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ネオニコチノイド系農薬・斑点米関係にもどる
t31101#農水省:2016年農薬によるミツバチ被害報告〜前年から20件減の30件というが#17-07
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【参考サイト】農水省:平成28年度の農薬が原因の可能性がある蜜蜂被害事例報告件数及び
都道府県による蜜蜂被害軽減対策の検証結果、被害報告件数と検証結果
平成29年度の蜜蜂被害軽減対策の推進について(通知29消安第1945号。2017/06/22)
農薬危害防止運動の農水省らへの要望で、昨年度の農薬によるミツバチ被害調査の結果を明らかにするよう求めていましたが、同省は6月23日に被害事例報告と本年の対策についての通知を発出しました。まず、被害状況を見てみましょう。
★被害件数は、11道府県で30件
報告によると、2013年から16年にかけての被害件数は合計228件で、被害が発生した都道府数は、14→22→10→11と推移しています。都道府県別の発生件数は表のようで、この4年間に被害報告がなかったのは、宮城、山形、埼玉、東京、山梨、静岡、富山、福井、愛知、三重、滋賀、大阪、鳥取、山口、香川、愛媛、高知、鹿児島の18都府県。被害件数の多いのは、北海道104を筆頭に、栃木と岐阜14、福岡10、秋田8、福島7と続きます。
北海道での発生が多いのは、歴然としており、わたし達は、すでに、道に対して、原因と考えられる斑点米カメムシ防除のネオニコチノイドなどの農薬散布をやめるよう求めましたが、道は、いままでと同じ対策で、十分だとしか答えません(記事t30701参照)。
表 農薬が原因の可能性のある都道府県別のミツバチ被害報告件数
県名 2013年 14年 15年 16年 県名 2013年 14年 15年 16年 県名 2013年 14年 15年 16年
北海道 35 27 29 13 静岡 0 0 0 0 岡山 1 0 0 0
青森 4 1 0 0 新潟 0 1 0 0 広島 2 0 0 0
岩手 0 1 3 1 富山 0 0 0 0 山口 0 0 0 0
宮城 0 0 0 0 石川 0 0 0 1 徳島 1 0 0 0
秋田 0 5 0 3 福井 0 0 0 0 香川 0 0 0 0
山形 0 0 0 0 岐阜 9 4 1 0 愛媛 0 0 0 0
福島 1 2 0 4 愛知 0 0 0 0 高知 0 0 0 0
茨城 0 1 0 0 三重 0 0 0 0 福岡 3 5 1 1
栃木 5 8 0 1 滋賀 0 0 0 0 佐賀 0 3 2 0
群馬 0 2 2 1 京都府 1 1 0 0 長崎 0 1 0 0
埼玉 0 0 0 0 大阪府 0 0 0 0 熊本 0 3 1 1
千葉 3 1 0 0 兵庫 0 2 0 0 大分 2 4 0 0
東京都 0 0 0 0 奈良 1 0 0 0 宮崎 0 1 4 1
神奈川 0 4 0 0 和歌山 0 1 5 0 鹿児島 0 0 0 0
山梨 0 0 0 0 鳥取 0 0 0 0 沖縄 0 1 0 0
長野 0 0 2 0 島根 1 0 0 3 計 69 79 50 30
★農水省は指導効果を自画自賛
上記の結果に対して、被害報告を解析した農水省は、平成28年度においては、全ての都道府県が対策を実施し、効果ありとして、以下のようにまとめています。
【対策の効果の検証についての都道府県の回答】
・対策の効果があった:45都道府県
・前年度に被害がなく、28年度も被害がなかったため、対策の効果が検証できない:2
【実施した対策のうち、効果があったと考えらると回答した対策の内訳】(重複回答あり)、
・被害軽減のための体制の整備(協議会の設置、開催等):11
・蜜蜂被害に関する知見、被害軽減対策等の周知(通知の発出、講習会での周知等):24
・情報の共有(提供)に基づく対策の実施(巣箱の退避、巣箱の移動や巣門の閉鎖、
農薬散布時間の変更、農薬の使用の工夫(粒剤)等):38
【その他の回答】平成27年度に被害が報告された50件のうち、28年度に同一の場所で被害が
報告されたのは5件であった。これらに対しては、農薬散布時期の早朝から夕方への変更、
農薬散布時の一時的な退避等の検討がなされた。
基本的には、農水省の指導どおりの対策で被害減少の効果があったとされていますが、農薬使用状況との関連についての記載は、ほとんどありません。
都道府県ごとの検証結果の一覧表にある主な内容を次に示します。
北海道;散布情報の提供徹底や一部で退避場所を確保したことが減少に結びついた。
秋田;散布情報が共有できないところで被害が増えた。
福島:防除実態が特定できず、原因究明できない。
栃木:巣箱を水田の周辺から退避させるには、他に設置する場所がなく、実施が困難な場合がある。
茨城:巣箱の移動先がない養蜂家もいる。
千葉:飼育場所の詳細がわかりにくい。
京都:養蜂組合以外への情報提供、
島根:飼育情報の更新がなかっため、被害発生。退避場所がない。夏場に巣門閉鎖できない。
福岡:農薬使用者から提供された情報に漏れがあり、養蜂家が散布情報を把握できずに被害が
発生した事例があった。
ほかに、下記のような指摘がありました。
・無人航空機による散布については、県外防除委託業者の情報伝わらない(山形)、
ドローン型への対応懸念(香川、長崎)、計画提出が遅い(静岡、大分)、
散布計画変更に対応できない(佐賀、宮崎)
・ゴルフ場との連携徹底(愛知、滋賀)
・養蜂者の中には、巣箱設置場所を明らかにできないものがいる(群馬、岐阜)
・個人防除者、家庭菜園や住宅地、事業所など農家以外での散布情報の共有化困難
(栃木、石川、高知、島根)
・農水省が指導している粒剤使用を効果ありとしたのは徳島だけ、価格が高いという指摘(石川)もある。
★調査に問題はないか
農水省は、蜂の死因が農薬かどうかを、どのように判断しているのでしょうか。まず、養蜂者が、蜂がダニや蜂病で死んだと思ったら、報告する必要はありません。たとえ、農薬のせいで蜂が弱っており、外敵や病気に抵抗ができなくなっていても、そのことは、無視されます。
つぎに、死虫(1,000 匹以上)が巣箱の周辺で見られる場合は、担当部署に届出、さらに、1000匹に満たない場合も、ふたの裏側に付いている蜜蜂の数が急に減少したり、働き蜂の中に占める外勤蜂の比率が著しく減少した場合にも届出ることになります。届出の様式は、決まっていて、何項目にもわたる記入が必要で、その後、担当部署が、立ち入り検査を行い、飼育状況や巣箱を点検し、農薬以外のダニや蜂病の被害も判断することになります。農薬が原因かどうかは、巣箱の周辺2〜5km内で、どんな農薬がいつ、どのくらい散布されたかの情報も必要です。すべての死虫や巣箱で農薬調査がされるわけではありませんし、残留していても、ほんとうにその農薬で死んだかどうかはわからないというのが、担当部署の言い分になります。さらに、1万匹/箱以上死んだ場合は、蜂群の消長についての調査が行われることになります。
しかし、農水省がまとめた報告には、被害巣箱周辺の農薬散布状況、農薬汚染のない蜜源・餌場・水場の有無、被害が減ったのは、地域で農薬散布が減ったかどうかという肝腎の記述はありません。
結局、農薬は適正に使用すればよいという農水省の方針に沿った被害調査では、真の対策に結びつかないということです。
★長野:養蜂者調査15、農水省では2件
表1に示した長野県の被害は、農水省調査では4年間に2015年の2件だけで、『対策に一定の効果があったと考えられる』とされていますが、同県養蜂協会の調べでは、9市町村で、2012年度1件、13年度2件、14年度2件、15年度5件、16年度5件の報告があり、うち5件は、リンゴの殺虫剤や水稲の斑点米カメムシ防除のネオニコチノイドの疑いが強いとのことです(信濃毎日新聞7月15日)。このような大きな差の背景には、農水省の検証での、島根の回答にあるように『被害が発生すると、養蜂家はもちろん、苦情を受けた耕種農家側も感情面で大きく反発し合う』こともあり、養蜂者が被害状況をただしく報告しない事例があるかも知れません。
そのせいか、養蜂者の団体である日本養蜂協会は、会誌「日蜂通信」(17年5月)で、農水省の調査について、被害報告は、行政機関に通知するだけでなく、協会に報告するよう求めるとともに、『蜜蜂の農薬被害を少しでも減少させるためには、このような地道な努力の積み重ねが必要となります。被害が発生しても、何も連絡をしなかった場合、「被害なし」と分類されますので、ご対応方よろしくお願いします』としています。協会が独自調査していた2012年106(農水調査11)、13年118(同69)件でしたが、その後は行政まかせとなっています。
★都道府県アンケート調査では
わたし達は、危害防止運動での都道府県アンケート(記事t31003参照。その後、回答県が増え、40都府県となった)では、ミツバチ保護に関する質問があり、その結果の概要は以下のようです。
反農薬東京グループから都道府県宛:2017年度の農薬危害防止運動に関連するお尋ねにある設問【2】
@森林総合研究所のポリネーター保護の10の提言をどう思うか(提言は記事t30401参照)。
一般的なIPMへの取組みや環境保全型農業推進の中で検討するという自治体が大部分ですが、
その中で、提言に賛成する、有益・尊重・検討・注視すべき、関心ありと答えたのは、
北海道、秋田、福島、埼玉、長野、新潟、千葉、山梨、三重、滋賀、兵庫、岡山、山口、島根、
福岡、鹿児島などでした。提言の一部に賛成するとしたのは、山形、青森。栃木、東京、高知など。
群馬、岐阜、石川、熊本などは賛否についての回答はできないとしています。
Aミツバチ被害の元凶である農薬散布以外の斑点米カメムシ対策をした場合の補助
一般の環境保全型農業支援として、機械除草(福井、福島、長崎、福岡、鳥取など)。
農薬使用をやめる条件はないが、色彩選別機補助有り(山形、福島、岐阜、千葉 栃木、
愛知、島根、鳥取など)
B農薬汚染のない蜜源や生息地の確保事業
この件では、農水省は植栽支援に対して、2013 年度以降では、毎年約 800 万円以上
の予算で支援を行っているとしていますが、多くの県で、一般的な環境保全型農業へ
の補助はあるものの蜜源等について、金額を示したのは、岐阜だけでした。
これをみると、農薬で汚染されないミツバチ等の生息地の拡大には、消費者や環境保護団体の後押しがもっと必要なようです。
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作成:2017-07-27