食品汚染・残留農薬にもどる

t31204#残留基準のパブコメはアリバイづくり〜スルホキサフロルとグリホサートにみる厚労省審議会のいいかげんさ#17-08
【関連記事】記事t30804記事t31106記事t31701(2017/12/25、残留基準告示と登録)

   反農薬東京グループら4団体による行政への「スルホキサフロルの農薬登録をしないよう求める要望」:
    農水省、環境省へ(2017年2月)、
    厚労省食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会へ(2017/02)、同左(2017/05)、

 記事t31106で新たに登録されようとしているネオニコ系殺虫剤のスルホキサフロルの残留基準案が、6月22日の厚労省薬事・食品衛生審議会にある農薬・動物用医薬品部会(以下部会という)と、同26日の食品衛生分科会で、決まったことを報告しました。このほど、二つの会議の議事録が公表され、どのような議論の上で基準案が決まったか判りました。
 その前に、スルホキサフロルのこれまでの経緯をさらっておきましょう。
  @2013年6月 農水省とインポートトレランス
   (アメリカ)から残留基準設定の依頼。
  A2015年9月、部会で、残留基準案を審議、了承。
  B2015年11月、アメリカで、蜜蜂毒性を十分に評価していないとして、裁判所の命令で登録取消。
  C2015年12月、アメリカの取消を考慮しないまま、部会で了承された残留基準案の第一回目の
    パブコメ意見募集。その後、市民団体が反対運動を展開。
  D2016年2月、パブコメ537件中、殆どが反対意見で、部会は残留基準の設定の審議を中断。
  E2016年10月、アメリカで条件付き再登録。
  F2017年2月、部会審議で、前回基準案からイチゴの数値のみを変更した基準案を了承。
  G2017年3月、第二回パブコメで386件の意見有。
★スルホの食品衛生分科会での議論
【参考サイト】厚労省;食品中の農薬(スルホキサフロル)の残留基準設定に係る御意見の募集について(2017年3月)
             厚労省資料反農薬東京グループのパブコメ意見
          6月22日開催薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会:資料議事録
          6月26日開催薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会:資料議事録
           報告事項(p3-p18にスルホキサフロル関連事項あり)

 2回で900件を超えた残留基準のパブコメ意見は、事務局の報告を受けただけで、分科会の席で論議されることもありませんでした。2015年の部会審議以後、人に対する新毒性データはなく、パブコメ意見にも、リスク評価を再検討する情報がないとまとめられています。
 アメリカでは再登録の際、適用作物を削除したり、使用時期を限定したりしているが、日本でのスルホ製剤の適用はそういうことはないのかという質問に対して、農水省農薬対策室長が説明しています。
 曰く、アメリカと日本では作物の品種や栽培方法が異なっている。ミツバチにかからないように防除の段階で管理するのが基本。そのために使用上の注意事項で対応している。ミツバチは農薬が直接かからないと死なないから直接かからないよう注意すればいい。
 この説明に委員たちは納得し、さらに、その情報をもっと国民に知らせるべきとの注文を出しただけ。厚労省は「HPに掲載しているし、パブコメ回答時にも説明する」と述べこの件は終わりました。
 私たちが、残留基準案について出した意見−試験事例が少ない/最大残留値を何倍かして高すぎる基準を決めている/すでに、水稲使用でネオニコ農薬がミツバチ被害をあたえているのに、さらに、新たなネオニコを登録するのはおかしいなど−を無視し、厚労省の基準案にお墨付きを与えるための会議としか思えません。
 最終的には。『分科会としては、人への健康影響の観点による評価結果を踏まえ、この残留基準で了承いたしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。(「異議なし」と声あり)』で終わっていました。

★グリホサートパブコメで国際基準批判
【関連サイト】記事t28401記事t29701記事t30803
   反農薬東京グループ:グリホサートの残留基準に関する農水省らへの質問と回答(2017年5月)
【参考サイト】厚労省:グリホサート残留基準案パブコメ募集基準案参照資料
   反農薬東京グループのパブコメ意見(2017年7月)

 一方、除草剤グリホサートについては、残留基準の大幅緩和が、検討されていることを報告しましたが(記事t30803参照)、基準の改定案は06月21日から7月20日まで、パブコメ意見募集が行われました。
 私たちが、個々の作物の基準に反対したことは、もちろんですが、ここでは、総括的な主張として出した意見を紹介します。
  【意見】残留基準の設定において、国際基準をそのまま流用しているケースが多い。
   その場合、国際基準だと説明するだけで、どのような国際機関がいつ、どのような
   データで決めたのか説明がない。
   国際基準が、どのような残留試験をもとに決められたか明らかでないまま、数値
   だけが提案される現状には、納得できない。当該農薬がどのような方法で使用され、
   代謝物を含む残留データがどのようなものであるかを明らかにした上で、国民の
   意見を聞くべきである。また、グリホサートの適用時期には、理由2から4で述べる
   ように、PH(収穫前)使用した場合とそうでない場合があり、残留試験がどのような
   条件で行われたか不明なままでは、科学的な論議ができない。
    グリホサートに限らず、国際基準を流用する場合、最低、以下の点を明確に示すべきである。
    1、基準を決めた国際機関の名称
    2、何年に決めたのか
    3、決定に使用した毒性データの種類
    4、代謝物を含む残留データ
    5、農薬使用方法
    6.日本が受け入れる科学的根拠

   [理由1]現行基準を大幅に緩和した食品の改定新基準案の多くが、国際基準をもとに
    している(たとえば、小麦など穀類で現基準の1.5倍から15倍の30ppm、ナタネ30ppm、
    綿実ほか40ppm。308号参照)。
   [理由2]小麦の場合、日本でのグリホサート製剤の適用は、起耕前、播種前の圃場に
    散布したり、収穫前日までは、圃場の周縁の除草に可となっている。
    しかし、外国では、pre-harvest-use(本件資料には、綿実、ヒマワリ、ベニバナの
    試験条件にPHと略称されている)として、小麦等の収穫間際の圃場にグリホサートを
    散布して、枯殺により収穫や圃場の整備をやり易くするだけでなく、種実の成熟や
    乾燥促進を目的に使用することがある。このような使用方法は、日本では、いままで、
    パラコート系除草剤で、水稲の立毛促進に収穫5から7日前に使用された以外適用された
    ことはない。
   [理由3]作物収穫間際の使用は、当然、グリホサートやその代謝物の残留量増加に
    つながる。国内で適用のない使用方法で収穫した作物の残留データを採用して、
    基準を決めるべきでない。
   [理由4]グリホサートを収穫間際に用いた飼料作物においても、それらを給餌された
    家畜がグリホサートやその代謝物を多く摂取することにより、得られる畜産物も、
    代謝物を含めた残留量がふえることになる。
   [理由5]残留分析の対象となるグリホサートの代謝物として、大豆、トウモロコシ及び
    ナタネ並びに畜産物にあってはNAG(N−アセチルグリホサート)とするとされており、
    大豆、トウモロコシ及びナタネの遺伝子組換え品種では、NAGが親化合物よりも
    残留すること、畜産物においてはこれらの作物が飼料に含まれる可能性があることも
    指摘され、さらに、AMPA(アミノメチルホスホン酸)の残留も認められる。

      表 グリホサートの新旧残留基準と国際基準(単位:ppm)

 作物名       (a)    (b)  国際   (b)      作物名       (a)    (b)  国際    (b)
               現基準 新基準  基準   /(a)比                  現基準 新基準 基準     /(a)比
 小麦       5ppm  30ppm  30ppm   6      ヒマワリの種子  0.1     40    7(40**)   400
 大麦     20     30     30      1.5     ゴマの種子      0.2     40      (40**)   20
 ライ麦     0.2    30     30     15        ベニバナの種子  0.1     40      (40*)    40
 トウモロコシ  1     5     5      5       綿実          10       40    40    4  
 ソバ	       0.2    30     30     15        ナタネ         10       30    30    3 
 その他の穀類  20     30     30      1.5      その他のオイルシード
 小豆類      2      10      2(10*) 5                        0.1      40    (40**)   400 
 その他の豆類   2       5      5      2.5      畜産物6品目  1〜3      5      1.7〜5   5 
 テンサイ       0.2    15     15      7.5     
               *: オーストラリア基準、 **: アメリカ基準

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作成:2017-09-25、更新:2017-12-26