ネオニコチノイド系農薬・斑点米関係にもどる
t31106#スルホキサフロルの残留基準の告示間近に〜2つのパブコメが終わった#17-07
【関連記事】2015年のパブコメ:記事t29202、記事t29501
2017年のパブコメ:記事t30601、記事t30804
スルホキサフロルの残留基準案についてのパブリックコメント募集は終わり、6月22日開催の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会(議事録。資料はこちら)で、意見の概要が示され、翌週の6月26日の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会(議事録。資料はこちら)での審議も終わり、あとは、残留基準の告示を待つだけになっています。
2015年の一回目のパブコメでは537件の意見がありましたが(記事t29501参照)、今回は386件あったとのことです。各意見については、基準告示時に、厚労省の回答が付記されるのが常ですが、分科会や部会のメンバーが、意見に対する回答をめぐり、どのような議論がされたか、わかりません。
わたしたちの意見は記事t30804で、報告しています(反農薬東京グループのパブコメ意見)。他の意見を含む全パブコメ意見は、グリーンピース・ジャパンが開示を求め、得られた内容が下記サイトのブログにリンクでアップされています(全パブコメ意見)。
★386件のパブコメ意見の概要
【参考サイト】厚労省;食品中の農薬(スルホキサフロル)の残留基準設定に係る御意見の募集について、
6月26日開催薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会資料と議事録(8/01公表)
報告事項(スルホキサフロルのパブコメ結果概要p3-18)
グリーンピース・ジャパン:6/27のスタッフブログにある
情報公開請求で開示された残留基準全パブコメ意見7分割版(1、2、3、4、5、6、7)
厚労省は、今回のパブリックコメントの概要を、項目ごとに分類し、各項目の該当件数を明らかにしました。件数について、『1通の意見に複数の項目の内容が含まれている場合、項目ごとに重複して計上した。いずれの項目に該当するか曖昧なものがあるため、各項目の件数はあくまでも目安である。また、事実とは異なる御意見もあるが、あくまでも寄せられた御意見を記載した。』となっています。
分類及び主な御意見として示された概要は下のようです。
1.残留基準に関する御意見:126件
・OECDが定める計算プログラムを用いて基準値を設定すべき。
・日本での作物残留試験データは海外に比べて少ない。
・欧州並みの厳しい基準を適用するべき。
2.暴露評価に関する御意見;4件
・幼小児のTMDIの対ADI比が80%を超えている。
・他の食品、水、空気等からの摂取を考えると、単独食品の短期暴露推定量はARfDの10%以下
になるようにすべき。
3.毒性評価に関する御意見:207件
・健康への影響が心配である。
・子どもの脳や神経の発達への影響、環境ホルモン作用、複合影響などの安全性評価が十分に
行われているのか。
・実験用ラットで死産、前肢、後肢の形成異常などが起きている。
4.農薬の登録・使用の反対に関する御意見;50件
・ ネオニコチノイド系の農薬使用には反対である。
・ 世界的にも農薬は減らす流れである。
5.ミツバチへの影響に関する意見:160件
・ミツバチへの毒性がある農薬を使うのは問題である。
・ミツバチの死滅は、生態系だけでなく農業にも打撃を与える。
6.環境影響に関する御意見:179件
・ 環境に悪影響を与える危険性があるにもかかわらず、使用を解禁するべきではない。
7.米国ではミツバチへの影響を考慮して使用制限をかけて再登録が行われたが、日本では
同様の制限を行わない事に関する意見:26件
・日本では広い用途のまま申請が進められているので、登録に反対する。
8.前回のパブコメの回答がないことに対する御意見:4件
・ 昨年度行われた前回のパブリックコメントに対する返答が未だ出されていない。
9.賛成意見:16件
・柑橘のカイガラムシ防除で困っており、早く防除体系に取り入れたい。
・基準値に問題はない。既に海外で使用されているので、農産物輸入の観点からも早期の
基準値設定を要望。
10.その他の御意見:33件
・農産物の輸出促進や、日本の食の安全をアピールするため、海外で規制されている農薬を
使用すべきではない。
・企業の利益を優先すべきではない。
★水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準は39000から30μg/Lに強化
【関連記事】記事t30602、記事t30805
【参考サイト】環境省;農薬小委員会の頁
第58回会議配布資料にあるユスリカ幼虫急性遊泳阻害試験に用いる1齢幼虫の判断について
水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準値(案)に対する意見の募集について
資料(スルホキサフロルあり)
反農薬東京グループのパブコメ意見
記事t30805で、スルホキサフロルのユスリカの毒性試験の開示を求めました。この試験成績は環境省が農水省を通して登録申請者にユスリカの試験を義務付け、一年以内に提出するよう求めたものです。環境省が設定した現行のスルホキサフロルの登録保留基準が改定されるのが、わかっているにも拘わらず、農水省は、3月30日に試験データの不開示通知を送ってきました。
その後、環境省は、スルホキサフロルの水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準値案を30μg/Lとして、6月19日から7月18日まで、パブコメ意見を募集しました。
登録保留基準設定に際して、実施される水産動植物の毒性試験成績は、無毒性量でなく、急性毒性の評価で、半数致死や影響濃度が要求されます。種々の試験結果からえた数値を不確実係数で除して、急性影響濃度を得て、その最小値が登録保留基準とされ、これが、さまざまな仮定をおいた計算式で得た被害予測濃度(PEC)と比較し、
登録保留基準>PEC値ならば、妥当な基準と判断されます。水系での実測値が、PECより高い場合もありうるので注意を要します。
スルホキサフロルの場合、毒性試験に、新たにCのユスリカが追加されました。
@魚類急性毒性試験
(コイ) LC50(μg/L)>402,000
(ニジマス) LC50(μg/L)>387,000
(ブルーギル)LC50(μg/L)>360,000、不確実係数4として 急性影響濃度は >90,000μg/L
A藻類生長阻害試験
(ムレミカヅキモ)ErC50(μg/L)>101,000、不確実係数1 として、
急性影響濃度は、>101,000
B甲殻類急性遊泳阻害試験
(オオミジンコ)EC50(μg/L)>399,000、不確実係数10として。急性影響濃度 >39,900
→これが旧登録保留基準となった
(ユスリカ幼虫) EC50(μg/L)309、
不確実係数10として急性影響濃度30μg/L
この結果、最も低値のユスリカの30μg/Lが登録保留基準とされ、PECは、水田の場合1.1μg/Lと算出されているため、基準は妥当だとされました。
(この項に関するパブコメ意見は記事t31202で)
スルホキサフロルの水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準のパブコメ結果が11/20公表されました。原案通り、保留基準が39000から30μg/Lに改定、11月21日の官報で告知されました。
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作成:2017-08-27、更新:2017-11-22