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電子版「脱農薬てんとう資料集」第6号<農薬危害防止運動について>
ネオニコチノイド系農薬・斑点米関係にもどる
t31102#農薬危害防止運動へ消費者・市民からの提案 今こそ人とミツバチ等への農薬被害を食い止めよう集会報告 (その2) 食・農を支えるミツバチや野生のポリネーターを守るために#17-07
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反農薬東京グループのHPにあるネオニコチノイド系農薬・斑点米関係記事一覧
【参考サイト】森林総合研究所:花粉を運ぶ動物を守るための政策を提言
5月31日に開催した参議院議員会館の会議室で開かれた「今こそ、ミツバチ等への農薬被害を食い止めよう」集会は、前号で第一部「人の被害防止について」を報告しました。
今号では、第二部「食・農を支えるミツバチや野生のポリネーターを守るために」について報告します。
はじめに、福島みずほ参議院議員から「消費者担当大臣をやっているときもネオニコチノイド(以後、ネオニコ)の廃止ができないかとやってきたが、これからも国会で質問し続けていきます」という挨拶がありました。
★五箇公一さん(国立環境研究所)講演
【関連記事】記事t28802、記事t28905、記事t30403、記事t30602、記事t30805
【参考サイト】環境省;農薬の環境影響調査業務報告書の頁にある2014年度、2015年度
2016年度(毒性試験結果ソート、野外調査記録ノート、トンボ調査マニュアル)
農薬小委員会の頁の第58回会議配布資料にある
2016年度の環境影響調査、昆虫類への影響
続いて、「ネオニコチノイド系農薬の生態系への影響」と題して国立環境研究所の五箇公一さんの講演がありました。
五箇さんは、最初に、かつて農薬会社に勤務しており、その時の経験を生かして、現在は国立環境研究所で、農薬のリスク評価を担当している。水産農薬登録保留基準を決める設定検討会の座長を務めていると自己紹介し、ネオニコ系農薬の生態影響について以下の要旨のような話をしました。
【トンボへの影響】ネオニコチノイド系農薬は殺虫スペクトルが広く、浸透移行性が強い。根から薬剤が吸われて、それが浸透した植物を食べる害虫を防除することができる。この特性を生かして育苗箱の処理が増え、水田でもバンバン使われた。
その結果、アキアカネが減ることが問題になった。われわれは模擬水田などを環境研の中に作って評価することにした。
3年間、フィプロニル、イミダクロプリドを使いつづけると、生態系がどんどん悪くなる。影響は蓄積し、ヤゴ類が一番大きな影響を受ける。フィプロニルの場合は、ほぼすべてのトンボがでなくなる。他の浸透性移行農薬はトンボ類の種によって影響が違う。トンボ類は直接毒性を受けるだけでなく、食べ物や棲みかの水草が減る間接的な影響でダメージを受けることや分解物を計ったところ、フィプロニルの分解物がかなり蓄積していることが分かった。分解物の方が毒性が強いことがわかっている。
実験水田での影響はわかっているが、今のデータ数では、科学的な統計処理をしても農薬とトンボの減少の相関関係に有意差があるとは言えない。もっと、データを蓄積して、野外での影響を科学的に実証する必要がある。
【ポリネーターへの影響】ポリネータ−の現状評価は2010年から世界的に行われだした。養蜂の蜂数は、先進国でへっており、野生ハナバチの減少は欧米でみられる。
国立環境研での研究では、働き蜂の死亡より、巣に持ち帰った餌で、巣の中で異変が起こり、次ぎの生産がとまることが重要だと考えた。ハウス内で、イミダクロプリドを200ppb混ぜた花粉と混ぜてない花粉を与えて調べると、農薬入りは元気がなくなり花粉の持ち帰り量は少なくなる。20ppbでは持ち帰る量は変わらない。巣の中を調べると200ppbだと個体数が減り、次世代がつくれなくなる。20ppbだと個体数は変わらないが、死亡数がふえた。
野外で、イミダクロプリド濃度が高いとミツバチの増殖率が減るという、海外の論文があるが、よく検討すると、環境が違った場での試験であり、里山、人工農園、環境状況などで整理すると、農薬との関連性は薄かった。
ポリネーターや野鳥への影響の背景にある要因は複雑であり、短絡的に農薬とむすびつけずに、環境要因をよく調べる必要がある。それが科学者の責任だ。
ただし、人間の食材は酷い。ほうれんそうの残留基準が40ppmなど、ミジンコより甘い。
★自分たちで認証―提携米研究会
【参考サイト】提携米研究会:Top Pageと研究会について、フェイスブック
続いて提携米研究会から、生産者、消費者、それを取りもつ流通の三社が手をつなぎ、安心な米をつくって30年間続けてきた体験が語られました。自分たちで生産基準を作り、年に一度、関係者が集まって生産者の田んぼを回って、自分たちで認証している。カメムシがそんな大変な害を与えるなどと、30年来聞いていない。病気でも虫でも人の弱みに付け込んで入ってくる。弱みのない稲を作ればいいのではないかと力強く訴えました。
★斑点米カメムシ防除は必要なし
【関連記事】記事t28906、記事t31003、記事t31104
反農薬東京グループのHPにある斑点米記事一覧表
【参考サイト】農水省:農産物検査法及び関係通知等の頁
米の検査規格の見直しを求める会:Top Page
生き物共生農業を進める会:Top Page、農水省の2015年のアンケート調査票と独自調査のまとめ
秋田県大潟村の米農家は、田植えで忙しく参加できないとのことで、斑点米カメムシ防除の農薬散布のからくりを代読で訴えました。
ミツバチ大量死の原因と農水省も認めているのは、斑点米カメムシ防除の農薬散布だ。これをやめさせるには、農産物検査法の着色粒の基準を改めさせるべき。農水省も都道府県などにアンケート調査をしてわかっているはずだと、資料を示して訴えました(記事t31003参照)
★農薬取締法の抜本改定を
【関連記事】2009年の登録制度課題と対応方針:記事t21401、記事t21801、
2014年のOECDのドシエ方式のガイドライン導入;記事t27101
登録申請通知等の改定;記事30201、記事t30504、記事t30602、記事t30702、記事t30802、記事t30902
【参考サイト】農水省;農薬登録制度に関する懇談会の頁
農業資材審議会の頁にある第17回 農業資材審議会農薬分科会配付資料
・ 農薬取締行政の改革の方向性について
・国際標準を踏まえた規制のあり方と今後の改革方針
・これまでの農薬取締行政の国際調和の取組について
弁護士の中下裕子さんは、ネオニコ農薬の危険性に触れた後、法律家として農薬取締法の問題点を以下のように指摘しました。
有害性が指摘されているのに、なぜ、ネオニコが規制されないのか。農薬は農薬取締法によって登録が必要だ。人や家畜、生態系に影響を及ぼさないことが審査の結果、判明した場合に限り、使用を認めている。
登録保留基準というのがあり「当該農薬を使用するときは、使用に際し、危険防止方法を講じた場合においても、なお人畜に危険を及ぼすおそれがあるとき」は登録できないとある。法律上「畜」に定義されている養蜂ミツバチに悪影響があることは毒性試験で明らかだが、それについては「ミツバチの近くで使用しないこと」という注意書きが付け加えられて、それがあるから、危険防止方法が講じられているから大丈夫だとなっている。
この登録保留基準の定め方に問題があると思う。一つは、陸生生物、たとえばトンボとか、ミツバチとか鳥類などについての基準がない。
日本の場合、農薬の登録の有効期間は3年だ。それ以外に、法律には農薬登録取り消しがある。農水大臣は登録保留基準を守ったとしてもなお使用に伴って第3条の保留基準のいずれかに規定する事態が生じると認められる場合に、やむをえない必要があるときは、その必要の範囲内においてその登録を取り消すことができる とある。でも、この条文が発動された例はない。これも非常にハードルの高い規定だ。
さきほど、五箇先生の話を聞いていて、ああ、科学的に証明するというのは大変なことだと思った。けれども、その間にもミツバチもいなくなるし、トンボもいなくなるし、発達障害もふえる。だから、予防原則しかない。EUだって暫定的禁止だ。まず、禁止する。(拍手) その間に研究して、調査し、因果関係を解明する。そういう知恵、これが人類の叡智だと思う。
こういう状況の中で、提案したい。一つは農薬取締法の抜本的改正だ。まず、陸生野生生物の登録保留基準の設定。次に「人畜への悪影響のおそれ」について予防原則に立脚した基準の設定。予防原則に基づく一時的使用停止措置の新設。子どもの神経発達毒性などの試験の義務化だ。
★集会での提言
最後に、集会参加者有志からの下記4項の提言がなされ、採択されました。
1.国(農林水産省)が、農産物検査法に基づく米の規格基準にある着色粒規定の見直し
を実施すること。
2.国(農林水産省)、地方自治体が、有機リン剤やネオニコチノイド系農薬の使用、
なかでも、水田や松林での空中散布を自粛・中止すること。特に、農水省の指導が
実施されているにもかかわらず、ミツバチ被害が抑制できない北海道での斑点米
カメムシ対策の農薬使用を中止を急ぐこと。
3.現行の農薬登録に必要な毒性試験では、神経系への作用が強く浸透移行性や残留性
の高いネオニコチノイド系農薬の生態系や人へのリスクは十分に評価されていない。
国(環境省、厚生労働省)は農薬による人や生物多様性への影響に関する調査研究を
実施し、子どものリスクの高い用途や脆弱な生態系や、すでに影響を受けている可能性の
高いエリアでの同農薬の使用禁止を促すなど早期対策を推進すること。
4. 養蜂ミツバチの他、野生のポリネーターへの影響も無視できないため、現在登録
のあるネオニコチノイド等のミツバチ毒性の強い農薬の使用を規制し、適用拡大を
行わないと同時に、新たにミツバチ毒性の強い農薬成分を登録しないこと。
★おざなりな農水省の要望への回答
要望に対する農水省の回答の要約を掲載しました。
農水省への要望と回答
要望は、農薬取締法について、住宅地通知について、クロルピクリンの使用について、PPV対策についてと大きく四つに分けてあります。いずれも、深刻な被害を受けての要望です。
農水省は、まともに回答せず、「適正使用の周知徹底に努める」「関係者への周知・徹底を指導する」などというものでした。しかし、いくら「指導」しても強制力がないため、一向に改善されないことは被害者の言うとおりです。
使用上の注意を守らなくても、使用者に罰則はありません。そのためクロルピクリンを使用して被覆しなくても、「被覆してください」で終わり、また、同じことが繰り返されるわけです。
結局、農水省は、人畜への被害防止をいいながら、健康被害を受ける人には、散布周知するから逃げろ、ミツバチにたいしては、避難しろというだけです。住宅地や蜜源ちかくで、農薬を使うなとは、いいません。
7月12日開催の第58回中央環境審議会土壌農薬部会農薬小委員会や7月13日開催の第17回農業資材審議会農薬分科会では、農薬取締法の改定に向けての議論が始まっています。この集会で論議された内容の実現に向かって、わたし達の運動は正念場を迎えたといえます。
312号記事:農薬取締法改定が俎上に、(その1) 農水省版「人も蜜蜂も
改定農薬取締法関係の記事一覧(2008年までは、こちら)
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作成:2017-08-27