に関する都道府県アンケート調査を実施し、その結果を報告しています(記事t28607記事t28705参照)。この動きに刺激されたのか、2015年10月ごろ、農水省が、都道府県だけでなく、登録検査機関、米集荷業者に対象を拡大し、6項目の設問をつくり、「農産物検査(お米)に関するアンケート調査」を実施していることが、生き物共生農業を進める会の調べでわかりました。しかし、農水省は調査結果を1年半も公表しないため、私たちは5月1日に、都道府県に対し、同省の設問項目に合わせて、米検査についての考えを尋ねました。
  反農薬東京グループから都道府県宛:2017年度の農薬危害防止運動に関連するお尋ねにある設問【1】

 当グループの調査で、47都道府県中、回答がなかったのは、富山、京都、愛媛、徳島、大分、宮崎、沖縄の7府県、回答率は85%でした。40都道府県について、その内容を以下に示します。

★詳細回答したのは19府県
 40都道府県のうち、農水省の2015年のアンケート調査に回答したことが確認できた都道府県は34でしたが、6つの設問ごとにその内容を答えたのは、19府県で、秋田、岩手、宮城、福島、群馬、茨城、埼玉、山梨、静岡、千葉、和歌山の11県は、農水省へ尋ねられたいと、回答を渋りました。 
【米の検査で重視する項目】
 米の検査で一番注目するのは何かとの問い(13項目からの選択で複数回答可)で、
 着色粒をあげたのは、青森、栃木、滋賀、大阪、山口、香川、高知の7県でした。

【規格強化・緩和】
 11項目からの選択で(複数回答可)、着色粒規程の緩和と回答したのが7県で、
 他の項目を含め47%の9県が規格規程の緩和を望んでいます。
 ・現行のまま:8(栃木、東京、大阪、滋賀、岡山、高知、鳥取、福岡)
 ・着色粒の緩和:7(青森、三重、福井、香川、山口、兵庫、長崎)
 ・形質の緩和:1(三重)
 ・水分上限値緩和:2(青森、岐阜)
 ・等級簡素化;2(神奈川、長崎)

 青森は、精米段階での色彩選別機により除去可能な着色粒の混入限度は異物・異種穀粒程度(0.3%)
 としてほしい、とありました。

【検査は産地振興に有益か】有益である、どちらともいえないがともに9で、
 国のやっている検査への評価が分かれました。
 ・どちらともいえない:9(栃木、愛知、大阪、兵庫、奈良、三重、岡山、鳥取、長崎)
 ・有益である:9(青森、東京、福井、岐阜、滋賀、香川、高知、山口、福岡)
 ・有益でない:1(神奈川)

 どちらともいえないのうち長崎は「1等米比率が高いことで、産地のイメージは向上すると思うが、
 消費者が購入する米には等級明記ない」と、その理由を挙げています。

【測定器導入】現在は目視判定であることについて、機器導入を必要とする県が63%で
 一番多くありました。
 ・現状のまま:5(栃木。東京、福井、山口、鳥取)
 ・必要:12(青森、岐阜、神奈川、大阪、滋賀、兵庫、三重、岡山、香川、高知、福岡、長崎)
 ・必要ない:1(愛知)  ・回答できない:1(奈良)

 滋賀は、目視による鑑定を補完するための測定機器の導入は有用とし、長崎は、検査員の
 目視で行うよりも、効率化が図られ、公平性を保てるとしています。

【着色米混入限度】現在1000粒に1粒が一等米、2以上が2等米以下で等級が落ちることに
 ついては緩和を求める声が47%でした。
 ・現状のまま:6(栃木、東京、大阪、滋賀、山口、高知)
 ・わからない、どちらでもよい:4(愛知、奈良、鳥取、福岡)
 ・緩和すべき:9(青森、神奈川、福井、岐阜、三重、兵庫、岡山、香川、長崎)
 青森は、色彩選別機により除去・販売されおり、農薬の散布回数低減の観点からも混入度を
 緩和すべき。
 長崎は流通業者の負担増、歩留の明確な低下等とならない範囲で緩和を、とコメントしています。

【検査規格に望むこと】手法の簡素化5、規格の緩和4、新たな基準の必要性を求める声は4県です。
 ・現状のまま:6(東京、滋賀、鳥取、山口、岡山、福岡)
 ・検査規格の緩和:4(青森、福井、香川、長崎)
 ・手法の簡素化:5(青森、栃木、神奈川、大阪、長崎) 
 ・新たな評価:4(栃木、岐阜、高知、長崎)  
 ・回答できない:1(奈良=実務していないため)
 ・該当なし:2(兵庫 愛知)  ・回答なし:1(三重)

 緩和を望む青森は、検査手法の合理化・簡素化、規格の緩和が現場負担にならぬことを挙げ、
 長崎は、商品価値を反映するような項目(タンパク等)も導入するべき。また、測定
 機器の能力が向上していく中で、全国同一の評価ができる体制ができないか、とし、
 香川は、流通段階では問題となっていない一方で、生産段階では防除コストが負担と
 なっている、と意見を述べています。
★着色粒見直し求める県は過半数を超す
 以上の結果をまとめると、着色粒の混入について緩和を求めたのは19県中、青森、神奈川、福井、岐阜、三重、兵庫、岡山、香川、長崎9県でしたが、これに、規格緩和の項で着色粒緩和と回答した山口県をくわえると、回答の過半数を超える10県となります。このほか、当グループに詳細回答を示さなかった岩手や秋田も着色粒規定の緩和の意向とのことです。
 さらに、栃木、滋賀、大阪、高知、福岡は、測定器の導入や検査手法の簡素化を求めていますので、現行の米の規格見直しの声は、回答府県の80%弱になります。

★2015年の私たちのアンケート調査
【関連記事】記事t28607記事t28705
 農水省調査の半年前の2015年5月に、私たちが実施した都道府県アンケート調査(47都道府県中44回答)で(記事t28705参照)、米の検査規格の着色粒規定について、現状でよいかと尋ねましたが、16都道県が「国が定めるものなので判断できない。」答え、12県が妥当としました。実需者(米流通業者等)や消費者の納得できる規格にすべきとの意見をつけた府県が8ありましたが、検査制度の見直しを求めたのは岩手県だけでした。また、斑点米の混入率がどの程度であればよいかとの問には、数値を示して0.3%と答えたのは広島のみ、「判断できない、コメントできない、回答できない、現状のままでよい、意見がない」が、30県を超えており、明確な意見を示さないというのが大勢でしたが、規格がなくなれば、生産者は助かるとした県もありました。

★岩手県は、国に質問書を出していた 【関連記事】記事t29607
 今回、詳細回答を拒否した岩手は、2005年夏、ダントツ(クロチアニジン)によるミ ツバチ被害が最初に報告された県ですが(記事t17005参照)、なんどか国に意見書をだしていました。2015年に、国に提出した質問書(5・31農薬危害防止運動への消費者・市民提案集会における配布資料)の一部には以下のように書かれています。「カメムシにより引き起こされる斑点米被害は品質被害であり、着色粒規定が緩和され、カメムシを対象とした防除が減った場合、蜜蜂被害も減少する可能性があると思われるが、着色粒規定等、農作物検査制度の見直しの予定や考え等があるのかお聞きしたい。」

★農水省にアンケ結果の公表を求める
 農水省が実施したアンケート結果を公表すべきと思うかとの問に、公表すべきとした県は、2県で、大部分は、農水省の判断に任せるとか都道府県がいうべきことでないと口をつぐみ、中には、公表不要などという回答もありました。農水省設問項目に回答した過半数を超える府県から、着色粒規格の緩和の声があったのに、全体の調査結果を知りたくないとは、おどろきです。
 いずれにせよ、2年前の都道府県アンケート結果を、そのまま放置している農水省も、意見を述べたら、あとは本省におまかせという無責任な地方自治体も、まじめに考えているとは思えません。ミツバチ被害と米の検査規格問題が、リンクしていることを忘れてはなりません。
 農水省の調査は、都道府県だけでなく、登録審査機関や米集荷業者も対象としています。ぜひ、アンケート結果を公表し、消費者や生産者、環境保護団体などの意見も集約して、斑点米カメムシ防除の農薬散布の中止につなげたいものです。
 速報 秋田県大潟村の6月村議会に「水稲への殺虫剤使用を助長する『農産物
検査法』を見直し、ネオニコチノイド系殺虫剤不使用を特徴とする大潟ブランドの推進
を求める請願」が提出されましたが、5対6で、採択されませんでした。詳しくは、記事t31104で。

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作成:2017-07-27